身体強化って、何気にチートじゃないですか!?

ルーグイウル

文字の大きさ
上 下
45 / 141
第3章 獣人少女ロロノ

2日目 数すなわち力

しおりを挟む
(特訓2日目です!と言っても特訓の場面自体は半分くらいなんですけど汗。すいませんコピーミスで投稿直後より少し増えてます)



 迷宮での特訓2日目。4つの魔除け石に囲まれた簡易テントを背に隆人は目を閉じ、胡座をかいて座っていた。
 無論テントの中にはティナとロロノが寝入っており、隆人はその番をしているのだ。


 大迷宮ディアラの公式未到達階層(隆人という例外がいる為にティナ達はとりあえずこのように呼ぶことにした)、言うまでもなくティナもロロノも始めて来るこの場所で2人はいきなり深層の化け物達と死闘をさせられた。


 複数の群で現れた魔物に関しては隆人が瞬殺していった為に2人が戦ったのはいずれも単体の魔物だけである。
 だがそれでも単体とは言え迷宮深層の魔物達は甘くない。


 エルダーゴブリンをはじめとするCランクの魔物達を相手に2人は何度も死にかける状況を味わいながらも戦い抜き、初日の最後にはBランクの魔物であるグレーター・マンティスを正面から下した。


 そんな、人生でも経験したことがないであろうほど濃密な時間を過ごした2人はよほど疲れたのか、食事を摂るや否や既に隆人によって設置してあった揃って爆睡した。


 元々その日の特訓が終わったら休ませるつもりだった隆人はそのまま夜通しで番をしているのだ。
 と言っても寝ずの番ではない。目を閉じているというのは集中しているとか言うわけではなく、実際にただ寝ているだけである。


 と、隆人達のテントがある場所、そこにつながる通路の一本から魔物が顔を出す。4本の鎌がついた腕を持つカマキリのような魔物、グレーター・マンティスである。魔除け石の効果は絶対ではなく、特に強い魔物には効きづらい。


 グレーター・マンティスが簡易テントとその前で寝ている隆人の姿を捉える。そしていい獲物だと思ったのだろう。更に一歩4本の足を進めて行く。

  チンッ
  
 
 だが、ある程度近づいたところでその歩は止まることとなる。鈴が鳴ったかのような涼やかな音が鳴った瞬間、グレーター・マンティスの首は宙に浮いていた。
 そしてその傍らでは先程までテントの前で寝ていたはずの隆人が剣を振り抜いていた。


 隆人が一人で迷宮で生活していた頃。少し深く潜ると安全地帯の小部屋以外で野宿をする必要がある。しかしいくら間引きをしても魔物は湧くものである。
 そんな中で寝るのだから嫌でも感覚は鋭くなる。いや、ならないと死ぬ。


 隆人は熟睡している時でさえ意識することすらなく気配探知の網を張っており、悪意を向けられればどんなに深く寝ていても目を覚ます。隆人にとっては当たり前のことであり、だからこそこんな迷宮の中でもまるで無警戒に寝れるのだ。
 この一晩で同じような光景は何度も見られた。その度に隆人は音すら立てずに魔物を屠り、匂いなどが充満しないよう簡単に処理してはまた寝るを繰り返していた。


「うん、そろそろだね」


 Bランクの魔物グレーター・マンティスをまるで歯牙にもかけず倒した隆人はそんなことをつぶやきながら、テントの方へと戻る。
 そして再びテントの前で眠る、ことはせずそのままテントまで来た。そしてニヤリと笑う。


「さぁ!2人とも起きて!朝だよ!!」


 そしてガバッとテントを開くと思いっきり大声で声を出す。声が辺りに響く。
 そんな大声を受け、熟睡していた2人も目を覚ます。


「うぅ……もう少し……」
「あと5分なのです……」


 だが昨日の疲れもあるのか2人とも寝ぼけており、半目でうわごとのように小さく声を漏らす。
 そんな2人を見て隆人はストレージから一本の剣を出す。だが剣といっても刀身はなく、海のように深い青の柄だけがある。


「『流水の剣』」


 隆人が名を呼びMPを流すと柄の部分から刀身の代わりに水が吹き出す。流水の剣は隆人が迷宮のもっと深い階層で見つけた魔剣であり、魔力を流すことで水の刀身が生まれるという面白い能力を持つ剣である。
 だがこの剣は水の刀身を作るだけではない。隆人は流水の剣を繰り、水をまるで鞭のように浮かべる。


