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1章 潔白の詐欺師

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「ルーレットは……まあ素人でしたし、結果は惨敗といいますか……」
「最初からカジノの女王の微笑みが得られるなんて思ってはいけない。女王の心はとても繊細で変わりやすいからね」
「でも、俺の隣にいたその男!ソイツは1目賭けなんて賭けしながら一回も外さなかったんですよ!?あんなのイカサマとしか思えない!!」

1目賭け?
それは一体なんだろう?

小首を傾げていると、それを見かねた鴉さんが説明してくれた。

「ルーレットで使われるホイールがどんなものかは分かるだろう?
ヨーロピアンスタイルであればあの数字は1から36と0がある。1目賭けとは一つの数字のみに賭けることだよ。
倍率は37倍。いやはや、1目賭けで何度も的中させるとはその青年は運命の女神に愛されているとしか思えないね!」

「確かに……要するに37分の1の確率を連続で当ててるってことですもんね。
37分の1を3回連続で当てるだけで確率はとんでもないことになりそう……」

流石に計算はその場でできないので諦めるけど、きっととんでもない確率だろう。

「俺は騙されて入りました!後々になって考えてみたら、あんなの犯罪行為じゃないですか!
カジノ場なんてそもそも良くないし……だからアイツらを捕まえて欲しくて……」
「ふむ、それならなぜ警察を頼らなかったんだろうか?
確かに僕は探偵であり、警察よりも身近な存在かもしれないが捕まえてほしいというのは警察に頼る方が適切だろう?」
「その……俺は絶対悪くないと思うんですけど、一応カジノに入ってゲームをしてしまったので……
もし…もしそれで警察に捕まったりしたら……その、どうしようって思ってしまって……」
「なるほど。罪がないことは分かっている。けれど酒の力もありあの場でカジノを楽しんでしまったことは事実。
その負い目があるからこそ、潔白の身でありながら警察に捕まってしまうのではないかと心底怯えてしまっているわけだ」

カジノ場を作ることは犯罪でも、それを分かっていながらゲームをしてしまうことって犯罪になるんだろうか?
そこら辺の知識とかを流石に持っているわけじゃないから分からないけど、なんか悪いことのような気がしてしまう。

「状況は理解した。つまりそのカジノ場に関わった悪人達を警察の力も借りずに僕に断罪してほしいわけだ。
そう言うことだろう東山さん」
「え、ええ……そう、なりますね」

東山さんは不安そうな顔をした。
やっと自分がやってることが自分で理解できたような感じだ。

だってこんなの明らかにおかしい。
犯罪者を捕まえてほしいって頼みなら、探偵よりも警察のはずなのに警察を頼らない。

煮え切らない様子で、鴉さんの言葉を不安そうに聞いている。

「最後に聞かせてほしい。そのカジノの店名を!」

鴉さんは不安そうな東山さんの表情なんて見えてないみたいに堂々とそう言い放った。
東山さんは相変わらず不安そうな顔で、その店名を呟く。

「BAR_Victoria_という店です」

そのBARの名前に、私は白髪のあの男の人を思い出していた。

『んじゃここ遊びに来てよ__』
『__助けると思って来てくれない?待ってるからさ』

BAR_Victoriaで働いている信者、皇直哉。
今回の依頼は、そのBARが関わっているらしい。

「そうか。
真奈君!君を助けたというあの白髪の青年が関わっているなんて
これは運命的だとは思わないかね!?そう!この依頼は我々が解決する運命なのだよ!」

両手を広げて興奮気味にそう言った。
……確かにすごいタイムリーっていうか……

運命とかそういうのは流石に分からないけど、元々そのBARには行きたいと思っていた。
だから、断りづらいのは確かだ。

「東山さん、その依頼受けさせてもらおうじゃないか!
この僕、語り部の鴉がBAR_Victoria_の悪人を炙り出して見せよう!」
「よ、よろしくお願いします」

鴉さんは若干怯え気味の東山さんと強引に握手をした。
こうして、私の初めての仕事が決まったのだった。
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