53 / 141
第3章 獣人少女ロロノ
拳で!
しおりを挟む
(本当は前回で隆人側は閉めようとしたのですが、思いのほか伸びてしまいました汗)
竜種達の猛攻をくぐり抜け、遂に攻勢へと転じた隆人。その機動力と攻撃力をフルに使い、竜種達を撹乱しては素早くその命を刈り取っていく。
身体強化・Ⅴに隆人自身の体捌き、天駆による空中移動を組み合わせたその動きは変則的かつ高速であり、瞬きをする間に竜達の屍が増えていく。
「あーもう、全くキリがないね!」
だが、竜種を次々と打倒している当の隆人の顔色は優れない。ぼやくようにつぶやく。
既に身体強化の息継ぎは五度を超え、身体の負担もかなり知覚できる程度にはなっている。
にも関わらず、上下に広がる竜種の群れは未だに健在であり、幾らか衰えは見せているものの未だに覆い尽くすほどの数である。
背後ではまだティナ達と飛竜の一体が戦っているのであろう。剣の鳴る音や轟音が絶えず響きわたる。
このような一対多の戦闘で最も有効なのは広範囲を殲滅できる攻撃である。
物理特化の隆人とは言え、高い攻撃力を出せる範囲魔法攻撃は手札として存在するのだが、それでも竜種達の壁を打ち崩せる程ではなく、大ダメージは期待できても数はそれ程減らない可能性が高い。
更にすぐ後ろでティナ達が戦っている以上、広範囲の攻撃では巻き込む危険が伴う。
その為隆人はその手札を切れずにおり、一体一体を着実に倒していくしかないのだ。
それでも隆人の凄まじい速度と技量でかなりの効率を叩き出しているが、やはり範囲攻撃などと比べれば遅く、長期化してしまう。
そんな戦闘が続く。どれだけ経ったのだろう。見渡す限り広がっていた竜種の群れは次々と数を減らし、隆人の周りには無数の死体が所狭しと散らばる。
やがてその波にも遂に終わりが訪れ、背後に激戦を鳴らしながらもその場には静謐さが戻る。
息を切らせた隆人は視線を前に向けた。
「ふぅ……後、10体……」
隆人が見つめる正面、そこには10体の竜種が未だ無傷の状態で構えていた。
蛇竜型が3体に飛竜が7体。そのどれもがこれまでの個体達よりも大きく。気配から内包する力の大きさが比較にならないレベルであることが感じられる。
そしてその中でも飛竜の一体。それは9体の竜達を従えるように中央を飛し、こちらをじっと見据えている。
恐らくこの群れの首領であろうその竜は周囲に控える9体よりも更に破格の力をその身に宿している。加えて、ここまで低脳力の竜種を使い隆人を責め立て、自らは後陣に下がっていたことからも、竜種の中でも理知的な個体であろうと思われた。
「ここまでも結構きつかったけど、この10体はそれ以上だね……」
と、愚痴めいた事を呟きながらも、隆人は手に持った剣を真っ直ぐにに構える。
「グガァァァァァァァ!!」
「「「「「「「「ガァァァァァァァァ」」」」」」」」」
中央の飛竜が大きく咆哮する。それに呼応するように周囲を囲っていた竜種達が同時にブレスを発する。
9つの口から同時に放たれた9本の超高熱の光はその全てが今までのものとは威力が違い。さらにそれが束ねられ、極太のレーザーのように隆人へと飛んでいく。
隆人はそれを回避ー-しようとするが、すぐに背後にティナ達がいることを察する。
これを躱せばこの超高熱の光線はその勢いのまま後ろのいる者たちを焼き尽くすだろう。
相対しているはずの飛竜も含めて、ティナとロロノも間違いなく即死するだけの威力がその束ねられたブレスには込められている。
こちらが躱せない状況であると理解した上で最も火力の出る攻撃を即座に放つ。確信する、この飛竜は明らかに高い知性を有している。
身体強化の超感覚と戦闘の集中によって引き伸ばされている知覚の中で隆人はそのような事を考えながら、頭をフル回転させ最適な対応を思考する。
やがて、「ふぅ」と1つため息を吐き、手に持っていた剣を上段に構える。
そして目を閉じて深く集中、一瞬時が止まったかのような錯覚を見る。
隆人が上段に構えた剣は光輝いている。隆人が魔力剣の技術を使い剣に濃密で高純度な魔力を流し込んでいるのだ。凄まじい量の魔力を有す隆人が膨大な量の魔力を流す事で剣が輝く。
そして数瞬がすぎ、遂にブレスが到達する。
「魔力剣、天轟破断!!」
そしてそれを待ち受ける隆人はその上段に構えた剣を思い切り振り下ろす。
高濃度の魔力が尾をなし、溜まったエネルギーがブレスと激突し炸裂する。
ズゴォォォォォォォォォォォ
壊れぬはずの迷宮85層の壁が床が揺れるほどの轟音を響かせ辺りは閃光につつまれる。
そして、その光が去ったその場には、全身に傷を負いながらも剣を振り下ろしたような体勢の隆人の姿がある。
周囲に散らばっていた竜種の死体はその全てが消失し散りすら残っていない。あれ程の威力の激突。その衝撃のすごさが伺える。
そして何より隆人の持っていた剣は柄から先が完全に無くなっていた。
「……やっぱり、仮初めの剣じゃ耐えきれなかったね……でもとりあえず防げたみたいだ」