 そのままバシャン!と2人の顔を薙いだ。ちゃんと怪我をしないように水を固めずに薙いだので痛みはないが、寝ぼけている中に突然の大量の水である。2人は盛大に直撃し目を覚ました。


「ばぶっ!?……なにするんですか!リュート様」
「びちょびちょなのです……」


 隆人の行動に2人とも非難の眼差しを向ける。だが隆人は気にした様子はない。


「あはは、ごめんごめん。2人が寝ぼけて全然起きないからついね。それよりほら、準備しておいで。特訓2日目を始めるよ」
「なんか納得できません……」
「準備なのです~」


 憮然とした表情のティナに対し、ロロノはすぐに切り替えたようにテントに入っていく。ティナも隆人を睨んだ後、「まぁいいです」と笑顔を見せて後に続いた。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


  
「さて、これから特訓2日目をするんだけど」
「ごくり、なのです」


 朝?の1騒動の後3人で食事をとり、そして隆人は2人の前に立つようにして告げた。
 2人とも真剣に隆人を見る。


「今日からは複数戦も経験してもらうよ」
「複数戦、ですか?」
「うん、この階層の魔物とは昨日一日で散々戦ったと思うけど、群れはまた違う怖さがある。まぁそれは実際に戦えばわかると思うよ。後昨日同様普通に単体とも戦うからね」
「はいなのです!」
「わかりました!」


 テンションの高いロロノに続きティナも元気よく声をあげた。
 それを見て頷いた隆人はふと視線を横に向ける。


 そこには一匹の魔物が現れていた。


「さぁ、早速魔物が来たみたいだね。じゃあ特訓2日目、開始だよ!」



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 そして初日と同様に単体の魔物との戦闘を繰り返すこと数度、ついに目的の魔物達に遭遇する。


「エルダーゴブリンが3体、ですね」
「うん、初めての対複数にしては中々いいんじゃないかな」


 隆人達の目の前にはエルダーゴブリンが3体、それぞれ得物を構えた状態で立っている。ゴブリン種というのはほかの魔物と比べて群れを作りやすく、それは最上種であるエルダーゴブリンも変わらない。
 ここ2日でエルダーゴブリンと戦い慣れているティナが物怖じなく剣を構える。


「Cランクのは初めてですけど、私はソロの冒険者だったので群れとの経験だってあります」
「そうだろうね。でも彼らは一味違うよ気をつけてね」
「はい」


 油断なく剣を構えるティナ、その横にはロロノがいる。一瞬互いに視線を交差させる。先に動いたのはティナである。見るとロロノもすぐ後ろを追い突撃している。


「相手が複数の時は動きを見極めるか先手を取って数を減らすのが基本です!」
「倒すのです!」


 2人は一体のエルダーゴブリンに先制攻撃をしかける。ティナはもとより、成長速度の著しいロロノもエルダーゴブリンと多少戦えるようになっている。
 2人で先制して一体倒しまず数の差を無くすのが狙いだろう。


 対するエルダーゴブリンの一体もティナに対して鈍器で殴りつける。たが、ティナは落ち着いてその攻撃を横からずらし、懐に剣を振る。
 そのまま当たるかに思われた剣。しかしその一撃はエルダーゴブリンの身体に届くことはなかった。


 横からもう一本の鈍器が振るわれ、ティナの攻撃は中断させられた。

 
「しまったっ」


 苦い顔をしでその攻撃を避けるティナ、そこに更にもう一体の追撃が迫る。回避で体勢が整っていないティナはそれを防げない。
 そこに追いついたロロノの槍が割り込む。


 ガキィと鈍い音がする。そのままロロノはエルダーゴブリンと鍔迫り合い、にはせず攻撃を受けた勢いをうまく利用して後退する。


「横なのです!?」


 ロロノの視線が目の前のエルダーゴブリンに向いた時、最初にティナ達が狙ったエルダーゴブリンは既に回り込みロロノを横から狙う。


 2人の気が完全に逸れた所を狙う奇襲。完全に虚をつかれた2人はそれを止められない。
 ロロノの小さな身体にエルダーゴブリンの鈍器が容赦なく振るわれる。


「まぁ、最初はこんなところだろうね」


 隆人が呟き、動く。


 ロロノを襲おうとしていたエルダーゴブリンの前に、ロロノを庇うように立ち、ストレージから出した代用品の剣を振るう。
 エルダーゴブリンの身体に銀線が描かれて、倒れる。


