身体強化って、何気にチートじゃないですか!?

ルーグイウル

文字の大きさ
上 下
132 / 141
6章 大闘祭

参加申し込み

しおりを挟む
(久々に冒頭からこんばんわ、今回も説明会の部分が多くなるかもしれないです(大会の流れとか……))




 王都にきて2日目、隆人達4人の姿はとある巨大な建造物の前にあった。そこには彼らだけではなくわらわらと数えきれぬ程の人々が集まっていた。


「ティナ、ここが?」
「はい、大闘祭の会場となる『王国総合闘技場』です。建国当初からある建築物で普段は観光名所として人気だそうですよ」


 ティナが手にした紙に視線を落としながら、声で隆人の問いに答える。その紙は観光用の小冊子、つまりパンフレットである。昨日の自由時間、ロロノと行動していたティナは、街を回りながら王都や大闘祭の情報を集めていた。
 何せ隆人達4人は物の見事に全員が王都初上陸であり、異世界転生者に奴隷、森を出たことのないエルフである。元公爵令嬢で箱入り娘のはずのティナが(誤差程度で)一番詳しいという時点でお察しである。


 そこで、「自分が案内役をしなければ!」とティナが張り切ったというわけである。この小冊子は情報収集の途中で、見つけた観光案内所のような場所で配られていた。王国最大都市だけあり足を運ぶ人も多い、その対応も万全なのである。
 この話を昨夜宿で聞いた隆人は思わず「真面目だなぁ……」と呟いていた。


 ちなみに、昨夜は謎のフード外套の男のせいで、結局隆人は宿での集合に間に合わなかった。ティナ達もかなり心配したようで、隆人が着くや否や安堵をみせながらもこっぴどく叱りつけた。
 流石に隆人も悪いと思っていたようでティナの怒りが収まるまで正座でお叱りを受け続けいた。


 原因については、道に迷った、と適当にごまかしている。隆人自身もよくわかっておらず無闇に話して心配させる必要はないと思ったのだ。
 その後、一晩色々と考えてみたがあの男に着いては何の結論も得られなかった。


 
「……ていうか、これーー」


 だがそんな些細なことはもうどうでもよい、隆人の意識は今、全て目の前の建物に集中していた。
 王国総合闘技場、それは白い巨大な円筒形闘技場で、円周部にはアーチ型の入り口が無数に開いており。そして何より、闘技場の上部のおよそ半分が。そう、


「ーーコロッセオ、だよね。どう考えても」


 呆れが多分に込められた苦笑いを浮かべながら隆人が言葉を漏らす。


 地球という世界で最も有名な建造物の一つである「コロッセオ」。ローマ帝国が築いた円形闘技場であり、毎年世界中から観光客が訪れる名所。
 このグランザムにある王国総合闘技場はそンなコロッセオに非常によく似ている。というよりも、明確に模倣したのであろう。


 しかもご丁寧に、本当に使われていた当初の完璧な姿ではなく、解体され一部が損失した現在の姿で、である。
 ここまでくると完全に狙ってやったとしか考えられない。


「なるほど、確かに建国王様達が築いたこの闘技場は異世界にある似たような建築物を参考にしたと言われていますからね。見た目によらず強度はあのこの街を囲う壁と同程度、他にも様々な効果が付加さ れた最高クラスの魔法建造物でもあるようです」
「これ程の建築達に魔法を施すとは、建国王という者は途方もないのだな」


 ネタに全力を尽くす。ティナの話からそんな気概がありありと浮かぶ。その横ではシルヴィアとロロノが壮大な建築を目を丸くしながら眺めている。
 そうして雑談をしつつ、隆人達は総合闘技場の中へと足を踏み入れた。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「ーーへぇ、これは中々……」
「リュート様、受付はあそこみたいですよ」


 ティナが一方を示す。たしかにそこには大闘祭参加者受付の札がかかっている。やはり最終日という事もあり並んでいる列はまばら……というかほぼ0である。
 周りにはたくさんの人がいるが、その者達は難しい顔で受付を睨みつけているだけで動く様子がない。並んでいないのなら、と隆人達は受付に向かう。



