身体強化って、何気にチートじゃないですか!?

ルーグイウル

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第3章 獣人少女ロロノ

拳で!

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(本当は前回で隆人側は閉めようとしたのですが、思いのほか伸びてしまいました汗)



 竜種達の猛攻をくぐり抜け、遂に攻勢へと転じた隆人。その機動力と攻撃力をフルに使い、竜種達を撹乱しては素早くその命を刈り取っていく。



 身体強化・Ⅴに隆人自身の体捌き、天駆による空中移動を組み合わせたその動きは変則的かつ高速であり、瞬きをする間に竜達の屍が増えていく。


「あーもう、全くキリがないね!」

 
 だが、竜種を次々と打倒している当の隆人の顔色は優れない。ぼやくようにつぶやく。


 既に身体強化の息継ぎは五度を超え、身体の負担もかなり知覚できる程度にはなっている。
 にも関わらず、上下に広がる竜種の群れは未だに健在であり、幾らか衰えは見せているものの未だに覆い尽くすほどの数である。


 背後ではまだティナ達と飛竜の一体が戦っているのであろう。剣の鳴る音や轟音が絶えず響きわたる。


 このような一対多の戦闘で最も有効なのは広範囲を殲滅できる攻撃である。
 物理特化の隆人とは言え、高い攻撃力を出せる範囲魔法攻撃は手札として存在するのだが、それでも竜種達の壁を打ち崩せる程ではなく、大ダメージは期待できても数はそれ程減らない可能性が高い。
 更にすぐ後ろでティナ達が戦っている以上、広範囲の攻撃では巻き込む危険が伴う。



 その為隆人はその手札を切れずにおり、一体一体を着実に倒していくしかないのだ。
 それでも隆人の凄まじい速度と技量でかなりの効率を叩き出しているが、やはり範囲攻撃などと比べれば遅く、長期化してしまう。



 そんな戦闘が続く。どれだけ経ったのだろう。見渡す限り広がっていた竜種の群れは次々と数を減らし、隆人の周りには無数の死体が所狭しと散らばる。
 やがてその波にも遂に終わりが訪れ、背後に激戦を鳴らしながらもその場には静謐さが戻る。


 息を切らせた隆人は視線を前に向けた。


「ふぅ……後、10体……」



 隆人が見つめる正面、そこには10体の竜種が未だ無傷の状態で構えていた。
 蛇竜型が3体に飛竜が7体。そのどれもがこれまでの個体達よりも大きく。気配から内包する力の大きさが比較にならないレベルであることが感じられる。


 そしてその中でも飛竜の一体。それは9体の竜達を従えるように中央を飛し、こちらをじっと見据えている。
 恐らくこの群れの首領であろうその竜は周囲に控える9体よりも更に破格の力をその身に宿している。加えて、ここまで低脳力の竜種を使い隆人を責め立て、自らは後陣に下がっていたことからも、竜種の中でも理知的な個体であろうと思われた。


「ここまでも結構きつかったけど、この10体はそれ以上だね……」


 と、愚痴めいた事を呟きながらも、隆人は手に持った剣を真っ直ぐにに構える。


「グガァァァァァァァ!!」
「「「「「「「「ガァァァァァァァァ」」」」」」」」」


 中央の飛竜が大きく咆哮する。それに呼応するように周囲を囲っていた竜種達が同時にブレスを発する。


 9つの口から同時に放たれた9本の超高熱の光はその全てが今までのものとは威力が違い。さらにそれが束ねられ、極太のレーザーのように隆人へと飛んでいく。


 隆人はそれを回避ー-しようとするが、すぐに背後にティナ達がいることを察する。


 これを躱せばこの超高熱の光線はその勢いのまま後ろのいる者たちを焼き尽くすだろう。
 相対しているはずの飛竜も含めて、ティナとロロノも間違いなく即死するだけの威力がその束ねられたブレスには込められている。


 こちらが躱せない状況であると理解した上で最も火力の出る攻撃を即座に放つ。確信する、この飛竜は明らかに高い知性を有している。


 身体強化の超感覚と戦闘の集中によって引き伸ばされている知覚の中で隆人はそのような事を考えながら、頭をフル回転させ最適な対応を思考する。


 やがて、「ふぅ」と1つため息を吐き、手に持っていた剣を上段に構える。
 そして目を閉じて深く集中、一瞬時が止まったかのような錯覚を見る。


 隆人が上段に構えた剣は光輝いている。隆人が魔力剣の技術を使い剣に濃密で高純度な魔力を流し込んでいるのだ。凄まじい量の魔力MPを有す隆人が膨大な量の魔力を流す事で剣が輝く。


 そして数瞬がすぎ、遂にブレスが到達する。


「魔力剣、天轟破断!!」


 そしてそれを待ち受ける隆人はその上段に構えた剣を思い切り振り下ろす。
 高濃度の魔力が尾をなし、溜まったエネルギーがブレスと激突し炸裂する。

  ズゴォォォォォォォォォォォ
 

 壊れぬはずの迷宮85層の壁が床が揺れるほどの轟音を響かせ辺りは閃光につつまれる。


 そして、その光が去ったその場には、全身に傷を負いながらも剣を振り下ろしたような体勢の隆人の姿がある。


 周囲に散らばっていた竜種の死体はその全てが消失し散りすら残っていない。あれ程の威力の激突。その衝撃のすごさが伺える。


 そして何より隆人の持っていた剣は柄から先が完全に無くなっていた。


「……やっぱり、仮初めの剣じゃ耐えきれなかったね……でもとりあえず防げたみたいだ」


 この一撃にかけていたのか、ブレスを放った竜種達の口も少し焦げており再びの発射を行う様子はない。


 動きの止まる両者。だが、そこに追撃のように中央の飛竜が豪速で隆人に迫る。
 そして隆人の身体に近い程の巨大な腕を振り下ろす。


「サブの剣を……いや、殴った方が速い!!」


 ストレージから新たな剣を取り出そうとする隆人、だがそれではダメだと中断し、拳を握る。


 そして思いっきり力を込めた右拳で正面から巨大な飛竜の腕を向かい撃った。
 本来であれば勝負にすらならないはずのサイズ差、しかし隆人の拳はしっかりと飛竜の腕を受けきる。


 腕力と腕力のぶつかり合い。そのまま両者共に後方へと弾かれる形となる。
 

 再び向かい合う隆人と10体の竜。
 隆人対竜種の群れの戦いはここから佳境へと移る。

 
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