身体強化って、何気にチートじゃないですか!?

ルーグイウル

文字の大きさ
上 下
40 / 141
第3章 獣人少女ロロノ

特訓開始!

しおりを挟む
(暑すぎてやる気が……何とか生きてますが。特訓開始です!2人はじわじわと隆人くんの側に引っ張られて行くのか…?)



 ドワーフの男からロロノの為の武器「銀羽槍」を購入し、愛剣のショートソードを預けてから翌日。
 迷宮都市ディアラの東端の空き地、今日も隆人は早朝の鍛錬の為にそこに来ていた。


 まだ日も登らない時間で殆どの人はまだ夢の中であるが、隆人は真剣な表情で剣を振る。
 メインウェポンであるショートソードは今ドワーフの鍛冶屋に預けている為、今日は別のショートソードを使っている。この剣は預けた剣の代わりとしてドワーフの鍛冶屋で購入したものである。


 もちろんあのドワーフの男が打った謹製の剣である。かなりの業物であり、本来代用品として使うようなものではない。
 本人としては重さや長さが一番近かったという至極単純な理由で購入したのだが。



 最初は一心不乱に剣を振っていた隆人であったが、徐々に雑念が入ったのかその精密な動きに乱れが生じる。
 そして、遂にその手を止める。


「ふぅ……。だめだね、全然集中できてない」


 自分が精彩を欠いている事を考え溜息をつく。集中できてない理由は理解していた。


「…………特訓、か……」


 そう、以前迷宮の中でロロノとティナに言った「特訓をつける」という約束、それが隆人の悩んでいる理由であった。
 昨日、武器屋でロロノの武器は見つけたし、それによってロロノの戦闘スタイルもある程度絞れた。本人もやる気であるし、そろそろ特訓を始めるべきだろう。


 だが、それが今隆人を悩ませていた。


「身体を動かせば何かいい案が出るかと思って、朝の鍛錬に来たはいいんだけどね……」


 そう呟きながら空き地のど真ん中で悩むような仕草をする隆人。


 元々隆人はこの世界の住人ではなく、転生前の世界では戦いとは無縁の生活をしていた。
 そして死後この世界に転生し、必要に迫られて強くなる道を選んだ。隆人が最初に目を覚ました迷宮の底は、そうしなければ瞬く間に死に直結するような環境であった。


 そしてもちろん隆人の戦い方は誰かに教えてもらったものではない。いわば我流である。
 夥しい数の死線と激戦を潜り抜ける中で徐々に形作られたものであり、その戦闘スタイルに型はない。まるで野生の獣のような戦い方である。


 だからこそロロノやティナに教える事が出来ない。武器が違うから戦い方も間合いも違うし、そもそも型がないから、教えようにも隆人本人が理解していないのだ。


 いざ教えようとなったところで隆人が直面したこの問題、これが今隆人を悩ませているのである。


「何かいい案が浮かぶといいんだけど……まぁうじうじと考えていてもしょうがないかなっ」


 隆人は自分の行き詰まった思考を吹き飛ばすように息を吐く、そして再び身体を動かし始めた。


 昨日の鍛錬と同様に素振りの次は迷宮の底で出会った強敵達をイメージした模擬戦闘に入る。


 そして昨日よりも更に激しく戦闘に没頭する。そしてしばらくの時が経ち、数体目の仮想敵を斬り伏せたところで隆人は鍛錬を中断する。


 隆人はこの世界に来た時。自分がまだ強くなかった時を思い出していた。


「あの頃は、まだレベルも身体強化の力も低くて、魔物一体一体と死に物狂いで戦ってたね。一歩間違えば死ぬような世界で、弱い中でも色々と試行錯誤して何度も危険と隣り合わせになりながら強くなった」


 そこまで考えたところで、ふと隆人は顔を上げる。その表情は先程までの悩み込んでいたものではなく、明るく笑っていた。


「そうだ……うん、そうしよう」


 何か思いついた様子の隆人は満足そうな顔でそのまま鍛錬に戻り、日が昇る頃に宿泊している「銀の櫛亭」に戻った。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「じゃあ、約束の特訓を始めるよ!」


 宿に戻った隆人は、起きて来た2人と共に朝食を食べた後、2人を連れて再び空き地に来た。2人ともしっかりと装備を整えており、手には各々の武器を持っている。


「待ってましたなのです!」
「リュート様、ここは?」


 待ちに待っていたロロノは隆人の言葉に元気一色ではしゃぐ、ティナは突然空き地に連れてこられたことで少し戸惑っているようだ。


「人通りが無くて広い場所が良かったからね、宿の女将にそんな場所がないかって聞いたらここを紹介されたんだよ」
「なるほど、たしかに特訓ですものね!」


 隆人の言葉に納得するティナ、見ると本人は隠しているようだが、ティナも特訓に期待しているようでワクワクした様子が溢れている。
 ちなみに、この場所を隆人が鍛錬に使っていることは言わない、少々気恥ずかしかったのだ。


「それで、特訓とはどのようなことをするのですか?」
「それなんだけど、その前に先ずやってほしい事があるんだ」
「やってほしいこと、ですか?」
「リュートさま、何するのです?」


 隆人の言葉に首をかしげる2人、全く同じような動作をする2人に隆人は少しクスッとくる。


「先ずは2人のステータスを教えてほしい。無論、隠すのは無しだよ」
「わかりました」
「はいなのです!」


 これから特訓をするにあたって2人の現状を知っておく事が必須だと考えたのだ。そしてじつはこれは後から行う特訓にも重要な情報である。
 それがわかっているのか2人は肯定を返す。ロロノの方は理解しているか微妙であるが。



  ロロノ/獣人族 LV.1  job なし

 HP 30/30  MP 7/7

  STR  7
  MND  0
  VIT  5
  AGI  7
         魔法適正 なし


  クリスティーナ/人間族 LV. 63 job 魔法騎士

 HP  242/242  MP  206/206

  STR  85
  MND  115
  VIT  71
  AGI  85
         魔法適正 炎



 そう言って教えてもらった2人のステータスがこれである。と言ってもスキル欄は秘匿して良いと言った為ステータスの数値しか聞いていないが。
 ロロノはもちろんレベル1であり、獣人らしくSTRとAGIが少し高いが本当に魔法関連は0である、ティナは予想以上に高レベルだった。設定jobの魔法騎士というのにも驚いたし、魔法関連の数値がかなり高かった。


「後、もう一つ」
「まだあるのですか?」
「と言ってもロロノだけなんだけどね。ロロノにはこれから俺と手合わせしてもらおうと思うんだ」
「手合わせ、なのです?」
「うん、これから特訓をするに当たってねロロノがどれくらいの動きができるかを知っときたいんだ」
「わかったのです!」


 ものわかりのいいロロノは隆人の言葉にすぐにうなずき、2人は距離を取る。
 ティナについては隆人はこの前の依頼の中である程度の動きを見ているのでこの過程は飛ばした。


「よし、おいで」
「行くのです!」


 ロロノは隆人の言葉に押されるように手に「銀羽槍」を構え突撃する。だが、元々戦闘経験のないロロノ、始めてのその動きは単調ですぐに隆人に躱される。
 ロロノは勢い余ってバランスを崩した。


「おっとっと、なのです」
「ほら、ロロノいくよ!」


 そして隆人はバランスを崩したところに追撃するように剣を振るう。持っているのは商業区の雑貨屋で見つけたおもちゃの剣であり、手加減を思いっきりしている。
 ロロノはかわしきれず、コーンという音と共に頭に剣が当たった。


「あいたっなのです!」
「よし、次いくよ」


 ロロノの頭に剣を当てた隆人はまた距離を取り、再びロロノが突撃する。
 それを何度か繰り返したところで隆人は終了を宣言した。


「うん、こんなところか」


 そして、隆人はロロノとティナの方を向いて言う。それも綺麗なほど満面の笑みで。


「じゃあ…………迷宮、行こうか」
しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

半神の守護者

ぴっさま
ファンタジー
ロッドは何の力も無い少年だったが、異世界の創造神の血縁者だった。 超能力を手に入れたロッドは前世のペット、忠実な従者をお供に世界の守護者として邪神に立ち向かう。 〜概要〜 臨時パーティーにオークの群れの中に取り残されたロッドは、不思議な生き物に助けられこの世界の神と出会う。 実は神の遠い血縁者でこの世界の守護を頼まれたロッドは承諾し、通常では得られない超能力を得る。 そして魂の絆で結ばれたユニークモンスターのペット、従者のホムンクルスの少女を供にした旅が始まる。 ■注記 本作品のメインはファンタジー世界においての超能力の行使になります。 他サイトにも投稿中

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

異世界転生したのだけれど。〜チート隠して、目指せ! のんびり冒険者 (仮)

ひなた
ファンタジー
…どうやら私、神様のミスで死んだようです。 流行りの異世界転生?と内心(神様にモロバレしてたけど)わくわくしてたら案の定! 剣と魔法のファンタジー世界に転生することに。 せっかくだからと魔力多めにもらったら、多すぎた!? オマケに最後の最後にまたもや神様がミス! 世界で自分しかいない特殊個体の猫獣人に なっちゃって!? 規格外すぎて親に捨てられ早2年経ちました。 ……路上生活、そろそろやめたいと思います。 異世界転生わくわくしてたけど ちょっとだけ神様恨みそう。 脱路上生活!がしたかっただけなのに なんで無双してるんだ私???

神に異世界へ転生させられたので……自由に生きていく

霜月 祈叶 (霜月藍)
ファンタジー
小説漫画アニメではお馴染みの神の失敗で死んだ。 だから異世界で自由に生きていこうと決めた鈴村茉莉。 どう足掻いても異世界のせいかテンプレ発生。ゴブリン、オーク……盗賊。 でも目立ちたくない。目指せフリーダムライフ!

転生してテイマーになった僕の異世界冒険譚

ノデミチ
ファンタジー
田中六朗、18歳。 原因不明の発熱が続き、ほぼ寝たきりの生活。結果死亡。 気が付けば異世界。10歳の少年に! 女神が現れ話を聞くと、六朗は本来、この異世界ルーセリアに生まれるはずが、間違えて地球に生まれてしまったとの事。莫大な魔力を持ったが為に、地球では使う事が出来ず魔力過多で燃え尽きてしまったらしい。 お詫びの転生ということで、病気にならないチートな身体と莫大な魔力を授かり、「この世界では思う存分人生を楽しんでください」と。 寝たきりだった六朗は、ライトノベルやゲームが大好き。今、自分がその世界にいる! 勇者? 王様? 何になる? ライトノベルで好きだった「魔物使い=モンスターテイマー」をやってみよう! 六朗=ロックと名乗り、チートな身体と莫大な魔力で異世界を自由に生きる! カクヨムでも公開しました。

処理中です...