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Erweckender Moment
15章
しおりを挟む今日は本戦最終日である。
1試合目は凪沙VSサラ、2試合目は山下VS涼。その後決勝の前に1回戦落ちしたメンバーで代表決めを行う。
「みなさーん!いよいよ今日は本戦最後の日です!昨日はよく寝れましたか?凄まじい試合が行われるのが予測できます!目を離すのは勿体無いです!」
「相変わらずテンション高いですね、山田さん。」
「アリシア先生も少しテンション高いじゃないですかー。」
観客みんなが驚いた。アリシアの違いが分からなかったからである。
「あらあら、バレてましたか。」
いよいよ準決勝が行われる時間だ。元々アリーナには試合会場が2つある。今までは一方でしか行われていなかったが、準決勝は決勝で誰が相手か分からなくするために別々に行われる。
「山下、やっと俺の手で。」
何やら様子がおかしい涼。
「あいつ、闇に呑み込まれそうだ・・・バカ野郎が。」
観客席で見ていた月夜は、涼の異変に気付く。涼は、無意識の内に復讐心を露にしていた。彼自身は憎んでいないつもりでも、本能では憎んでいたのだろう。
「遥!いつからあいつはこんな感じだった?」
「え、えっと、一昨日辺りからかな?昨日から突然酷くなったけど・・・」
「遥、あいつになにか起きたら声を掛けてやってくれ。お前の声なら届くはずだ。」
「う、うん。」
「それでは、始め!!」
「行くぞぉ越前!!」
「ああ。」
山下は闇を銃弾のようにして涼へ攻撃する。それに対し涼は刀で切り捨てる。
「何だ、雑魚か。」
涼がそう呟くと、僅かに体から闇のオーラが出る。
「竜胆流刀術外伝、『虚無』」
すると、ほんの小さな黒い球が現れ、ふよふよと山下の近くに行く。その瞬間、閃光が巻き起こり、空間が削り取られていた。
空間自体は瞬時に修復されるため問題ないが、今回は規模が大きいので0,6秒かかる。
それだけで空間の歪は何もかも吸い込もうとする。今回は誰も被害に遭わなかったが、もし誰かがあの中に入ったら永遠に空間の狭間をさまようことになるであろう。死ぬ事も出来ずに。
「な、なんだよ、今の。」
「何だろうね?俺にもわかんないや。何だか俺じゃないなにかの力を感じる。でも、お前を殺せるな、いいかな?って。」
「ふ、ざ、けんなー!!!!!」
闇が触手となり涼を捕らえようとする。しかし、今までののは比にならない。呆気なく涼は捕まってしまう。
「あ、あ、あ。」
涼は虚ろな目になり、あ、としか呟かない。
「やばい!あいつ、闇に呑まれる!!」
その隙に山下は闇で攻撃する。腹には穴が開き、手は変なところに曲がっている。
「もう、無理。」
呑み込まれるギリギリで意識を失った。
(あれ、ここどこだ?)
『やぁ、起きたかい?』
「お前、誰?」
『ボク?ボクはルリア、『選定者』だよ。』
「選定者?」
『うん。君にはまだ早いからこの話はいいとして、君ってさ、本当にそんな人だったけ?』
「何が言いたいんだ?」
『君ね、『傲慢の悪魔』に呑み込まれそうだったよ?』
傲慢の悪魔、元熾天使ルシファーが堕天した姿だと言われている。ルシファーは堕天使だが、一般的に大罪の悪魔として扱われている。
「どういう事だ?」
涼も傲慢の悪魔の事くらいは知っている。しかし、それにつけ込まれるとは思ってもいなかった。
『君さ、力を持ち始めて傲慢になってたよ?人のためにあいつを倒すみたいな、それ、偽善だよ?君、偽善はしないみたいなこと言ってたけど、完全に偽善者がすることだからね?君はいつからそんなお人好しになったのかな?何?力を持ち始めて自信がついた?それとも力を見せびらかしたい?別にそれはいいよ。だけどね?君のはただの自己満足。人の為でもない。』
涼はふと思い出す。遥に言われた言葉を。
──「何か変わったね。」
たった一言であったがずっと心残りだった言葉。
「そうか、俺、調子乗ってたのか。」
『やっと気付いたか。』
「そりゃつけ込まれる訳だよ。」
『へぇ、改心したのはいい事だね。本来なら君の本当の能力の封印を解こうかと思ってたんだ。三日前位までは。だけどまた、傲慢な態度取られても困るからね、一部だけ解いてあげるよ。』
「俺の能力!?どういう事だ!」
『君の能力は強すぎる。だから封印していたんだ。それがボクらの役目でもあるからね。とにかく封印を解くのは4つ。偽装、全魔法、執行、あと一つは帰ったら確認してね。』
「偽装ってなんだ?」
『君のドルイドの偽装を解いたんだ。君はドルイドを世界を覆うほどに保有してるからね。』
「そう、だったのか。」
『ふふ、じゃあまた会おう。』
「う、ここは?」
「涼!!!!!!!!!!」
まだ試合最中であり、審判が止めようとしたところであった。
「痛てーな、えっと、『リカバリー』」
その瞬間、先程の怪我が嘘のようになくなった。
「はぁ!!!!」
炎魔法で爆発を起こし、抜け出す。
「お前、何で!?瀕死だっただろう!」
「目が覚めたんだよ、色々とな。」
涼はドルイドを手に集める。
「これで終わりだ。『セイクリッド・シルバー』」
神聖属性のドルイドを銃弾のようにして撃ち抜く。
「うがァ!!!!!」
山下は倒れた。
「ふぅ、やったか。」
お約束の言葉を言ってしまった。
「うぐっうがァ!!!!!!!!!!!!」
あいつから角が生える。そして漆黒の翼も生えた。
『ふむ、この体も使いやすいな。我が名は嫉妬の悪魔レヴィアタン。この宿り主の願いを叶えてやるとするか。』
先程よりも力がある断然に違う。
「っクソ!やりづらい。」
『この程度か?そろそろ終わらせるぞ?』
「調子に乗るな!!!」
この非常事態に教員たちは、山下を止めるべく試行錯誤をしているが無駄であった。
涼は詠唱を始める。
「罪を背負いし者よ。汝は罪を贖うべきである。そんな汝に罰を与える。それを乗り越え、罪を贖え!『執行』!!!」
天から、極大な光の柱現れる。
「や、やめろ、やめろォ!!!!!!!!!!!!」
角と翼は無くなり、山下はその場に倒れた。
「そこまで!勝者越前涼!!」
山下はまだもがき苦しんでいる。
執行は、罪を贖う意識があるものに対して膨大な痛みが伴う。ということは彼にも罪の意識があったのだろう。
「次は凪沙先輩とか。」
最後の戦いに向け、歩き出した。
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