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第4章 一通の手紙と令嬢の定め
それでも仲間でいてくれますか?
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(書いていてふと思ったのですが、4章がこのペースだとかなり長くなりそうなんですよね……
投稿後加筆しました!)
「それで、その手紙は一体どんな内容なのかな?」
隆人は何度も通され見慣れきったギルドの一室で、目の前に座るギルドマスターのスティングに問いを発する。
ギルド職員から呼び出しを受けた隆人、ティナ、ロロノの三人は、商業区にある冒険者ギルドに足を運んだ。
そこで手紙を受け取って終わりだと思っていた隆人達であったが、ギルドに到着した一行はそのまま案内人によって二階へと連行されたのだ。
何も知らされず連れていかれた二階のいつもの部屋では、例のごとくスティングが難しい顔をして座って待っていた。
そして隆人の第一声がこれであった。
「手紙を受け取るのにわざわざ個室って事は、それくらい重要なものなのかな?」
「実はな、この手紙は昨日ギルドに届いたんだが、行商の荷物とともにではなく、1つの冒険者パーティがギルドに直接届けてきたんだ。どうやら『手紙を届けること』という依頼を受けてディアラに来たらしい」
この世界では、手紙というのは最もポピュラーな連絡ツールである。携帯電話などは存在しない為、遠距離にいる人と連絡を取るには、手紙を書いて送るというのが常識なのである。
そして郵便局に近い役割をするのは冒険者ギルドである。そもそも冒険者という職が広く存在するこの世界では、定宿を持たない又は滅多に帰らないという人も珍しくはない。そんな冒険者達に連絡を付けるには冒険者ギルドに頼るのが一番確実である。
更に、冒険者ギルドは各地を回る行商の護衛を依頼という形で引き受けている。その際に、行商の荷物と一緒に運んでいるのだ。商人達は確実に安全に護衛を得られ、ギルドも低コストで郵送が可能、両者win-winの関係である。
と、基本的に手紙というのは行商と一緒に来るものなのであるが、稀に例外がある。それは、手紙の主が直接冒険者を雇い手紙を現地に運ばせるパターンである。
わざわざ手紙一つで冒険者を雇うなど一般人には考えられないが、貴族など資産があり、かつ手紙が極めて重要で機密性の高いものの場合は割とよく取られる手段であり、また強い権力を持つ貴族はお抱えの冒険者がいることも少なくなく、その者に頼むことも多い。
「しかも、届けに来た冒険者は4人組のBランクパーティ、そんな者達を郵送で使うなんて考えられない」
「確かに、Bランクと言えば一流の冒険者パーティ。『太陽の剣』も確かBランクパーティでしたよね?」
つまり、この手紙の差出人は、それだけの戦力を手紙一枚届けるのに使ったというわけである。もちろん団員数や地盤という意味で「太陽の剣」と同格とは言い切れないが、それに近い戦力であるのは事実である。
「あぁ、しかもこの手紙には『ディアラのギルドマスター、及び届け先本人以外の閲覧を禁ず』と書かれていてな、実際運んできたBランクパーティも中に何が書かれているか知らないそうだ」
「随分と大袈裟だね……」
スティングの話を聞く隆人が思わず声を漏らす。一流戦力を運び人に選出し、ギルドに直接届ける事で最低限の人にしか見させないように徹底する。たかが手紙にするような手間ではない。
「俺もそう思うが、差出人を見るにそれも当然かと思えてしまってな」
「そうだ、差出人は誰なのかな?」
これまで手紙の異常性に意識が行っていたが、確かにこんな手段を用いてまで隆人達に手紙を届けた依頼主、誰なのか気になって当然だろう。
「……オズワルド・グランザム・シャリエ公爵殿。シャリエ公爵家の現家主だ」
「っ」
名前を告げた瞬間、隆人のとなりで座っていたティナがピクリと反応する。
「シャリエ公爵家、王宮に告ぐ権力を持つ3つの公爵家のうちの1つで武に秀でた名家。グランザム連合王国の軍部に強い影響を持ち、連合王国建国以来一族から多くの王族婚姻者を出している。数多くの高明な冒険者をお抱えにしていて、今回手紙を届けてきたのもそのお抱えのうちの1つだろう。オズワルド殿もまだ若いながらその辣腕と智と武の才を持つ傑物との話だ。」
「なるほど、公爵とはね……」
隆人は今度は感嘆を示す。現代日本に暮らしていた隆人にとって貴族とは外国か歴史の話である。この展開に驚きと興奮を覚えていた。
だが、隣のティナは先程からじっと俯いている。
「それと、君達『暁の風』宛てと言ったが実はそうじゃない。この手紙はクリスティーナ、君宛てだ」
「っ」
スティングに名前を呼ばれて、ティナは再びピクリと身体を動かす。顔は未だ俯いたままである。
「クリスティーナ君だけ呼ぶと怪しまれると思ってな、わざわざ来てもらっておいて本当に申し訳ない」
「いえ、その判断にも納得できるからね。それじゃあ俺たちは一度席を外した方がいいのかな?」
「あぁ、そうして貰えると助かる」
「わかりました」
最初は興奮していた隆人だが、手紙の宛てが自分ではなく、秘匿の必要があるとわかった時点で、すぐに自分がここにいるべきではないと理解した。
そして立ち上がり、案内人としてきたギルド職員と共に退出しようとしたところで、
「待ってください。リュート様、ロロノ。おそらく2人には見る権利があると思います」
今まで俯いていたティナが顔をあげ、ここに来て初めて声を発する。その声は震えていたが何か強い思いが感じられた。
「クリスティーナ?」
「私の予想が正しければ、ですけどね。なので2人とも戻ってきてくれませんか」
「ティナがそういうのなら」
隆人はティナの言葉に従い、再び席に戻る。案内人の職員はそのまま退出した。
ロロノはおそらく状況に追いつけていないのかなすがままである。
「それでは、開けますね」
そして、隆人達が席に戻ったところで、ティナが手紙の封を切った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
クリスティーナ・グランザム・シャリエ
今すぐ領地へと帰ってくるように。
オズワルド・グランザム・シャリエ
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
封を開けたティナが手紙を机の上に置く。荘厳な便箋に書かれていたのはしかし非常に端的な内容であった。
「ティナ?」
しばらくその場が沈黙する中で、隆人のその言葉が雰囲気を破る。その場の視線は全てティナに向いていた。
「………………やはり、そうですか」
当のティナは絞り出すような声を呟くと立ち上がる。そしてそのまま、机の側面側へと移動し、隆人に向き直る。
「今まで黙っていて申し訳ありませんでした。私の名前はクリスティーナ・グランザム・シャリエ。シャリエ公爵第二令嬢でございます」
これまでとは違う恭しい雰囲気でその「名」を名乗り、深々とお辞儀をする。その姿はまさにお嬢様であった。
そして、語り出す。
「私はシャリエ公爵家の次女として生まれ、その瞬間から王族との結婚が決まっておりました。幼き頃より様々な教養を学び、箱入り娘として大切に育てられました。家から出ることはなく外の世界を知ることが無いまま」
曰く、そんな生活に退屈していたティナは、教養を学ぶ中で少しずつ外への憧れを募らせていたのだという。そして剣と魔法の修練を始めたのだ。
「幸い、武に優れた我がシャリエ公爵家の長兄は剣術に優れていて、お抱えの冒険者方の中で特に父と親しかった方は高明な魔法使いでした。私は習い事の隙間を縫いながら兄から剣を、冒険者の方から魔法を学びました。護身術と言ってお願いしましたが、今になって思えば2人とも私の気持ちを知っていたのかもしれません」
そして、元より才能のあったティナは優れた2人の教えを得てどんどん開花し、実力を伸ばしたのだという。
来るべきその日の為に。
「そして5年程前、父が王都に向かい、兄弟達もそれぞれ用事で家を空けた日、私はここしかないと思いました。そして父の書斎に言伝を残して私は家を出たのです」
そして、長い旅路の果てでこの迷宮都市ディアラにたどり着いたという。元より箱入り娘で顔を知られているのはごくわずかであり、冒険者という身元不明の人々の溜まり場とも言えるこの街なら見つからないと考えたのだ。
