身体強化って、何気にチートじゃないですか!?

ルーグイウル

文字の大きさ
上 下
41 / 141
第3章 獣人少女ロロノ

千尋の谷に優しく落とす

しおりを挟む
(累計ポイントが25万ptを超えていました!皆さんに読んでもらえて嬉しいです!今後とも応援よろしくお願いします!)



「迷宮、行こうか」


 特訓をするということで隆人と共に宿を出たティナとロロノ、空き地でロロノと数度手合わせしたところで隆人は満面の笑みで2人にそう言い放った。
 突然の言葉に戸惑いを見せる。


「迷宮、ですか?ロロノも一緒に?」


 ティナがおずおずと言った様子で尋ねてくる。
 迷宮と言えばこの街では大迷宮ディアラのことを指す。そこは一般人からすれば大量の魔物が生息する危険地域である。特にロロノはレベル1の子供である。
 

 たしかにロロノも迷宮に潜った経験はあるが、それはあくまでサポーターとして、戦闘するわけではないし基本的に冒険者達に守られた安全な場所での作業である。


 だがこれからするのは特訓である。つまりロロノも戦わないなどと言うことはありえない。
 流石に危険すぎるのではないか、ティナがそう考えてもおかしくはない。見るとロロノも不安げな表情で隆人の顔をのぞいている。


 だが、隆人の考えは更にそのはるか上を行っていた。


「うん、とりあえず60階層辺りまで行ってみよう!」
「60っ!?」


 行っても初心者向けの10層まで、迷宮へいくと聞いて素直にそう考えていたティナ、それでも危険ではいかと思っていた。
 しかし隆人が行ったのは60階層つまりである。


 あまりの衝撃にティナはその端正な顔を崩し、あんぐりと口を開けてしまった。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「ほ、ほんとに、来てしまいました……」


 洞窟のような迷宮の階層の中、ティナは驚きと戸惑いが半分ずつ混じったなんとも言えない顔でつぶやく。


 ここは大迷宮ディアラ60階層、ティナとロロノに宣言をしたあの後、隆人は早速行動に移した。


 まず、手持ちの荷物を整理して、消耗品を都市の商業区で集め、それらをスキルのストレージに詰め込んだ。そして「銀の櫛亭」の女将に「2週間ほど空ける」と伝え、その分の部屋代を少し多めに渡した。
 そして、ロロノのギルドカードの再発行。ギルドカードは迷宮に入るのに必要である。以前まで使っていたものは、魔物から逃げる時に置いてきた荷物の中らしい。これについてはギルドで聞いて見るとロロノのいたパーティは全滅の確認されていて為に割とスムーズに出来た。



 ちなみに、ギルドカードの再発行は通常の発行に比べてかなり手間がかかる。使用者の血で登録されるギルドカードはその特徴から身分証明としても使われる。その為再発行には厳重な注意がなされているのだ。
 本当に紛失されたのかを確認し、以前使われていた物の使用を停止させる。そこまでした上で新しいギルドカードを発行するのだ。


 そしてこれだけの手間がかかる故に手数料もかなりの物であり、冒険者達は常々「ギルドカードを紛失しないこと」を合言葉のようにするほど気をつけている。


 と、閑話休題それはさておき。安くはない手数料をポンと支払った隆人はその勢いのまま2人を連れ迷宮に直行した。


 騒動も収束し魔物も通常通りに戻る中、道中の敵を隆人は、時間が惜しいとばかりに身体強化、そのフォースまでも使い、瞬く間に屠っていった。
 そして、最短距離を駆け抜けた一行はなんと丸二日で迷宮の60階層、つまり隆人以外未だ未到達であった領域にたどり着いたのである。


 もちろんきちんと探索したわけでもなく、ただ戦闘を極力避け最短距離で行った為、踏破というわけではないが、それでも他の誰1人、都市のトップパーティである、Bランクパーティの「太陽の剣」すら未だたどり着いていない階層にこんなに簡単にきた事にティナの頭は追いついていない。


 ロロノもティナほど状況を詳しく理解しているわけではないが、それでも目をパチクリさせている。


「ここが、60階層……なんですよね」
「うん?ティナもちゃんと数えていたでしょ?」
「え、えぇ……そうなんですけど」
「いやぁ、全力で行けばなんとか2日でここまでこれるもんだね」
「いや、えっと……」


 大偉業をまるで軽いスポーツを終えたかのように言う隆人の様子にティナは呆れを向ける。


 だが、それも落ち着いたところでティナの思考がぐるぐると回り始める。今回の目的は果たしてなんだったのか。


「ところで、リュート様?ここに来たのって、もしかして……」
「うん、2人にはこの階層でたっぷり魔物達と戦ってもらおうと思って!」
「な、何を考えているんですか!?ここは未到達階層ですよ!?深層の更に下、Cランク超えの化け物達がうじゃうじゃいる正真正銘の魔窟じゃないですか!!」


 ティナが焦りをふんだんに滲ませた声でまくし立てるように隆人に詰め寄る。
 60階層が未到達になっている理由は一重に「凶悪な魔物がたくさんいるから」というのに尽きる。


 迷宮の50階層から下の階層は「深層」と呼ばれており、魔物のレベルが段違いだと言われている。55階層まで到達した「太陽の剣」のメンバーがCランクやBランクの魔物が大量に生息していると話していた。


 Cランクの魔物はCランクの冒険者と同等の力を持つという魔物である。つまり中堅以上の冒険者とタイマンを張れるような魔物がゴロゴロといるのが深層である。


 そんな危険度MAXの場所で特訓など、本来であれば正気の沙汰ではない。それどころか、ここにいるのは隆人を除けば、Cランク冒険者のティナと未だレベル1のロロノである。むしろ回れ右して速攻で逃げるべきである。
 それゆえのティナの焦りである。


 だが、その焦りのこもったティナの言葉を聞いても隆人はどこ吹く風である。
 むしろニッコリと笑ってティナに返す。


「俺の前世の言葉にね『獅子は我が子を千尋の谷に落とす』って言葉があってね」
「?それは、なんなのですか?」
「確か、深い愛情を、もつものにこそ厳しい試練を与えて成長させること。とかだったはずだよ」
「……つまり?」


 隆人が言う謎の言葉にティナはより首をかしげる。
 ちなみに、ロロノには既に前世の事は話しており、誰にも言わないようにと厳命してある。


 答えを催促してくるティナに対して、隆人はさらに笑みを深める。


「つまり、命がけで迷宮深層の化け物達と戦って一気に強くなりましょうってこと!」
「ひぇっ、そんな無茶ですよ」
「そんなことないよ、危なそうなら俺が手を出すし。当たって砕けろ、だよ!」
「なんだかわかりませんが、無茶だと言うことはわかります!!」
「大丈夫、ねロロノ?」
「??はいなのです!」


 焦りを更に加速させるティナに対して、隆人はロロノに話を振る。だがロロノにとってこの会話は少し難しすぎて理解は及んでいない。とりあえず主人である隆人の言葉に頷いた。
 それがティナを更に追い詰める。


「俺も最初はレベル1でこんな中にほうりこまれたんだから、それでも乗り切って強くなった。だから2人も大丈夫だと思うよ、ほら、魔物がきたよ!」


 隆人の気配探知に魔物の気配がかかる。そしてその魔物はまもなく、近くの通路口から姿を現した。


「あれは…….エルダーゴブリン」


 それはエルダーゴブリン、深層に広く生息する魔物でありゴブリンの最上種である。ランクはCランク、ティナですら苦戦するレベルである。
 いきなりの強敵に、ティナが息を飲む。先程まで元気であったロロノもその気配にビクッと身体を震わせる。


「さぁ、特訓開始だよ!」


 こうして、魔の特訓がスタートした。

 
しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

転生してテイマーになった僕の異世界冒険譚

ノデミチ
ファンタジー
田中六朗、18歳。 原因不明の発熱が続き、ほぼ寝たきりの生活。結果死亡。 気が付けば異世界。10歳の少年に! 女神が現れ話を聞くと、六朗は本来、この異世界ルーセリアに生まれるはずが、間違えて地球に生まれてしまったとの事。莫大な魔力を持ったが為に、地球では使う事が出来ず魔力過多で燃え尽きてしまったらしい。 お詫びの転生ということで、病気にならないチートな身体と莫大な魔力を授かり、「この世界では思う存分人生を楽しんでください」と。 寝たきりだった六朗は、ライトノベルやゲームが大好き。今、自分がその世界にいる! 勇者? 王様? 何になる? ライトノベルで好きだった「魔物使い=モンスターテイマー」をやってみよう! 六朗=ロックと名乗り、チートな身体と莫大な魔力で異世界を自由に生きる! カクヨムでも公開しました。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で最強に・・・(旧:学園最強に・・・)

こたろう文庫
ファンタジー
カクヨムにて日間・週間共に総合ランキング1位! 死神が間違えたせいで俺は死んだらしい。俺にそう説明する神は何かと俺をイラつかせる。異世界に転生させるからスキルを選ぶように言われたので、神にイラついていた俺は1回しか使えない強奪スキルを神相手に使ってやった。 閑散とした村に子供として転生した為、強奪したスキルのチート度合いがわからず、学校に入学後も無自覚のまま周りを振り回す僕の話 2作目になります。 まだ読まれてない方はこちらもよろしくおねがいします。 「クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される」

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

捨てられた転生幼女は無自重無双する

紅 蓮也
ファンタジー
スクラルド王国の筆頭公爵家の次女として生を受けた三歳になるアイリス・フォン・アリステラは、次期当主である年の離れた兄以外の家族と兄がつけたアイリスの専属メイドとアイリスに拾われ恩義のある専属騎士以外の使用人から疎まれていた。 アイリスを疎ましく思っている者たちや一部の者以外は知らないがアイリスは転生者でもあった。 ある日、寝ているとアイリスの部屋に誰かが入ってきて、アイリスは連れ去られた。 アイリスは、肌寒さを感じ目を覚ますと近くにその場から去ろうとしている人の声が聞こえた。 去ろうとしている人物は父と母だった。 ここで声を出し、起きていることがバレると最悪、殺されてしまう可能性があるので、寝たふりをして二人が去るのを待っていたが、そのまま本当に寝てしまい二人が去った後に近づいて来た者に気づくことが出来ず、また何処かに連れていかれた。 朝になり起こしに来た専属メイドが、アイリスがいない事を当主に報告し、疎ましく思っていたくせに当主と夫人は騒ぎたて、当主はアイリスを探そうともせずに、その場でアイリスが誘拐された責任として、専属メイドと専属騎士にクビを言い渡した。 クビを言い渡された専属メイドと専属騎士は、何も言わず食堂を出て行き身支度をして、公爵家から出ていった。 しばらく歩いていると、次期当主であるカイルが後を追ってきて、カイルの腕にはいなくなったはずのアイリスが抱かれていた。 アイリスの無事に安心した二人は、カイルの話を聞き、三人は王城に向かった。 王城で、カイルから話を聞いた国王から広大なアイリス公爵家の領地の端にあり、昔の公爵家本邸があった場所の管理と魔の森の開拓をカイルは、国王から命られる。 アイリスは、公爵家の目がなくなったので、無自重でチートし続け管理と開拓を命じられた兄カイルに協力し、辺境の村々の発展や魔の森の開拓をしていった。 ※諸事情によりしばらく連載休止致します。 ※小説家になろう様、カクヨム様でも掲載しております。

伯爵家の三男は冒険者を目指す!

おとうふ
ファンタジー
2024年8月、更新再開しました! 佐藤良太はとある高校に通う極普通の高校生である。いつものように彼女の伶奈と一緒に歩いて下校していたところ、信号無視のトラックが猛スピードで突っ込んで来るのが見えた。良太は咄嗟に彼女を突き飛ばしたが、彼は迫り来るトラックを前に為すすべも無く、あっけなくこの世を去った。 彼が最後に見たものは、驚愕した表情で自分を見る彼女と、完全にキメているとしか思えない、トラックの運転手の異常な目だった... (...伶奈、ごめん...) 異世界に転生した良太は、とりあえず父の勧める通りに冒険者を目指すこととなる。学校での出会いや、地球では体験したことのない様々な出来事が彼を待っている。 初めて投稿する作品ですので、温かい目で見ていただければ幸いです。 誤字・脱字やおかしな表現や展開など、指摘があれば遠慮なくお願い致します。 1話1話はとても短くなっていますので、サクサク読めるかなと思います。

前世の記憶さん。こんにちは。

満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。 周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。 主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。 恋愛は当分先に入れる予定です。 主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです! 小説になろう様にも掲載しています。

処理中です...