身体強化って、何気にチートじゃないですか!?

ルーグイウル

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第4章 一通の手紙と令嬢の定め

ギルドマスターは見過ごせない

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(最近ぐぐっと寒くなりました。それはさておき20万文字突破です!ストーリーもだいぶ進んできましたね。そしてまだ先は遥か……汗)




「さて、もちろん話してもらえるな?」


 冒険者ギルドの二階、そこにいくつもある個室の中でも、冒険者やギルド職員から『ギルドマスターの執務室』と呼ばれている一室。その中央に置かれたソファにスティングは座っており、その顔は貼り付けたような笑顔である。そして机を挟んだ正面には3人の冒険者ーー隆人、ティナ、ロロノが座っている。
 3人ともスティングの発する笑顔の圧力縮こまったように身を寄せ合っているが。


「遠征届けもなく2週間もの間迷宮への長期間渡航、我々冒険者ギルドがどれだけ心配したかわかっているか?」
「申し訳ごさいません!」
「すいませんでした」
「ごめんなさいなのです」


 まず隆人の右に座っていたティナが勢いよく謝罪の言葉を口にしながら頭を下げ、続くように隆人とあまり状況がわかっていない様子のロロノが謝罪する。


 そしてそのまま、スティングの圧力に流されるかのように隆人がここまでの経緯を説明する。
 もちろん、迷宮の公式未到達階層にまで潜ったことや竜種の大群と遭遇した事、ティナとロロノのレベルが驚異的な上昇をした事などは伏せて、迷宮の中でレベリングを行なっていた事だけを話した。


「リュート様とロロノは2人ともまだFランクですし、Cランクの私がしっかりしないと行けなかったのですが、申し訳ありません」
「……いや、クリスティーナはこれまではソロの冒険者だからな。そもそも長期間の迷宮渡航の申請である遠征届けは縁のない話であったのは事実だからな」
「ですが……」


 事実ティナは遠征届けの存在をしっかりと知っていたのだが、突然の隆人の60層宣言によって冷静さを失っておりど忘れしてしまったのだ。
 そして隆人もつい先日冒険者登録をした時にその説明を受けていたはずである。しかし、前世に読んでいた数々の文献(ラノベ)の中で出ていた事柄が多かった為に無意識のうちに聞きこぼしていたのである。にも関わらずロロノの登録の際に、隆人の時に聞いたから要らないと説明を省略したのだ。
 それが巡り巡ってこのような問題を起こしたのである。


 それを理解しているからか、ティナも隆人も非常に肩身の狭い思いを抱えていた。


「まぁ元々、2週間は様子を見てみようと言う事にはなっていたんだ。君達が泊まっていた『銀の串亭』を訪ねたところ2週間ほど空けると事前に伝えていたようだからな。本来3人パーティが2週間もの間を迷宮で過ごす等前代未聞だが、君達ならそれくらいの無茶をしでかしてもおかしくないからな」


 そもそも遠征とは複数の、それもかなり大所帯のパーティが行うものである。食事は必要であるし、寝る時は見張りの番を立てないと寝首を絶たれて終わりである。
 なので見張りのローテーションが組めるくらいの人数は必要だし、それに合わせて、現地で調達したものを調理できる者かかなりの容量を持つ「ストレージ」系のスキルを保有する者が複数人いないといけない。

 
 その上で万が一の為に回復手段や各種アイテム、サポーター等も準備する。
 ここまでしてようやく遠征を行うことが出来るのだ。


 迷宮の道中を行き来せずに深い階層で効率よくレベルを上げることの出来る遠征は有用であるがその分だけ大変な準備を要するものでもある。


 そもそも迷宮都市に存在する数多くの冒険者パーティの中でも、遠征を定期的に行っているのは「太陽の剣」くらいであり、Aランク冒険者グリンジャーを筆頭に強力な個と、豊富な戦力。特殊な技術を持つ構成員に広い伝手があるからこそである。