「大闘祭の申し込み希望の方でしようか?」
「うん、そのつもりなんだけど」
「かしこまりました。ではどちらの級への申し込みをご希望ですか?」
「級?」


 返された受付嬢の質問に疑問符を浮かべる隆人と後ろ3人に得心がいった様子で受付嬢が答える。


「なるほど、皆さまは初めての方でしたか。それでは説明させて頂きますね?大闘祭にはいくつか区分がございます。冒険者カードやステータス欄に"job"という箇所がありますよね?その区分に応じた大会があるのですよ。例えば戦士級や魔法使い級と言った具合ですね。一般には職別級と呼ばれています。各jobごとに少しずつルールが違っていて、例えば戦士級なら開始時の間合いが近かったりするんです。そのjobがもっとも実力を発揮できるように決められているんですよ。ーー」


 長文が淀みなくスラスラと受付嬢の口から語られる。おそらくこの類の質問を受けるのは珍しい事ではないのだろう。
 そのまま、一息に言葉を続けていく。


「ーーそしてもう一つ、"無差別級"という級がございます。こちらは名称の通り無差別、つまりjobに関係なく出場できる大会です。世界中から猛者が集い最強を決める大闘祭の本番と言えますね」


 そこまで言い切って受付嬢がほぅと一息吐く。


「以上がおおまかな説明となりますが、もう一度説明致しましょうか?
「いや、大丈夫だよ。それじゃあ無差別級の方に参加申請してもらえるかな?」
「無差別級ですか!?たしかに、参加に関しては制限など設けていませんが……。失礼ながら大闘祭の参加が始めてという事でしたら、職別級の方がいいと思います!無差別級は本当に危険なのですよ。いくら武器は歯を潰したもので、闘技場の加護もあるとは言え、怪我をする人も珍しくないんです」



 まくし立てるように受付嬢がつぶやく。その勢いたるや隆人も少したじろぐほどである。たしかに隆人は見た目だけで言えば線は細く、鋭さもない、平たく言えば強そうには見えない。しかも大会のルールも知らないのだ、客観的に見れば観光目的でやってきた青年がノリで参加しようとしている、そう思われても仕方ない。
 むしろ後ろのティナやシルヴィアの方が冒険者としての風格は持ち合わせているかもしれない。


 熾烈な戦いが行われるであろう大闘祭、しかも無差別級となれば恐らく剣に魔法にスキルに、様々な攻撃が入り乱れるのであろう。
 そんな中に隆人を送りたくないというのもなんとなく理解できる。それにもしこれで参加した隆人が大怪我を負うものならそれこそ寝覚めも悪いだろう。


 そんな中、場の流れを変えたのはーー


「大丈夫ですよ、リュートくんにはそんな心配はいりません」


 突然後ろから投げかけられた一声であった。
しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

転生してテイマーになった僕の異世界冒険譚

ノデミチ
ファンタジー
田中六朗、18歳。 原因不明の発熱が続き、ほぼ寝たきりの生活。結果死亡。 気が付けば異世界。10歳の少年に! 女神が現れ話を聞くと、六朗は本来、この異世界ルーセリアに生まれるはずが、間違えて地球に生まれてしまったとの事。莫大な魔力を持ったが為に、地球では使う事が出来ず魔力過多で燃え尽きてしまったらしい。 お詫びの転生ということで、病気にならないチートな身体と莫大な魔力を授かり、「この世界では思う存分人生を楽しんでください」と。 寝たきりだった六朗は、ライトノベルやゲームが大好き。今、自分がその世界にいる! 勇者? 王様? 何になる? ライトノベルで好きだった「魔物使い=モンスターテイマー」をやってみよう! 六朗=ロックと名乗り、チートな身体と莫大な魔力で異世界を自由に生きる! カクヨムでも公開しました。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で最強に・・・(旧:学園最強に・・・)

