身体強化って、何気にチートじゃないですか!?

ルーグイウル

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第3章 獣人少女ロロノ

単 対 軍

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(前回は日数遅れになってしまい申しわけ無いです!これでまた普段通りに戻します!)


 
 迷宮85層で竜種の群れに遭遇した隆人達。身体強化・Ⅳで向かい撃った隆人であったが、次々と飛び交う竜種の猛攻撃に、一体を仕留め損ねてしまう。
 そしてその締めと損ねた飛竜は翼を失いつつも運悪く後方に避難していたティナ達の目の前に飛んで行ってしまう。



「グルゥゥゥゥゥ……」
 

 身体を起き上がらせた飛竜は片翼を失った痛みからか喉を鳴らす。そして目の前に立っているティナ達にギロリと竜眼を向ける。
 その目は怒りに歪んでいる。


「ひ、ひぅ…………」
「こ、怖いのです……」


 凶悪な巨体が目の前に現れ、それが自分達を睨みつけている。そんな状況にティナとロロノは半泣きで弱々しい声を出す。


「2人とも!すぐ行k、ぐぅっ!!」


 すぐ行く、と声を発しようとした隆人だがその声は途中で途切れる。一瞬気が逸れたが為に竜種達の攻撃をまともに受けたのだ。
 右腹部辺りを深めに切られ、苦悶の表情とともにじわりと血で赤く滲む。


 その光景を視界の端にみたティナはその瞬間、この特訓の中で隆人に言われたある言葉を思い出す。




『ティナ、ステータスやレベルって言うのは絶対的なものに見えるけど、実際はただの補正なんだ。まず自分がいて、そこに後から足されたものに過ぎない。ステータスが高くてもそれはただ力が強く、ただ速いだけ。大事なのはそのステータスを自在に使いこなす自らの技術と決して折れない心。俺はこの特訓で2人にそれらを身につけてほしいんだ』




 ティナは後ろに下がろうとしていた足を一歩前に出す。
 そして視線はむけずに同じく怯えたように震えているロロノへと声をかける。


「……ロロノ、戦いましょう」
「ふぇっ!?」
「このままではリュート様は自分の戦いに集中できません。腰が引けている場合ではありません!今こそ特訓の成果を見せる時なんです!」


 視線は飛竜に向けたまま、訴えかけるようにロロノへと声を上がるティナ。まだ少し震えていたが、その声色からは確かな決意と覚悟がうかがえる。
 ロロノもティナに後押しされたようにすっと背筋を伸ばし、手に持っている銀羽槍を強く握る。


「……わかったのです!ロロノも戦うのです!」
「ロロノ……」


 幼き身を奮い立たせ隣に立ってくれる仲間。そのことにティナは込み上げてくるものを感じる。
 そして今もたくさんの竜種達と激戦を繰り広げる隆人へと叫ぶ。


「リュート様!私達は大丈夫です!リュート様は目の前の戦いを。この飛竜は私達が倒します!」
「ロロノ達に任せてほしいのです!」


 そして、こちらを睨みつける飛竜に対し2人は強い意志のこもった目を向けた。




 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「ははっ」


 ティナとロロノの決意のこもった叫びが届き、隆人は口元をニヤっと歪める。ティナ達は今自分の為に強大な敵に立ち向かうのだ。


「あんな事を言われちゃ、俺も頑張らない訳にはいかないよねっ!」


 そして迫りくる攻撃の数々をくぐり抜け、剣の一振りで飛竜と蛇竜をそれぞれ一体ずつ屠る。
 と同時に身体強化のユニークスキルを解除し、すぐさまMPを消費して行く。


 一瞬動きの止まった隆人。それを狙って先程まで攻撃していた竜達のうち瞬間機動力に優れる飛竜達が三体上空から押し寄せる。


 だが次の瞬間、その中心から銀線が瞬く。次いで爆発するように飛び込んでいった飛竜達が飛び散る。
 みるとそれぞれが腹部や頭部といった急所を的確に斬られている。


「『身体強化・Ⅴブースト・フィフス』。さぁ戦いはこれからだよ!」


 不敵に笑う隆人。身体強化の深度を上げた隆人の身体から青白いオーラが吹き出す。そのオーラはⅣよりも力強く色も濃い。
 隆人のステータスがまた少し上がる。


  隆人/人間族 LV. 275 job なし

 HP   1446/1446  MP    739/739  (95)

  STR  727(691)
  MND  650
  VIT  683(649)
  AGI  707(672)
         魔法適正 風



 竜種達はまた次々と迫ってきては攻撃を繰り出すが、その様相は先程までとは少し変化している。


 これまでと同様に竜種達の攻撃をかわし隙を突いては急所への一撃で絶命させていく隆人。だがその動きはギリギリではなくどこか余裕すらある。


 身体強化というのは深度が上がれば消費MPに伴い、補正率も上がるがその率の変化は微々たるものである。だがこのスキルを極めた隆人が使えば、その変化は誤差の範囲を超える。


 ステータスの小さな差は隆人の動き1つ1つに現れ、先程より一瞬早く回避ができ、先程より一瞬早く攻撃ができる。そうする事でごくわずかではあるが戦いに余裕が生まれる。
 余裕は次の動きをより良くさせる。


 その結果、先程まで負っていた細かい傷がなくなり、竜種の倒れる速度が上がる。
 戦いは隆人の優勢に変化していく。


「ふぅっ、やっぱりⅤまで行くと身体負荷も上がるねっ!疲労の蓄積が早い」


 戦いが優勢へと変わる中でも隆人は安心していない。身体強化というスキルは自分の身体能力を上げる為肉体へと負荷がかかるのだ。隆人は長年の戦いと鍛錬で負荷に負けない身体を作り上げていたが、全く無いわけではない。
 言うなればいつもより速くマラソンをしているようなものである。


 だがそれでも動きは止めない。少しずつ竜種を倒す速度が上がっていく。


 そして間断なく続いていた猛攻の速度を隆人が竜種を倒す速度が上回った瞬間、攻撃の手が一拍止まる。
 それを見て隆人は攻勢に出た。
 

「このまま持久戦に持ち込まれると相手の思うツボ、この一瞬を逃すわけにはいかないね」


 時間をかければそれだけ身体に負荷がかかるのはもちろんだが、それよりも後ろで飛竜と戦っている2人の事が心配である。
 翼を失い機動力を大幅に減らしたとは言え竜種の、しかもその中でも強い部類の飛竜である。


 特訓で大きく強くなったとは言え、確実にティナ達よりも格上の相手であり楽観視はできない。


「さぁ竜達!俺の動きに対応できるかな?」


 地を蹴った隆人は高速で竜種の一体へ接近し、竜種が気づいて攻撃を仕掛けようとした時にはその身体は既に沈んでいる。
 そしてその身体が地に着く頃には次の竜種が隆人によって切られ倒れる。


 そう。身体強化による機動力と攻撃力を主に戦う隆人にとって、速度に任せた白兵戦こそが信条である。
 全方位を敵に囲まれて守りに徹する必要がある戦いは隆人としてはむしろ苦手とするものである。


 動くスペースを得たことによって隆人は水を得た魚のように縦横無尽に戦場を駆け巡る。


 荒れ狂う嵐のような隆人の動きに、竜種の死体が生まれる速度がまた更に一段と跳ね上がった。

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