身体強化って、何気にチートじゃないですか!?

ルーグイウル

文字の大きさ
上 下
50 / 141
第3章 獣人少女ロロノ

生物の覇者

しおりを挟む
(祝50話!!ここまで続いて来ましたよ!これからも何卒よろしくお願いします!m(_ _)m
前話の最後のティナのセリフがドラゴン→竜に変わりました。理由は色々ありますが省きます!今回少し説明回気味です)




「り、竜…………」


 目の前に迫る異様にティナがゴクリと喉を鳴らす。
 巨大な体躯、力強く羽ばたく翼に鋭い爪と牙。その身体からは凄まじい程の圧力が隆人達3人にのしかかる。
 生体としての格を否応無く思い知らされる。


「まさか、本物ですか?」
「うん、言い忘れてたけどこの階層からは竜が出現するんだよ」
「そんな……。竜種、しかも飛竜なんて」
「怖いのです……」

 
 突如現れた竜の存在感にティナは戦き、ロロノは怯えたように隆人の後ろに隠れている。



 冒険者達に1番出会いたくない魔物は何かと訪ねた時、ほぼ全ての冒険者が真っ先に上げるであろう魔物。それが竜ーー竜種である。


 竜種と一概に言ってもその中には「飛竜種」、「蛇竜種」、「水竜種」、「龍種」等が存在する。
 大まかに言えば有翼で空を飛ぶのが飛竜種。地上を這うように移動することが多いものを蛇竜種。海竜のように水中を泳ぐように移動するものが水竜種といった分類である。ちなみに、これらは全て西洋竜であり、東洋型の竜は全く別の存在として龍と呼ばれる。


 その生態は様々であるが、その全てにおいて共通するのはという事である。


 その鱗は物理魔法共に圧倒的な耐性を有し、生半可な攻撃ではそもそもダメージを与えることも出来ない。もし鱗を抜けてダメージを与えられたとしても、鱗で軽減される上に高い生命力の為に有効打には遠い。


 その牙と爪は非常に鋭く、その硬度はどんな生物よりも硬いと言われる。
 そして竜種はその体躯に見合う膂力を備えており、放たれるその一撃は剣をへし折り、鋼鉄の鎧でさえもまるで紙のようにやすやすと引き裂く。


 加えて、機動力も高く、種によってそれぞれ陸海空において高い移動能力を持ち、特に飛竜種はその大きな翼を羽ばたかせて高速飛行をこなす。


 口からは超高熱で広範囲に及ぶブレスを放ち個体によっては魔法や毒を使うものもいる。


 また、魔物でありながら高い知性を持つのも竜種の特徴であり、その危機回避能力や判断力は他の魔物とは一線を画す。
 長い時を生きた老龍の中には人語すら解したという言い伝えも残っている。


 硬い護りに高い攻撃力、機動力。魔物あらざる知性に多彩な攻撃手段をも兼ね備える。その強さはランクAの枠に収まらず個体によっては超常の存在であるSランクに分類される。
 彼らが一体居るだけでその場の生態系は大きく歪む事も少なくないために、竜種を「生態系の頂点」であると言う人も存在し、竜種と戦う事を恐れる冒険者は多い。


 また、希少であるというのも竜種の特徴である。魔物として高い能力を持つ為か滅多に出現せず、ある意味天変地異や英雄譚の産物として語られるだけの存在でもある。


 そんな畏怖の対象ですらある竜種を前にしているのだ。ティナやロロノの反応はむしろ正常と呼べるだろう。


 だが、ここにいるのはそんな正常な者だけではない。


「うーん……。やっぱり飛竜は今のティナとロロノでもまだちょっと厳しいかな……」


 そんな凶悪な存在である飛竜種を前にして怯むどころか一切警戒する様子のない隆人は、1度2人の方を向いた後、ウンウンと腕を組みながら何やら考え事をしている。
 そして結論が出たのかスっと顔を上げる。


 思考に耽っていたのはほんの一瞬であるが、それでも飛竜種は持ち前の速度でグングンと近づいてくる。全力の飛行ではないがそれでも十分速い。
 先程遠くに見えたその存在も今はかなり近くにおり発せられる圧力も格段に強まる。


 ティナとロロノの2人が更に身を縮こませる中、隆人は笑顔のまま振り向き、まるでいつもの会話のトーンで話し始める。


「2人とも。流石に今の2人は竜種と戦うにはまだ早いみたいだから俺がやるね?」
「り、リュート様!?」


 ティナの声が裏返る。それは飛竜が急加速し接近してきたからか、それとも隆人の発言に対してか。


 そんな3人を気に留めるはずもなく、飛竜は加速して一気に先頭に立つ隆人に直進する。
 対する隆人も体を飛竜に向けた。


 そして全てを引き裂く鋭く硬い竜の爪が勢いよく隆人に向け振り下ろされる。


「危ないのです!!」


 最悪の未来を幻視したロロノが悲痛に叫ぶ。だが2人の想像通りの結果は起きなかった。
 飛竜の爪は隆人のすぐ横を通り過ぎ85層の床に激突する、対する隆人はいつの間にか握っていたショートソードを振り抜いている。


