6 / 15
Erweckender Moment
6章
しおりを挟む涼には目標があった。それは1ヶ月後に行われる学外武芸大会『ベルルム』の学内予選である。
毎年ベルルムには12人の代表が出場する。春山学院はその大会で2位の結果を収めている。
涼の目的、それは見返すためである。落ちこぼれでもここまで出来ると、今まで馬鹿にしてきたヤツらに自分の強さを見てもらうためであった。
涼はそれを目標に日々切磋琢磨していった。
どんなに陰湿ないじめ、暴力を受けようと、諦めることは無かった。そして、それを傍から見守る者もいた。
その日々を胸に1ヶ月がたった。
「ふぅ、神崎流刀術二式、『天叢雲』!!」
『天叢雲』は、かつて素戔嗚尊が八岐大蛇の尾を切った時天叢雲剣が現れた。その神剣の権能をモチーフにした技である。
『天叢雲』はどんな硬いものでも切り裂くことが出来る。つまり切れないものは無い。
「よし、それも身についたな。ほか教えた技もだいぶ身に付いたはずだ。最後に奥伝を教える。私が教えるのはひとつのみ。あとは自分で編みだせ。と言っても、もう大体の形は浮かんでるんだろ?」
「なんで分かったんだ?」
この1ヶ月のあいだ、涼は技を教えてもらった直後に自己流に変えたり、それを発展させた新たな技を生み出した。
「ここでお前には神崎流の真髄を教えておこう。まず、神崎流の由縁は神殺しだった。しかし、月日が経つ事にそれは神の力を纏うことに変わっていった。涼、神を信じなくてもいい。ただ、自分が使う技は普通のものとは違うという事を覚えておいてほしい。」
「・・・あぁ。」
「じゃあ行くぞ!『神・破斬』!!」
この1ヶ月涼が感じたことは、スパルタすぎるというか強引というかとにかくめちゃくちゃであった。このように直接当てて感じろという。無茶にも程がある。
「神崎流刀術奥伝、『神・破斬』!!」
恐ろしいほどの速さで打ち出される木刀。無事取得できたようだ。
「おめでとう。今日で免許皆伝だ。」
「ふぅーやっとか!」
「最後にお願いがある。お前が考えた技を見せてくれないか?」
「うん?あ、いいよ。」
涼は木刀を構える。
「いくよ。竜胆流刀術奥伝、『神獄・破斬』」
月夜の目には、目の前の的が一瞬で切れただけにしか見えなかった。
「成功だ。」
「な、何をしたんだ?」
「『神・破斬』は身体能力をドルイドで極限にまで高めて剣を振るう技だろ?その状態で木刀にドルイドを纏わせたんだ。すると案の定衝撃波が飛ぶ。神速を超えるから人の目では追えない速度になる。」
月夜は何も言えなかった。確かにドルイドを纏うという理論までは構築できた。しかし、それができる人物が今までいなかったのだ。それは、ドルイドの扱いが上手い下手では無い。自分の限界を超えた上にドルイドを纏うことが出来なかったのである。
「いや、お前らしいな。」
ふふ、と笑う月夜。
「そういえばお前の流派、竜胆流だっけか?なんでそうしたんだ?」
「竜胆の花言葉は『勝利を確信する』俺に相応しいかなって。」
それに、と付け加える涼。
「母さんが好きな花だったから。」
これを聞き月夜は涙を流した。月夜と涼の母は親友だった。確かに涼の母は竜胆が好きであった。しかし、しばらくの間その事を忘れていたのだ。
「これじゃ、お前の親友失格だよな。」
「ど、どうして月夜さん泣いてるんだ!?」
「はは、何でもないよ。」
「月夜さん、ありがとう。俺に戦う術を教えてくれて。」
「別にいいさ。こちらも好きでやってたからな。それに遥が頼むからさ。」
「え?どういう事だ?」
「最初にお前が刀術に向いていると分かったのはあいつだよ。だから私に頼んだんだ。」
「そうだったのか・・・」
しばらくの間、遥を見なかったので見捨てられたのかと思っていたのだ。
「まぁ遥はずっとお前のこと見てたけどな。」
「え!嘘!」
「おい、隠れてないで出てこい。」
「やっぱりバレてたか。」
この親にしてこの子ありとはよく言ったものだ。
「まぁ、お前なら確実に代表入りすることできるさ。」
「別に俺の目的は代表に入ることじゃないんだ。ただ俺でも戦えるってことを知って欲しい。それに『セクステット』だっているんだ。」
『セクステット』学内順位上位6位に与えられる称号である。なぜ6人か、それは今まで圧倒的な強さを持ったのが6人しか現れなかったからである。
「別に『セクステット』に勝てと言ってるわけじゃないんだ。あと残り6枠に入ればいいさ。」
涼はそう言われても現実味がなかったので流していたが、既にその実力があるのに気づくのは予選がある日である。
──予選当日
「はんっ!お前雑魚のくせに来たんだな?」
こいつは俺を虐めてるとうか主格犯の山下 春木である。
他に加須山 遊、松田 利信がいる。
「俺はもう違うさ。強くなったからな。」
「ふ、ふははははは!!!お前ついに虚言癖でもついたか!?」
いつもは見て見ぬふりのクラスのみんなが盛大に吹き出す。どうやらおかしいようだ。
「いや、涼は本当に強くなったよ。私と同じくらいにね。」
(いやそれは言い過ぎ・・・)
内心そうつっこむのだった。
「何だと?」
周りの人は神崎さんが言うなら、と少しは信じたようだ。
「くそ!後で覚えてやがれ!」
ド三流のようなセリフを吐きこの場を去る。
「変なやつだな。」
side.山下 春木
「ちっ、くそ!」
神崎さんと同じくらい強いだと?なら俺が勝てるわけないじゃないか!
