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1章 潔白の詐欺師
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「た、助けてくれてありがとうございます!」
「いーってことよ。ただまあその代わり、君の"力"について聞きたいんだけど、いいよね?」
「え……っと………それは……」
助けてくれた手前、断りづらい。だけどこの人どう見ても怪しい。
なんかすっごいヤンチャしてそうな見た目だし……不良とかそういう人みたいだ。
それに、信者狩りとの会話もなんか変だった。
言葉で脅すだけであの強引な信者狩り達が帰っていったのだ。そうしなければいけない何かがこの男の人にある。
どうしよう……せめて鴉さんがいてくれたら、こう……なんかうまい感じに誤魔化せそうなのに。
「あーあせっかく助けたのになー!
お礼が欲しくて助けたんじゃないんだけどなぁー!」
「あの……その……」
私が言わないでモゴモゴしていると、男の人は大きくため息をついてから、ポケットから何かのカードを取り出した。
「んじゃここ遊びに来てよ。
ドジっ子ちゃんにはまだちょーっと早いかもしれないけど、ホットミルクくらいは用意しとくからさ」
渡されたカードは黒い名刺だった。
名前の部分には銀色の文字で皇 直哉と書かれている。
そして彼の言う店というのは多分、一緒に印刷されているBAR_Victoria_のことだろう。
「最近客来なくってさ。閑古鳥ないてんの。
助けると思って来てくれない?待ってるからさ」
「わ、わかりました……」
思わずそう答えてしまった。
なんていうか……断りづらい顔してるんだよね。
別に面食いってわけじゃないけどこの人、白い髪が似合うくらいのイケメンさんだし……
あと助けてもらったのにって罪悪感が……
私の返事に満足したのか、彼はそのままフラフラと立ち去っていった。
残った名刺をもう一度見て、私は買った掃除道具を抱えて改めて事務所を目指した。
______
「なんてことだ!せっかくの助手が再び信者狩りに襲われてしまうなんて!!」
コレは早急に対策を考えねばならない!とオーバーリアクションで鴉さんは頭を抱えた。
そこは嘘でも私の心配をして欲しかったな。いや無理か、鴉さんだし。
「そして助けてくれた恩人は銀髪の青年か。
その青年にはぜひ僕からも礼が言いたいものだ」
「あ、その人BARで働いてるらしいんです。
遊びに来てほしいって言われて」
黒い名刺を見せると、鴉さんは表情を変えた。
驚き、名刺を私の顔を二度見する。
「ほう! 皇直哉……皇といえば裁きの会に同じ苗字を持った女性がいるのを記憶しているよ。
一度だけ会ったことがある」
「え? 皇なんてそうそういる苗字じゃないですよね?もしかして血縁者とかですか?」
「ふーむ。それはわからない。
しかし、裁きの会にいる皇直美という女性は会の幹部だ。
彼女は僕のことを裁きの会に引き入れようと奮闘していたようだが、生憎、僕は組織に縛られるような男ではないのでね」
確かにこの人は組織とか会社とか向いてなさそうだよなぁ……
「皇という青年のことは気になるところではあるが、僕達にも仕事がある。
いくら恩を感じていても、一人でこの店に向かうのはあまりおすすめできない。どうしても行きたいのであれば僕も同行しようじゃないか」
「……いいんですか?」
「もちろんだとも!助手君とBARでドリンクを酌み交わす……
なんて魅力的なシチュエーションだ!そんな機会を僕が拒むと思うかい!?」
迫真の声色でそう尋ねてきた。
でもごめんなさい。ちょっとよくわからないです。
なんか怪しい皇という男の人の店に行くなんて、確かに何が起こるか分からない。
しかも相手は信者だ。どんな力を持ってるのか私も分からなかった。
「……その時はお願いします」
怪しいのは分かってるし、危険かもしれないのも分かる。
だけど、それ以上に皇さんの背に見えたあの言葉が気になった。
完璧なポーカーフェイスの下に隠れた【罪悪感】
もちろんこのまま何もせずにいることだってできるけど、
もうちょっと自分の力のこととか信者のこととかそう言うことを知ってから、彼の元に尋ねてみたいと思う。
ガチャ
そんなことを考えていると事務所の扉が開く音が聞こえた。
「すみませーん、ここって探偵事務所……なんですよね?
あの、相談したいことがあるんですが……」
見知らぬ男性の怯えたような声が聞こえる。
まさか本当にお客さんが来たんだろうか?
「おお!ついに君の初仕事だよ真奈君!
