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Erweckender Moment
8章
しおりを挟む今、涼の目には信じられないものが写っている。
山下春木は平凡な少年であった。適正はあるが実力は平均的、ドルイド値も平均的。何もかもが普通である彼にとって、非凡が羨ましかった。
そう、彼は注目を浴びたかったのだ。いい意味悪い意味関係なく注目を浴びるのが夢だった。
そこで目に入ったのは涼である。彼はいい意味で注目を浴びているわけではなかったがそれでも羨ましく思った。
彼は人を虐めるような人間ではなかった。それが嫉妬で芽生えさせてしまった。
そんな彼も今は注目を浴びている。
あまり良くない浴び方であるが・・・
「ははは!!!雑魚すぎるだろ!!」
彼から発せられる黒いナニカ。人はあれを闇と呼ぶだろう。その闇が周りの生徒を食い散らかしていく。食い散らかすと言っても戦闘不能にしていくだけではあるが。
「山下って闇の使い手だったか?」
「違うはずよ。彼は炎魔法を使ってたはずだから。」
そう。彼は元々炎魔法を使っていた。しかし、彼が使ってるのはどう見ても闇。底が見えぬおぞましい闇である。
残るは山下とセクステット序列3位のサクラ・ドミナーである。
「そこまで!」
しかし、山下は止まらない。
「はは!お前もここで終わらせるぜ!!」
「少し落ち着こうか。」
彼女がしたのは手刀。しかし、それを視認できたのはごく僅かである。
サクラ・ドミナーはアリシアの妹であり、西の守護神ドミナー家の次女でもある。
「サクラさんありがとうございます。」
無事ではないが一応全部のの予選が終わった。
セクステットのメンバーは全員本戦出場である。
side.教職員会議
これから行われるのは山下春木の本戦出場を認めるか認めないかの会議である。
「皆の者はどう思う?」
質問したのは学院長であるアリシア・ドミナーだ。
「私は参加させるべきではないと思いますな。」
「わしもそう思いますぞ。というかここにいる人全員その考えでしょう。」
やはり、と感じたアリシア。
「私は参加させるべきだと思います。」
その時、声を上げたのは涼らの担任であるナターリアである。
「どうせお主は生徒を色眼鏡で見ておるからだろ!」
「いいえ、それは違いますよ。」
そう言ったのはアリシアだ。
「彼の力、少なからずアグレッサーの力を感じました。」
「なんですと!!」
周りが騒ぎ始める。
「お静かに。彼には何かしらの影響でアグレッサーの力が宿ってしまった。なら、その原因を炙り出すべきでしょう。」
「はい。その通りです。私が戦場にいた頃に感じた気配に似てました。」
ナターリアは元々戦場に立つ能力者であった。
「彼らセクステットもいますし、もしもの時は私が出ます。」
「あなたが出てくれるなら心強いですが・・・」
「ではこれで会議を終わります。」
side out.
side.月夜
「望、俊也、あいつは強くなったぞ。」
望と俊也は私の親友であり、涼の両親である。
「涼は望の意思を継ぐって言ってるんだぞ?あんなに泣き虫だったのにな。」
私は涼の試合を見て本当に成長したことを感動していた。あんなに残酷な状況にいながらお前は強くなったんだ。
私は涼が能力を何故持っていないかを知っている。そもそもの原因は望と俊也なんだけどな。
「お前ら2人の子供は立派に育ってるんだ。だからそっちでも元気にいろよ?」
私は独り言を吐くようにそこにいるはずのない人に向けて話す。
「涼は強い、だからお前達がいつまでも心配して現世に留まらなくていいんだ。」
私が話しかけている相手、見えてはいないがそこにいるのは分かる。
「じゃあな。」
その場所は光で溢れ、無事に成仏出来たことを理解する。
「また泣いちまったな。」
私はその場を後にした。
side out.
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