 更にドドサッと二つの倒れる音が重なる。見ると先程戦っていたもう2体のエルダーゴブリンも絶命している。眉間には隆人の熊爪の短剣が突き刺さっていた。
 あまりの早業に一瞬何が起きたのかわからなくなる2人、だがそれが隆人によるものとわかるとすぐに駆け寄る。


「リュートさま、ありがとうなのです」
「ごめんなさい。完全に隙を突かれました」


 2人が心底申し訳なさそうに頭を下げる。


 隆人が介入するのはどちらかの命が本当の意味で危険になった時、今はあのままではロロノは確実に攻撃をモロに受け死んでいた可能性が高い。
 だが、隆人は笑顔を向ける。


「うん、反省しているみたいだし問題ないね!最初はこんなものだと思っていたよ」


 そのまま隆人は言葉を続ける。


「連携って言うのは個が強い程その力が爆発的に大きくなるんだよ。それこそ比較にならないくらいにね」
「油断していないつもりだったんですけど……ここまで違うとは思っていませんでした」


 こちらは先制で仕掛けたにも関わらずまともに攻撃を与えられず、逆にすぐに致命の隙を作らされた。ティナは悔しそうに言う。


「だからこそ、複数の敵と相対す時は絶対に目を離してはいけない。一体に注視すれば他が疎かになるんだ。そして確実に数を減らしていく。わかったかな?」
「はい」
「はいなのです」
「よし!じゃあ次に行こうか!どんどん壁にぶつかって行こう、そうすればどんどん強くなれるはずだよ!」


 そう隆人が発破をかけるように言い、特訓2日目は再開された。
しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

転生してテイマーになった僕の異世界冒険譚

ノデミチ
ファンタジー
田中六朗、18歳。 原因不明の発熱が続き、ほぼ寝たきりの生活。結果死亡。 気が付けば異世界。10歳の少年に! 女神が現れ話を聞くと、六朗は本来、この異世界ルーセリアに生まれるはずが、間違えて地球に生まれてしまったとの事。莫大な魔力を持ったが為に、地球では使う事が出来ず魔力過多で燃え尽きてしまったらしい。 お詫びの転生ということで、病気にならないチートな身体と莫大な魔力を授かり、「この世界では思う存分人生を楽しんでください」と。 寝たきりだった六朗は、ライトノベルやゲームが大好き。今、自分がその世界にいる! 勇者? 王様? 何になる? ライトノベルで好きだった「魔物使い=モンスターテイマー」をやってみよう! 六朗=ロックと名乗り、チートな身体と莫大な魔力で異世界を自由に生きる! カクヨムでも公開しました。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で最強に・・・(旧:学園最強に・・・)

こたろう文庫
ファンタジー
カクヨムにて日間・週間共に総合ランキング1位! 死神が間違えたせいで俺は死んだらしい。俺にそう説明する神は何かと俺をイラつかせる。異世界に転生させるからスキルを選ぶように言われたので、神にイラついていた俺は1回しか使えない強奪スキルを神相手に使ってやった。 閑散とした村に子供として転生した為、強奪したスキルのチート度合いがわからず、学校に入学後も無自覚のまま周りを振り回す僕の話 2作目になります。 まだ読まれてない方はこちらもよろしくおねがいします。 「クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される」

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

伯爵家の三男は冒険者を目指す!

おとうふ
ファンタジー
2024年8月、更新再開しました! 佐藤良太はとある高校に通う極普通の高校生である。いつものように彼女の伶奈と一緒に歩いて下校していたところ、信号無視のトラックが猛スピードで突っ込んで来るのが見えた。良太は咄嗟に彼女を突き飛ばしたが、彼は迫り来るトラックを前に為すすべも無く、あっけなくこの世を去った。 彼が最後に見たものは、驚愕した表情で自分を見る彼女と、完全にキメているとしか思えない、トラックの運転手の異常な目だった... (...伶奈、ごめん...) 異世界に転生した良太は、とりあえず父の勧める通りに冒険者を目指すこととなる。学校での出会いや、地球では体験したことのない様々な出来事が彼を待っている。 初めて投稿する作品ですので、温かい目で見ていただければ幸いです。 誤字・脱字やおかしな表現や展開など、指摘があれば遠慮なくお願い致します。 1話1話はとても短くなっていますので、サクサク読めるかなと思います。

前世の記憶さん。こんにちは。

満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。 周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。 主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。 恋愛は当分先に入れる予定です。 主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです! 小説になろう様にも掲載しています。

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

処理中です...