こたろう文庫
ファンタジー
カクヨムにて日間・週間共に総合ランキング1位! 死神が間違えたせいで俺は死んだらしい。俺にそう説明する神は何かと俺をイラつかせる。異世界に転生させるからスキルを選ぶように言われたので、神にイラついていた俺は1回しか使えない強奪スキルを神相手に使ってやった。 閑散とした村に子供として転生した為、強奪したスキルのチート度合いがわからず、学校に入学後も無自覚のまま周りを振り回す僕の話 2作目になります。 まだ読まれてない方はこちらもよろしくおねがいします。 「クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される」

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

捨てられた転生幼女は無自重無双する

紅 蓮也
ファンタジー
スクラルド王国の筆頭公爵家の次女として生を受けた三歳になるアイリス・フォン・アリステラは、次期当主である年の離れた兄以外の家族と兄がつけたアイリスの専属メイドとアイリスに拾われ恩義のある専属騎士以外の使用人から疎まれていた。 アイリスを疎ましく思っている者たちや一部の者以外は知らないがアイリスは転生者でもあった。 ある日、寝ているとアイリスの部屋に誰かが入ってきて、アイリスは連れ去られた。 アイリスは、肌寒さを感じ目を覚ますと近くにその場から去ろうとしている人の声が聞こえた。 去ろうとしている人物は父と母だった。 ここで声を出し、起きていることがバレると最悪、殺されてしまう可能性があるので、寝たふりをして二人が去るのを待っていたが、そのまま本当に寝てしまい二人が去った後に近づいて来た者に気づくことが出来ず、また何処かに連れていかれた。 朝になり起こしに来た専属メイドが、アイリスがいない事を当主に報告し、疎ましく思っていたくせに当主と夫人は騒ぎたて、当主はアイリスを探そうともせずに、その場でアイリスが誘拐された責任として、専属メイドと専属騎士にクビを言い渡した。 クビを言い渡された専属メイドと専属騎士は、何も言わず食堂を出て行き身支度をして、公爵家から出ていった。 しばらく歩いていると、次期当主であるカイルが後を追ってきて、カイルの腕にはいなくなったはずのアイリスが抱かれていた。 アイリスの無事に安心した二人は、カイルの話を聞き、三人は王城に向かった。 王城で、カイルから話を聞いた国王から広大なアイリス公爵家の領地の端にあり、昔の公爵家本邸があった場所の管理と魔の森の開拓をカイルは、国王から命られる。 アイリスは、公爵家の目がなくなったので、無自重でチートし続け管理と開拓を命じられた兄カイルに協力し、辺境の村々の発展や魔の森の開拓をしていった。 ※諸事情によりしばらく連載休止致します。 ※小説家になろう様、カクヨム様でも掲載しております。

伯爵家の三男は冒険者を目指す!

おとうふ
ファンタジー
2024年8月、更新再開しました! 佐藤良太はとある高校に通う極普通の高校生である。いつものように彼女の伶奈と一緒に歩いて下校していたところ、信号無視のトラックが猛スピードで突っ込んで来るのが見えた。良太は咄嗟に彼女を突き飛ばしたが、彼は迫り来るトラックを前に為すすべも無く、あっけなくこの世を去った。 彼が最後に見たものは、驚愕した表情で自分を見る彼女と、完全にキメているとしか思えない、トラックの運転手の異常な目だった... (...伶奈、ごめん...) 異世界に転生した良太は、とりあえず父の勧める通りに冒険者を目指すこととなる。学校での出会いや、地球では体験したことのない様々な出来事が彼を待っている。 初めて投稿する作品ですので、温かい目で見ていただければ幸いです。 誤字・脱字やおかしな表現や展開など、指摘があれば遠慮なくお願い致します。 1話1話はとても短くなっていますので、サクサク読めるかなと思います。

前世の記憶さん。こんにちは。

満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。 周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。 主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。 恋愛は当分先に入れる予定です。 主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです! 小説になろう様にも掲載しています。

処理中です...