「やぁ、そこの少年。」
「何だてめぇ。部外者は入っちゃいけねんだぞ?」
「その性根の割に真面目なこと言うんだね。」
「君は強くなりたいかい?」
なんだこいつ。怪しすぎだろ。
「なりたいが何だよ。」
「これを飲むといい。」
これドーピングだろ?
「これは魔神薬と言われる近々商品化される物なんだ。それを君には特別にひとつあげよう。」
「こんなのいらねえよ!」
「まぁまぁ、受け取ってくれよ。」
そう言ってやつは消えた。ほんとなんだこの薬。
「まぁイライラするしどうにでもなれ!」
なんだ!?力が溢れる。
「これなら神崎にも勝てる!!」
俺は最強になったんだ!!
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜
月風レイ
ファンタジー
グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。
それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。
と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。
洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。
カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
放逐された転生貴族は、自由にやらせてもらいます
長尾 隆生
ファンタジー
旧題:放逐された転生貴族は冒険者として生きることにしました
★第2回次世代ファンタジーカップ『痛快大逆転賞』受賞★
★現在三巻まで絶賛発売中!★
「穀潰しをこのまま養う気は無い。お前には家名も名乗らせるつもりはない。とっとと出て行け!」
苦労の末、突然死の果てに異世界の貴族家に転生した山崎翔亜は、そこでも危険な辺境へ幼くして送られてしまう。それから十年。久しぶりに会った兄に貴族家を放逐されたトーアだったが、十年間の命をかけた修行によって誰にも負けない最強の力を手に入れていた。
トーアは貴族家に自分から三行半を突きつけると憧れの冒険者になるためギルドへ向かう。しかしそこで待ち受けていたのはギルドに潜む暗殺者たちだった。かるく暗殺者を一蹴したトーアは、その裏事情を知り更に貴族社会への失望を覚えることになる。そんな彼の前に冒険者ギルド会員試験の前に出会った少女ニッカが現れ、成り行きで彼女の親友を助けに新しく発見されたというダンジョンに向かうことになったのだが――
俺に暗殺者なんて送っても意味ないよ?
※22/02/21 ファンタジーランキング1位 HOTランキング1位 ありがとうございます!
異世界に追放されました。二度目の人生は辺境貴族の長男です。
ファンタスティック小説家
ファンタジー
科学者・伊介天成(いかい てんせい)はある日、自分の勤める巨大企業『イセカイテック』が、転移装置開発プロジェクトの遅延を世間にたいして隠蔽していたことを知る。モルモットですら実験をしてないのに「有人転移成功!」とうそぶいていたのだ。急進的にすすむ異世界開発事業において、優位性を保つために、『イセカイテック』は計画を無理に進めようとしていた。たとえ、試験段階の転移装置にいきなり人間を乗せようとも──。
実験の無謀さを指摘した伊介天成は『イセカイテック』に邪魔者とみなされ、転移装置の実験という名目でこの世界から追放されてしまう。
無茶すぎる転移をさせられ死を覚悟する伊介天成。だが、次に目が覚めた時──彼は剣と魔法の異世界に転生していた。
辺境貴族アルドレア家の長男アーカムとして生まれかわった伊介天成は、異世界での二度目の人生をゼロからスタートさせる。
食うために軍人になりました。
KBT
ファンタジー
ヴァランタイン帝国の片田舎ダウスター領に最下階位の平民の次男として生まれたリクト。
しかし、両親は悩んだ。次男であるリクトには成人しても継ぐ土地がない。
このままではこの子の未来は暗いものになってしまうだろう。
そう思った両親は幼少の頃よりリクトにを鍛え上げる事にした。
父は家の蔵にあったボロボロの指南書を元に剣術を、母は露店に売っていた怪しげな魔導書を元に魔法を教えた。
それから10年の時が経ち、リクトは成人となる15歳を迎えた。
両親の危惧した通り、継ぐ土地のないリクトは食い扶持を稼ぐために、地元の領軍に入隊試験を受けると、両親譲りの剣術と魔法のおかげで最下階級の二等兵として無事に入隊する事ができた。
軍と言っても、のどかな田舎の軍。
リクトは退役するまで地元でのんびり過ごそうと考えていたが、入隊2日目の朝に隣領との戦争が勃発してしまう。
おまけに上官から剣の腕を妬まれて、単独任務を任されてしまった。
その任務の最中、リクトは平民に対する貴族の専横を目の当たりにする。
生まれながらの体制に甘える貴族社会に嫌気が差したリクトは軍人として出世して貴族の専横に対抗する力を得ようと立身出世の道を歩むのだった。
剣と魔法のファンタジー世界で軍人という異色作品をお楽しみください。
世界最強の勇者は伯爵家の三男に転生し、落ちこぼれと疎まれるが、無自覚に無双する
平山和人
ファンタジー
世界最強の勇者と称えられる勇者アベルは、新たな人生を歩むべく今の人生を捨て、伯爵家の三男に転生する。
しかしアベルは忌み子と疎まれており、優秀な双子の兄たちと比べられ、学校や屋敷の人たちからは落ちこぼれと蔑まれる散々な日々を送っていた。
だが、彼らは知らなかったアベルが最強の勇者であり、自分たちとは遥かにレベルが違うから真の実力がわからないことに。
そんなことも知らずにアベルは自覚なく最強の力を振るい、世界中を驚かせるのであった。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる