身体強化って、何気にチートじゃないですか!?

ルーグイウル

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「………………ケホッケホッ」


 立原隆人(たてはら りゅうと)という人間は生まれつき身体が弱かった。
 1年365日のうち体調のいい日の方が少ないと言ったレベルである。

 
 医師には、免疫が不足している為にほんの微量のウィルスですらも、隆人にとっては脅威になってしまうのだと言われた。


 なので隆人は外に出ることすら滅多にできない生活をしていた。


「ほら隆人、おかゆ持ってきたわよ」


 そして、隆人がこうして体調を崩す度に、母は隆人をつきっきりで看病し、父も仕事の合間を縫って隆人のことを気にかけてくれていた。


「ゲホッ……ありがとう母さん」


 普段から体調を崩しがちな隆人だが、今日はそれに輪をかけて症状が重い。
 いままでにない程衰弱した隆人の姿は不吉なものを想像させた。


「大丈夫よ、もう少しでお医者さんの先生が診にきてくれるそうだから」


 安心させるように言う母の声にも焦りが滲んでいる。


(俺の人生はここで終わるのかな)
 

 体は鉛にでもなったように鈍く、手足の感覚は既に無くなってきていた。


(あーあ、何かあっけないね)


 傍に置かれた機械が警報音を鳴らす。母は慌てて隆人に何か話しかけてるが、その声は隆人には届いていない。


(こんな身体じゃなければ、もっと色んな事が出来たんだろうな、友達を作ったり、思いっきり遊んだり)


 身体の感覚がどんどん失われる。隆人の脳裏には中身のない走馬灯が浮かぶ。


(でももし、俺に二度目の人生があったとしたら、願いが叶うのだとしたら、今度こそーー)


 明滅する意識の中で隆人が最後に抱いたのは、強い渇望だった。


(ーー"もっと強い身体"が欲しい!)


  ピーーーピーーー


 そして、その思いを最後に隆人の意識は闇に沈んだ。
 立原隆人と言う人間はこの日、強い願いを抱えたまま地球での生涯を終えた。
 そして…………






 

 〈ユニークスキル"身体強化"を習得しました〉


 




 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


(ここは……どこだ?)


 隆人の意識が次に戻った時隆人がいたのは自宅とは全く違う、薄暗い謎の部屋だった。
 部屋は薄暗く、空気はひんやりとしている。


(どういうこと?俺は死んだんじゃなかったのかな?)


 隆人の記憶では、意識がなくなる前に自分がいたのは自宅のベッドで、意識が途絶える時は死を覚悟した。
 何より、自宅にいた筈なのに気がつけばこんなよくわからない場所にいる意味がわからない。


(それじゃあここは死後の世界?それにしては無機質な場所だね……)


 隆人がいたのは5、6畳の小部屋のような場所で地面、壁、そして天井も土のようなもので出来ている。ところどころに埋まっているほんのりとロウソク程の光を発する石が唯一の光源の為に辺りは薄暗い。そして、部屋の一方には出口のように空いたところがある。


(とまぁ、見てわかるのはこんなもんかな?後は俺の身体だけど……)


 そうして自分の姿を見下ろす。目線からして身長は少し縮んでいるようだが、痩せ細っていたはずの体はそれなりに筋肉も脂肪もついており、健康体という感じがする。


(これは本当に俺……?せめてもう少し情報があればいいんだけど……)


 半ばダメ元でそうな風に考えた隆人だが、それに反応するように脳裏に数字と文字の羅列が浮かぶ。




  隆人/人間族 LV.1  job なし

 HP 25/25  MP 13/13

  STR  6
  MND  4
  VIT  6
  AGI  5
         魔法適正 風
 スキル 
  ユニークスキル 身体強化 LV.1

  パッシブスキル 無し

  習得スキル   無し
 


「…………なんだこれ」


 突然脳裏に浮かんだそれは、それなりに馴染みがあるものであり、同時に絶対ありえないものであった。
 たっぷり数秒フリーズし、戸惑いの声を上げる。


「これ……ステータス画面?まさか、ゲームじゃあるまいし」


 そう、ゲームでよく見るステータス画面にそっくりだった。元々家から出られない隆人は普段からゲームなどをしていた隆人にとっては馴染みのあるものである。
 だが本来、それはゲームの中にしか存在しないものであり、現実にはありえないはずなのだ。


「俺は夢でも見てるのか……?それにしてはこの空間はリアル過ぎるし、目もばっちり覚めてる。ほっぺも……っ!痛い」


 これが夢じゃないことを確認した隆人だが、それによって余計に謎が増す。
 しかし、隆人の頭に唐突にある可能性が浮かぶ。


「……もしかしてこれ、異世界転生ってやつ!?」


 そう考えるとなぜかしっくりきた。理由はわからないが本能的にそうだと確信できた。


「まさか本当に異世界に行っちゃうなんて……ファンタジーの中だけだと思ってたんだけど……。ってことはここはダンジョンで、出口の先には魔物とかもいるんだろうか……」


 寝たきりでゲームやラノベを読んでいた隆人にとって、自分が異世界に行き、しかも地球と違って自由に身体が動くこの状況に戸惑いと興奮が混ざる。
 そして、次第に戸惑いが収まると徐々にワクワクが込み上げてくる。


「よし!せっかく異世界にきたんだ、ラノベみたいにチートスキルで無双していこう!」


 そしてそのワクワクのまま、正面にあった出口のようなところを通って部屋を出る。
 そこには通路のような横道があり、出てすぐ50メートル程先にーー


「……燃えた……熊?」


 ーー化け物がいた。
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