「そして、このディアラで私は冒険者として第2の人生を歩みました。この街での冒険者としての生活は刺激的で感動に満ち溢れていました。死にかけた事や身の危険を感じた事もありましたが、なんとか乗り越えました。その度に生きているという実感を感じました」
そして、冒険者としてのティナはその凄まじい才あってメキメキと実力を伸ばしていく。やがて冒険者の集う迷宮都市でソロとしてはトップクラスの実力を持つに至ったのである。
そして、あの日、隆人と出会ったのだ。
「サイクロプスと戦い、死を覚悟した中で現れたリュート様はまさに英雄の姿そのものでした。そしてこの人と共にいたい。一緒に強くなりたいと、そう思えたのです」
ティナはその事情故、バレる可能性がある以上パーティを組む事も出来ず、また他人を巻き込みたくないと考えていた。
しかし隆人との出会いが、その自制を上回ってしまったのだという。
「しかし、それも今日で終わりです。私の居場所が知られた以上、シャリエ領に戻らねばなりません。でなければ問題となって関係ない大勢の人を巻き込んでしまいます。いつかこんな日が来るとはわかっていました。私のわがままで本当にごめんなさい。これが私、クリスティーナ・グランザム・シャリエの全てです」
そう締めくくったティナの目には涙が浮かんでいる。
その場に再び静寂が生まれる。
「………….……よし、じゃあみんなで行こうか」
そんな中でしばらく熟考していた隆人がやがて顔を上げて、ティナに言い放つ。
「え?」
「ティナは俺たちと一緒にいたいんだよね?じゃあ俺たちも一緒にそのお父さんのところに行って、旅を許してもらおう!」
「ですが!私には生まれた頃から婚約者がいて……」
「言ってみないとわからないでしょ?それくらいの窮地、ティナなら乗り越えられるよ」
真っ白な笑顔でそう言い放つ隆人。
「ですが、街をでなければなりませんし」
「そろそろ他の街にも行ってみたかったからね」
「これまでずっと隠し事をしたのですよ?」
「でも、今話してくれたじゃないか」
ティナの発する否定の言葉をズバズバと切り裂いていく。
「これから2人にはもっともっとたくさんの迷惑をかけると思います……それでも、仲間でいてくれますか?」
おずおずと切り出されたその言葉に、隆人はニコリと笑って、
「うん、もちろんだよ!
そう言い放ったのだ。
投稿後加筆しました!)
「それで、その手紙は一体どんな内容なのかな?」
隆人は何度も通され見慣れきったギルドの一室で、目の前に座るギルドマスターのスティングに問いを発する。
ギルド職員から呼び出しを受けた隆人、ティナ、ロロノの三人は、商業区にある冒険者ギルドに足を運んだ。
そこで手紙を受け取って終わりだと思っていた隆人達であったが、ギルドに到着した一行はそのまま案内人によって二階へと連行されたのだ。
何も知らされず連れていかれた二階のいつもの部屋では、例のごとくスティングが難しい顔をして座って待っていた。
そして隆人の第一声がこれであった。
「手紙を受け取るのにわざわざ個室って事は、それくらい重要なものなのかな?」
「実はな、この手紙は昨日ギルドに届いたんだが、行商の荷物とともにではなく、1つの冒険者パーティがギルドに直接届けてきたんだ。どうやら『手紙を届けること』という依頼を受けてディアラに来たらしい」
この世界では、手紙というのは最もポピュラーな連絡ツールである。携帯電話などは存在しない為、遠距離にいる人と連絡を取るには、手紙を書いて送るというのが常識なのである。
そして郵便局に近い役割をするのは冒険者ギルドである。そもそも冒険者という職が広く存在するこの世界では、定宿を持たない又は滅多に帰らないという人も珍しくはない。そんな冒険者達に連絡を付けるには冒険者ギルドに頼るのが一番確実である。
更に、冒険者ギルドは各地を回る行商の護衛を依頼という形で引き受けている。その際に、行商の荷物と一緒に運んでいるのだ。商人達は確実に安全に護衛を得られ、ギルドも低コストで郵送が可能、両者win-winの関係である。
と、基本的に手紙というのは行商と一緒に来るものなのであるが、稀に例外がある。それは、手紙の主が直接冒険者を雇い手紙を現地に運ばせるパターンである。