助手として特等席で僕の仕事を見せてあげようじゃないか!」
「ええ?!私はしばらく掃除なんじゃ……っ」
「仕事があるのなら話は別さ!さあ、依頼人の話を聞きに行こう!」
「いーってことよ。ただまあその代わり、君の"力"について聞きたいんだけど、いいよね?」
「え……っと………それは……」
助けてくれた手前、断りづらい。だけどこの人どう見ても怪しい。
なんかすっごいヤンチャしてそうな見た目だし……不良とかそういう人みたいだ。
それに、信者狩りとの会話もなんか変だった。
言葉で脅すだけであの強引な信者狩り達が帰っていったのだ。そうしなければいけない何かがこの男の人にある。
どうしよう……せめて鴉さんがいてくれたら、こう……なんかうまい感じに誤魔化せそうなのに。
「あーあせっかく助けたのになー!
お礼が欲しくて助けたんじゃないんだけどなぁー!」
「あの……その……」
私が言わないでモゴモゴしていると、男の人は大きくため息をついてから、ポケットから何かのカードを取り出した。
「んじゃここ遊びに来てよ。
ドジっ子ちゃんにはまだちょーっと早いかもしれないけど、ホットミルクくらいは用意しとくからさ」
渡されたカードは黒い名刺だった。
名前の部分には銀色の文字で皇 直哉と書かれている。
そして彼の言う店というのは多分、一緒に印刷されているBAR_Victoria_のことだろう。
「最近客来なくってさ。閑古鳥ないてんの。
助けると思って来てくれない?待ってるからさ」
「わ、わかりました……」
思わずそう答えてしまった。
なんていうか……断りづらい顔してるんだよね。
別に面食いってわけじゃないけどこの人、白い髪が似合うくらいのイケメンさんだし……
あと助けてもらったのにって罪悪感が……
私の返事に満足したのか、彼はそのままフラフラと立ち去っていった。
残った名刺をもう一度見て、私は買った掃除道具を抱えて改めて事務所を目指した。
______
「なんてことだ!せっかくの助手が再び信者狩りに襲われてしまうなんて!!」
コレは早急に対策を考えねばならない!とオーバーリアクションで鴉さんは頭を抱えた。
そこは嘘でも私の心配をして欲しかったな。いや無理か、鴉さんだし。
「そして助けてくれた恩人は銀髪の青年か。
その青年にはぜひ僕からも礼が言いたいものだ」
「あ、その人BARで働いてるらしいんです。
遊びに来てほしいって言われて」
黒い名刺を見せると、鴉さんは表情を変えた。
驚き、名刺を私の顔を二度見する。
「ほう! 皇直哉……皇といえば裁きの会に同じ苗字を持った女性がいるのを記憶しているよ。
一度だけ会ったことがある」
「え? 皇なんてそうそういる苗字じゃないですよね?もしかして血縁者とかですか?」
「ふーむ。それはわからない。
しかし、裁きの会にいる皇直美という女性は会の幹部だ。
彼女は僕のことを裁きの会に引き入れようと奮闘していたようだが、生憎、僕は組織に縛られるような男ではないのでね」
確かにこの人は組織とか会社とか向いてなさそうだよなぁ……
「皇という青年のことは気になるところではあるが、僕達にも仕事がある。
いくら恩を感じていても、一人でこの店に向かうのはあまりおすすめできない。どうしても行きたいのであれば僕も同行しようじゃないか」
「……いいんですか?」
「もちろんだとも!助手君とBARでドリンクを酌み交わす……
なんて魅力的なシチュエーションだ!そんな機会を僕が拒むと思うかい!?」
迫真の声色でそう尋ねてきた。
でもごめんなさい。ちょっとよくわからないです。
なんか怪しい皇という男の人の店に行くなんて、確かに何が起こるか分からない。
しかも相手は信者だ。どんな力を持ってるのか私も分からなかった。
「……その時はお願いします」
怪しいのは分かってるし、危険かもしれないのも分かる。
だけど、それ以上に皇さんの背に見えたあの言葉が気になった。
完璧なポーカーフェイスの下に隠れた【罪悪感】
もちろんこのまま何もせずにいることだってできるけど、
もうちょっと自分の力のこととか信者のこととかそう言うことを知ってから、彼の元に尋ねてみたいと思う。
ガチャ
そんなことを考えていると事務所の扉が開く音が聞こえた。
「すみませーん、ここって探偵事務所……なんですよね?
あの、相談したいことがあるんですが……」
見知らぬ男性の怯えたような声が聞こえる。
まさか本当にお客さんが来たんだろうか?
「おお!ついに君の初仕事だよ真奈君!
助手として特等席で僕の仕事を見せてあげようじゃないか!」
「ええ?!私はしばらく掃除なんじゃ……っ」
「仕事があるのなら話は別さ!さあ、依頼人の話を聞きに行こう!」
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