 直後、飛竜種の腕に赤い線が走る。その線からぽたぽたと地面に血が落ちた。
 隆人お得意の受け流しが決まり、隆人のステータスは竜種の鱗を貫通させ切り傷を与えるに至ったのだ。


「やっぱ強化無しじゃ腕も一撃じゃ無理だったね。じゃあ『身体強化ブースト』」
「ギャォォォ!」


 少し悔しげに呟いた隆人が身体強化のユニークスキルを発動させる。同時に隆人からオーラが吹き出す。
 対する飛竜は一撃で簡単に殺せると思った相手が自分の攻撃を凌ぎ、更に自らに傷を負わせた事を警戒したのか羽ばたき隆人から離れながら、威嚇の声を発する。


 そして上で止まった飛竜は隆人に向けてブレスを放つ。超高熱のブレスはちりちりと空気を焼きながら隆人に迫る。その熱さに少し距離のあったティナ達も苦しげに呻く。


「うおっと、……はぁっ!!」


 だが隆人は動じない。力任せに剣を人振りする。その風圧はブレスと激突し相殺する。
 指向性を失った火の粉が散る。


「ギャァァ!?」
「隙あり!」


 竜が予想外に一瞬驚いたのか動きを止めたところで隆人は地を蹴る。身体強化された脚力は隆人の身体を飛竜の所まで運ぶ。


 そこで飛竜も我に返ったのかすかさず迎撃。隆人をその勢いのまま食らいつこうと牙を向ける。

  バグンッ

 と閉じられた飛竜の口、隆人は空中で天駆で再び空中を蹴り、身体を捻って回転させ回避する。


 そしてそのまま飛竜の片翼を切り裂いた。先程は線を付けるに留まった斬撃だが、身体強化が合わさることで鱗越しですらその翼を引き裂く。
 片翼を失いバランスを崩した飛竜。その背に足を乗せた隆人は飛竜と共に落下しながらトドメの剣を振るう。


 ズドンという着地音。ティナ達の前には例のごとく飛竜の首をはね飛ばした隆人の姿があった。


「久々に戦ったけど問題なかったね。最近の鍛錬で戦闘の勘も戻り始めて……えっ!?」


 満足気だった隆人だが、その言葉は途中で途切れる。ここにきて初めて戸惑いの表情である。隆人の視線は倒した飛竜とは全く違う方向に向けられていた。


 そこにはーーーー大勢の竜種がこちらに向けて進行してきていた。
しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

異世界転生したのだけれど。〜チート隠して、目指せ! のんびり冒険者 (仮)

ひなた
ファンタジー
…どうやら私、神様のミスで死んだようです。 流行りの異世界転生?と内心(神様にモロバレしてたけど)わくわくしてたら案の定! 剣と魔法のファンタジー世界に転生することに。 せっかくだからと魔力多めにもらったら、多すぎた!? オマケに最後の最後にまたもや神様がミス! 世界で自分しかいない特殊個体の猫獣人に なっちゃって!? 規格外すぎて親に捨てられ早2年経ちました。 ……路上生活、そろそろやめたいと思います。 異世界転生わくわくしてたけど ちょっとだけ神様恨みそう。 脱路上生活!がしたかっただけなのに なんで無双してるんだ私???

神に異世界へ転生させられたので……自由に生きていく

霜月 祈叶 (霜月藍)
ファンタジー
小説漫画アニメではお馴染みの神の失敗で死んだ。 だから異世界で自由に生きていこうと決めた鈴村茉莉。 どう足掻いても異世界のせいかテンプレ発生。ゴブリン、オーク……盗賊。 でも目立ちたくない。目指せフリーダムライフ!

転生してテイマーになった僕の異世界冒険譚

ノデミチ
ファンタジー
田中六朗、18歳。 原因不明の発熱が続き、ほぼ寝たきりの生活。結果死亡。 気が付けば異世界。10歳の少年に! 女神が現れ話を聞くと、六朗は本来、この異世界ルーセリアに生まれるはずが、間違えて地球に生まれてしまったとの事。莫大な魔力を持ったが為に、地球では使う事が出来ず魔力過多で燃え尽きてしまったらしい。 お詫びの転生ということで、病気にならないチートな身体と莫大な魔力を授かり、「この世界では思う存分人生を楽しんでください」と。 寝たきりだった六朗は、ライトノベルやゲームが大好き。今、自分がその世界にいる! 勇者? 王様? 何になる? ライトノベルで好きだった「魔物使い=モンスターテイマー」をやってみよう! 六朗=ロックと名乗り、チートな身体と莫大な魔力で異世界を自由に生きる! カクヨムでも公開しました。

転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの? 人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです

ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。 転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。 前世の記憶を頼りに善悪等を判断。 貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。 2人の兄と、私と、弟と母。 母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。 ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。 前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。

処理中です...