 その為基本的に普通の冒険者パーティは遠征を行う事は無く長期間迷宮に潜ることはない。あったとしても信頼できる複数のパーティが合同でというのが一般的だ。
 しかし隆人達「暁の風」は合同で行くようなパーティ連携はなく、構成員もCランク1人Fランク2人というレベルである。


 これだけ聞けば周囲から見てどれだけ無茶な事をしているのかわかるだろう。
 だが、それにしても過保護過ぎはしないだろうか、隆人はその事が気にかかりスティングに問いかける。


「でも、俺たちみたいなEランクパーティが一つ消えただけで救出部隊、それも都市最大のBランクパーティに依頼するなんて。ギルドも毎回このような対応をするのは厳しくないですか?」
「あぁ、もちろんこのような事は普通行わない。遠征届けが出ていて階層もわかっていれば任意の依頼として救出部隊を立てる事はあるがな。それにそもそも君達が長期間居なくなった事自体はそこまで問題ではないのだ」


 スティングの物言いで余計に疑問が膨らむ隆人、スティングも続きを催促している雰囲気を察したのか、言葉を切ることなく続ける。


「それよりも、問題は君達が2週間経っても戻ってこなかった場合だ。その場合、何かしらの問題が迷宮で起きている事になり、しかもその問題はリュートくんやクリスティーナをもってしても対処が難しい程の緊急事態なのだ。早急に対処せねば、迷宮都市全体の脅威にもなりかねん」
「買いかぶりですよ。俺たちはそこまで大きなsっ!」


 大きな存在ではないですよ。と言おうとした隆人であるが、その言葉は最後まで発せられる事はない。突然プツリと途切れてしまう。


「これでもそう言えるかな?」
「……やられたね」


 悔しそうにつぶやく隆人の首元には剣の刃が突きつけられており、寸前の所で隆人がストレージから出した短剣によって防がれていた。
 そして突きつけられていた剣はすぐにパッと弾けるように霧散した。


「『剣製の指輪』。冒険者として最盛期だった時の俺が他の地方の迷宮の深層で手に入れた魔道具だ。効果は名前の通り剣を作ること。かなりの魔力を注ぐ必要があるし、数秒で消滅する欠点はあるが瞬時に手元に剣を生み出すことができる」
「暗殺でもする気でしたか?」
「はっ、お前なら俺が寸止めする気だったってわかっているだろう?」


 軽口を一蹴したスティングが獰猛な笑みを更に深めて隆人を見据える。事実スティングの剣は寸止め目的であり、隆人が仮に防がなくても数センチ手前で止まっただろう。
 しかしスティングの一瞬の気迫と闘志が隆人を無意識に防御に移させたのだ。


「俺はこれでも元Aランクとして名を馳せた冒険者だ、今でも全盛期程ではないがBランクくらいとならやりあえる自負もある。だかリュートくんのその動き、少なくとも俺以上。とても若手冒険者の動きではないな」
「何が言いたいんですか?」
「いや、詮索はしない。冒険者の秘密を探るのはマナー違反だからな。だがこれだけは知っておいてくれ。リュートくん、君の実力と影響力は決して小さくないって事を」


 こうして、隆人達はスティングの説教というより忠告に近い言葉を受けてその場を立った。


「あ、そうだもう一つ」


 と、終わったと思って部屋を出かけた隆人達にスティングが一つ声を発っする。

「リュートくん、君、何をした?」
「何、とは?」
「クリスティーナとロロノ?だったか?その少女の事だ」

 ぴくり、と隆人達の動きが止まる。そして隆人がひとり、スティングへと向きを戻す。


「あ、いや。先ほども言ったが詮索はしない。だがその2人、2週間前とは明らかに違うだろう?この前まで2人は、特に少女の方は完全に初心者と言った感じだったはずだ。しかし今、纏う雰囲気は歴戦の猛者のそれだし、俺の攻撃を視界に捉えていた。一体何をどうすれば2週間でそんな事になるんだ」


 忠告を行った時とは打って変わって、戸惑いと驚きを全面に出したスティングに対し、


「秘密、ですよ」


 隆人は笑顔でそう告げ、今度をこそ部屋を後にした。
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