この一撃にかけていたのか、ブレスを放った竜種達の口も少し焦げており再びの発射を行う様子はない。
動きの止まる両者。だが、そこに追撃のように中央の飛竜が豪速で隆人に迫る。
そして隆人の身体に近い程の巨大な腕を振り下ろす。
「サブの剣を……いや、殴った方が速い!!」
ストレージから新たな剣を取り出そうとする隆人、だがそれではダメだと中断し、拳を握る。
そして思いっきり力を込めた右拳で正面から巨大な飛竜の腕を向かい撃った。
本来であれば勝負にすらならないはずのサイズ差、しかし隆人の拳はしっかりと飛竜の腕を受けきる。
腕力と腕力のぶつかり合い。そのまま両者共に後方へと弾かれる形となる。
再び向かい合う隆人と10体の竜。
隆人対竜種の群れの戦いはここから佳境へと移る。
竜種達の猛攻をくぐり抜け、遂に攻勢へと転じた隆人。その機動力と攻撃力をフルに使い、竜種達を撹乱しては素早くその命を刈り取っていく。
身体強化・Ⅴに隆人自身の体捌き、天駆による空中移動を組み合わせたその動きは変則的かつ高速であり、瞬きをする間に竜達の屍が増えていく。
「あーもう、全くキリがないね!」
だが、竜種を次々と打倒している当の隆人の顔色は優れない。ぼやくようにつぶやく。
既に身体強化の息継ぎは五度を超え、身体の負担もかなり知覚できる程度にはなっている。
にも関わらず、上下に広がる竜種の群れは未だに健在であり、幾らか衰えは見せているものの未だに覆い尽くすほどの数である。
背後ではまだティナ達と飛竜の一体が戦っているのであろう。剣の鳴る音や轟音が絶えず響きわたる。
このような一対多の戦闘で最も有効なのは広範囲を殲滅できる攻撃である。
物理特化の隆人とは言え、高い攻撃力を出せる範囲魔法攻撃は手札として存在するのだが、それでも竜種達の壁を打ち崩せる程ではなく、大ダメージは期待できても数はそれ程減らない可能性が高い。
更にすぐ後ろでティナ達が戦っている以上、広範囲の攻撃では巻き込む危険が伴う。
その為隆人はその手札を切れずにおり、一体一体を着実に倒していくしかないのだ。
それでも隆人の凄まじい速度と技量でかなりの効率を叩き出しているが、やはり範囲攻撃などと比べれば遅く、長期化してしまう。
そんな戦闘が続く。どれだけ経ったのだろう。見渡す限り広がっていた竜種の群れは次々と数を減らし、隆人の周りには無数の死体が所狭しと散らばる。
やがてその波にも遂に終わりが訪れ、背後に激戦を鳴らしながらもその場には静謐さが戻る。
息を切らせた隆人は視線を前に向けた。
「ふぅ……後、10体……」
隆人が見つめる正面、そこには10体の竜種が未だ無傷の状態で構えていた。
蛇竜型が3体に飛竜が7体。そのどれもがこれまでの個体達よりも大きく。気配から内包する力の大きさが比較にならないレベルであることが感じられる。
そしてその中でも飛竜の一体。それは9体の竜達を従えるように中央を飛し、こちらをじっと見据えている。
恐らくこの群れの首領であろうその竜は周囲に控える9体よりも更に破格の力をその身に宿している。加えて、ここまで低脳力の竜種を使い隆人を責め立て、自らは後陣に下がっていたことからも、竜種の中でも理知的な個体であろうと思われた。
「ここまでも結構きつかったけど、この10体はそれ以上だね……」
と、愚痴めいた事を呟きながらも、隆人は手に持った剣を真っ直ぐにに構える。
「グガァァァァァァァ!!」
「「「「「「「「ガァァァァァァァァ」」」」」」」」」
中央の飛竜が大きく咆哮する。それに呼応するように周囲を囲っていた竜種達が同時にブレスを発する。
9つの口から同時に放たれた9本の超高熱の光はその全てが今までのものとは威力が違い。さらにそれが束ねられ、極太のレーザーのように隆人へと飛んでいく。
隆人はそれを回避ー-しようとするが、すぐに背後にティナ達がいることを察する。
これを躱せばこの超高熱の光線はその勢いのまま後ろのいる者たちを焼き尽くすだろう。
相対しているはずの飛竜も含めて、ティナとロロノも間違いなく即死するだけの威力がその束ねられたブレスには込められている。
こちらが躱せない状況であると理解した上で最も火力の出る攻撃を即座に放つ。確信する、この飛竜は明らかに高い知性を有している。
身体強化の超感覚と戦闘の集中によって引き伸ばされている知覚の中で隆人はそのような事を考えながら、頭をフル回転させ最適な対応を思考する。
やがて、「ふぅ」と1つため息を吐き、手に持っていた剣を上段に構える。
そして目を閉じて深く集中、一瞬時が止まったかのような錯覚を見る。
隆人が上段に構えた剣は光輝いている。隆人が魔力剣の技術を使い剣に濃密で高純度な魔力を流し込んでいるのだ。凄まじい量の魔力を有す隆人が膨大な量の魔力を流す事で剣が輝く。
そして数瞬がすぎ、遂にブレスが到達する。
「魔力剣、天轟破断!!」
そしてそれを待ち受ける隆人はその上段に構えた剣を思い切り振り下ろす。
高濃度の魔力が尾をなし、溜まったエネルギーがブレスと激突し炸裂する。