わざわざ手紙一つで冒険者を雇うなど一般人には考えられないが、貴族など資産があり、かつ手紙が極めて重要で機密性の高いものの場合は割とよく取られる手段であり、また強い権力を持つ貴族はお抱えの冒険者がいることも少なくなく、その者に頼むことも多い。
「しかも、届けに来た冒険者は4人組のBランクパーティ、そんな者達を郵送で使うなんて考えられない」
「確かに、Bランクと言えば一流の冒険者パーティ。『太陽の剣』も確かBランクパーティでしたよね?」
つまり、この手紙の差出人は、それだけの戦力を手紙一枚届けるのに使ったというわけである。もちろん団員数や地盤という意味で「太陽の剣」と同格とは言い切れないが、それに近い戦力であるのは事実である。
「あぁ、しかもこの手紙には『ディアラのギルドマスター、及び届け先本人以外の閲覧を禁ず』と書かれていてな、実際運んできたBランクパーティも中に何が書かれているか知らないそうだ」
「随分と大袈裟だね……」
スティングの話を聞く隆人が思わず声を漏らす。一流戦力を運び人に選出し、ギルドに直接届ける事で最低限の人にしか見させないように徹底する。たかが手紙にするような手間ではない。
「俺もそう思うが、差出人を見るにそれも当然かと思えてしまってな」
「そうだ、差出人は誰なのかな?」
これまで手紙の異常性に意識が行っていたが、確かにこんな手段を用いてまで隆人達に手紙を届けた依頼主、誰なのか気になって当然だろう。
「……オズワルド・グランザム・シャリエ公爵殿。シャリエ公爵家の現家主だ」
「っ」
名前を告げた瞬間、隆人のとなりで座っていたティナがピクリと反応する。
「シャリエ公爵家、王宮に告ぐ権力を持つ3つの公爵家のうちの1つで武に秀でた名家。グランザム連合王国の軍部に強い影響を持ち、連合王国建国以来一族から多くの王族婚姻者を出している。数多くの高明な冒険者をお抱えにしていて、今回手紙を届けてきたのもそのお抱えのうちの1つだろう。オズワルド殿もまだ若いながらその辣腕と智と武の才を持つ傑物との話だ。」
「なるほど、公爵とはね……」
隆人は今度は感嘆を示す。現代日本に暮らしていた隆人にとって貴族とは外国か歴史の話である。この展開に驚きと興奮を覚えていた。
だが、隣のティナは先程からじっと俯いている。
「それと、君達『暁の風』宛てと言ったが実はそうじゃない。この手紙はクリスティーナ、君宛てだ」
「っ」
スティングに名前を呼ばれて、ティナは再びピクリと身体を動かす。顔は未だ俯いたままである。
「クリスティーナ君だけ呼ぶと怪しまれると思ってな、わざわざ来てもらっておいて本当に申し訳ない」
「いえ、その判断にも納得できるからね。それじゃあ俺たちは一度席を外した方がいいのかな?」
「あぁ、そうして貰えると助かる」
「わかりました」
最初は興奮していた隆人だが、手紙の宛てが自分ではなく、秘匿の必要があるとわかった時点で、すぐに自分がここにいるべきではないと理解した。
そして立ち上がり、案内人としてきたギルド職員と共に退出しようとしたところで、
「待ってください。リュート様、ロロノ。おそらく2人には見る権利があると思います」
今まで俯いていたティナが顔をあげ、ここに来て初めて声を発する。その声は震えていたが何か強い思いが感じられた。
「クリスティーナ?」
「私の予想が正しければ、ですけどね。なので2人とも戻ってきてくれませんか」
「ティナがそういうのなら」
隆人はティナの言葉に従い、再び席に戻る。案内人の職員はそのまま退出した。
ロロノはおそらく状況に追いつけていないのかなすがままである。
「それでは、開けますね」
そして、隆人達が席に戻ったところで、ティナが手紙の封を切った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
クリスティーナ・グランザム・シャリエ
今すぐ領地へと帰ってくるように。
オズワルド・グランザム・シャリエ
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封を開けたティナが手紙を机の上に置く。荘厳な便箋に書かれていたのはしかし非常に端的な内容であった。
「ティナ?」
しばらくその場が沈黙する中で、隆人のその言葉が雰囲気を破る。その場の視線は全てティナに向いていた。
「………………やはり、そうですか」
当のティナは絞り出すような声を呟くと立ち上がる。そしてそのまま、机の側面側へと移動し、隆人に向き直る。
「今まで黙っていて申し訳ありませんでした。私の名前はクリスティーナ・グランザム・シャリエ。シャリエ公爵第二令嬢でございます」
これまでとは違う恭しい雰囲気でその「名」を名乗り、深々とお辞儀をする。その姿はまさにお嬢様であった。
そして、語り出す。
「私はシャリエ公爵家の次女として生まれ、その瞬間から王族との結婚が決まっておりました。幼き頃より様々な教養を学び、箱入り娘として大切に育てられました。家から出ることはなく外の世界を知ることが無いまま」
曰く、そんな生活に退屈していたティナは、教養を学ぶ中で少しずつ外への憧れを募らせていたのだという。そして剣と魔法の修練を始めたのだ。
「幸い、武に優れた我がシャリエ公爵家の長兄は剣術に優れていて、お抱えの冒険者方の中で特に父と親しかった方は高明な魔法使いでした。私は習い事の隙間を縫いながら兄から剣を、冒険者の方から魔法を学びました。護身術と言ってお願いしましたが、今になって思えば2人とも私の気持ちを知っていたのかもしれません」
そして、元より才能のあったティナは優れた2人の教えを得てどんどん開花し、実力を伸ばしたのだという。
来るべきその日の為に。
「そして5年程前、父が王都に向かい、兄弟達もそれぞれ用事で家を空けた日、私はここしかないと思いました。そして父の書斎に言伝を残して私は家を出たのです」
そして、長い旅路の果てでこの迷宮都市ディアラにたどり着いたという。元より箱入り娘で顔を知られているのはごくわずかであり、冒険者という身元不明の人々の溜まり場とも言えるこの街なら見つからないと考えたのだ。
「そして、このディアラで私は冒険者として第2の人生を歩みました。この街での冒険者としての生活は刺激的で感動に満ち溢れていました。死にかけた事や身の危険を感じた事もありましたが、なんとか乗り越えました。その度に生きているという実感を感じました」
そして、冒険者としてのティナはその凄まじい才あってメキメキと実力を伸ばしていく。やがて冒険者の集う迷宮都市でソロとしてはトップクラスの実力を持つに至ったのである。
そして、あの日、隆人と出会ったのだ。
「サイクロプスと戦い、死を覚悟した中で現れたリュート様はまさに英雄の姿そのものでした。そしてこの人と共にいたい。一緒に強くなりたいと、そう思えたのです」
ティナはその事情故、バレる可能性がある以上パーティを組む事も出来ず、また他人を巻き込みたくないと考えていた。
しかし隆人との出会いが、その自制を上回ってしまったのだという。
「しかし、それも今日で終わりです。私の居場所が知られた以上、シャリエ領に戻らねばなりません。でなければ問題となって関係ない大勢の人を巻き込んでしまいます。いつかこんな日が来るとはわかっていました。私のわがままで本当にごめんなさい。これが私、クリスティーナ・グランザム・シャリエの全てです」
そう締めくくったティナの目には涙が浮かんでいる。
その場に再び静寂が生まれる。
「………….……よし、じゃあみんなで行こうか」
そんな中でしばらく熟考していた隆人がやがて顔を上げて、ティナに言い放つ。
「え?」
「ティナは俺たちと一緒にいたいんだよね?じゃあ俺たちも一緒にそのお父さんのところに行って、旅を許してもらおう!」
「ですが!私には生まれた頃から婚約者がいて……」
「言ってみないとわからないでしょ?それくらいの窮地、ティナなら乗り越えられるよ」
真っ白な笑顔でそう言い放つ隆人。
「ですが、街をでなければなりませんし」
「そろそろ他の街にも行ってみたかったからね」
「これまでずっと隠し事をしたのですよ?」
「でも、今話してくれたじゃないか」
ティナの発する否定の言葉をズバズバと切り裂いていく。
「これから2人にはもっともっとたくさんの迷惑をかけると思います……それでも、仲間でいてくれますか?」
おずおずと切り出されたその言葉に、隆人はニコリと笑って、
「うん、もちろんだよ!
そう言い放ったのだ。
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