ズゴォォォォォォォォォォォ
壊れぬはずの迷宮85層の壁が床が揺れるほどの轟音を響かせ辺りは閃光につつまれる。
そして、その光が去ったその場には、全身に傷を負いながらも剣を振り下ろしたような体勢の隆人の姿がある。
周囲に散らばっていた竜種の死体はその全てが消失し散りすら残っていない。あれ程の威力の激突。その衝撃のすごさが伺える。
そして何より隆人の持っていた剣は柄から先が完全に無くなっていた。
「……やっぱり、仮初めの剣じゃ耐えきれなかったね……でもとりあえず防げたみたいだ」
この一撃にかけていたのか、ブレスを放った竜種達の口も少し焦げており再びの発射を行う様子はない。
動きの止まる両者。だが、そこに追撃のように中央の飛竜が豪速で隆人に迫る。
そして隆人の身体に近い程の巨大な腕を振り下ろす。
「サブの剣を……いや、殴った方が速い!!」
ストレージから新たな剣を取り出そうとする隆人、だがそれではダメだと中断し、拳を握る。
そして思いっきり力を込めた右拳で正面から巨大な飛竜の腕を向かい撃った。
本来であれば勝負にすらならないはずのサイズ差、しかし隆人の拳はしっかりと飛竜の腕を受けきる。
腕力と腕力のぶつかり合い。そのまま両者共に後方へと弾かれる形となる。
再び向かい合う隆人と10体の竜。
隆人対竜種の群れの戦いはここから佳境へと移る。
3
お気に入りに追加
1,331
あなたにおすすめの小説
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す
紅月シン
ファンタジー
七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。
才能限界0。
それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。
レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。
つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。
だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。
その結果として実家の公爵家を追放されたことも。
同日に前世の記憶を思い出したことも。
一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。
その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。
スキル。
そして、自らのスキルである限界突破。
やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。
※小説家になろう様にも投稿しています

神に異世界へ転生させられたので……自由に生きていく
霜月 祈叶 (霜月藍)
ファンタジー
小説漫画アニメではお馴染みの神の失敗で死んだ。
だから異世界で自由に生きていこうと決めた鈴村茉莉。
どう足掻いても異世界のせいかテンプレ発生。ゴブリン、オーク……盗賊。
でも目立ちたくない。目指せフリーダムライフ!

異世界転生したのだけれど。〜チート隠して、目指せ! のんびり冒険者 (仮)
ひなた
ファンタジー
…どうやら私、神様のミスで死んだようです。
流行りの異世界転生?と内心(神様にモロバレしてたけど)わくわくしてたら案の定!
剣と魔法のファンタジー世界に転生することに。
せっかくだからと魔力多めにもらったら、多すぎた!?
オマケに最後の最後にまたもや神様がミス!
世界で自分しかいない特殊個体の猫獣人に
なっちゃって!?
規格外すぎて親に捨てられ早2年経ちました。
……路上生活、そろそろやめたいと思います。
異世界転生わくわくしてたけど
ちょっとだけ神様恨みそう。
脱路上生活!がしたかっただけなのに
なんで無双してるんだ私???

転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです
ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。
転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。
前世の記憶を頼りに善悪等を判断。
貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。
2人の兄と、私と、弟と母。
母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。
ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。
前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる