身体強化って、何気にチートじゃないですか!?

ルーグイウル

文字の大きさ
上 下
34 / 141
第3章 獣人少女ロロノ

帰還

しおりを挟む
(はい!という事で新キャラロロノちゃんです。猫獣人の少女で「のです」っ娘。ちょっと詰め込み気味な気もしますが……)



 隆人達『暁の風』は35階層でアルラウネを倒し、その帰路の中助けを求める声を聞く。そこで獣人の少女ロロノをハイゴブリンの群れから救う。
 ロロノは奴隷であり、主人である冒険者は既に亡くなっており野良奴隷となっていた。なので本人の意向もありロロノはなし崩し的に隆人についていくことになった。


 そして、隆人とティナにロロノを加えた一行は再び帰路にもどる。薄布を纏ったのみで丸腰かつ無防備なロロノをティナが守り、現れる魔物は隆人が文字通り瞬殺していく。


 しばらくその様子を見ながら歩いていたロロノが口を開く。


「神さまはつよいのです!」


 その目は羨望で染まっており、猫耳がピコピコと揺れている。


「そうですね、リュート様はお強いです!」
「ですです!魔物をあんなかんたんにたおすなんてすごいのです」


 その言葉に反応したティナと2人、魔物を倒していく隆人をニコニコした表情で見ている。
 そこに現れた魔物達を一蹴した隆人がもどる。


「ん?2人ともどうしたのかな?」
「神さま!神さまはとってもつよいのです!」


 その屈託のない顔と憧れ全開の言葉に隆人は気恥ずかしさを覚える。


「ロロノも神さまみたいにつよくなれるです?」
「……ロロノは強くないたいの?」


 ロロノの言葉に対し、隆人は疑問で返す。しっかりしているとは言えまだ子供である。そんなロロノが強さを求めることを不思議に思ったのだ。


「はいなのです!ロロノはもっとつよくなりたいのです。魔物にまけないくらいに」


 その言葉には子供らしい無邪気な憧れが大半であったが強い意志もこもっていた。おそらく先ほどの体験で魔物に殺されかけたことが多少なりとも影響しているのだろう。


 そこにティナが補足するように言う


「リュート様、獣人族と言うのは本能的に強さを求める種族でもあります。なので目の前で命を助けられ、かつ強さを持つリュート様に刺激されたのかと」
「なるほどね……」


 その言葉で隆人はなんとなくロロノの言葉の意味を理解した。
 そして、隆人はロロノの方を再び向く。


「本当に強くなりたいんだね?」
「はいなのです」
「それじゃあ、俺が特訓してあげるよ」
「ほんとなのです!?ありがとうなのです神さま」
「ただし、1つ条件があるよ。その神さま呼びを止めること。隆人、これが俺の名前だよ」
「わかったのです!か、リュートさま!」


 まぁいいか、と隆人は笑う。あまり神さま呼びと変わってない気もするが、既に様付けの人ティナがいる分いくらかマシである。


「……リュート様」


 そんな事を考えていると、そのティナが横から隆人に声をかける。ティナはいつになく真剣な顔をしていた。


「どうしたのかな?ティナ」
「あの、私もその特訓に参加してもよろしいでしょうか?」
「いいけど、どうして?」
「私も強くなりたいのです。サイクロプスから助けていただいた時、そして今回の依頼の中でより力不足を感じましたので」
「うん、わかったよ。じゃあ2人揃って特訓だね!」
「ありがとうございますっ」


 隆人の答えを聞き、ティナは喜色を浮かべた。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「やっと出ましたね」
「ふぅ、やっぱり迷宮の外に出ると空気が綺麗だね」


 迷宮を出た隆人とティナは揃って深呼吸する。何だかんだで1週間近く迷宮の中に居たのだから無理はないが。
 そしてロロノも生きて帰ってきた事に何やら感じ入るものがあったようだ。 


「さて、依頼達成の報告に行こうか」
「そうですね!ではギルドに向かいましょうか」


 隆人達3人は迷宮を出たその足でギルドへ向かった。



「はい、依頼達成の報告ですね。ギルドカードを出してください」
「「はい」」


 受付に並び、ようやく自分達の番がきた隆人達は受付のギルド員に従いギルドカードを提示する。
 受け取ったギルド員はゴソゴソと作業を終え、カードを返却した。


「『暁の風』のお二方ですね。こちらで既に依頼達成は確認しております。このまま報酬を……と言いたいところなのですが、ギルドマスターからお二方が戻り次第呼んでほしいと連絡を受けております。お時間は大丈夫でしょうか?」
「うん、大丈夫だよ」
「では、直接向かってください。マスターには連絡しておきますので。報酬などもそこで受け取れると思います」


 元々時間に余裕はあったので即答した隆人は2人を伴いギルドマスターであるスティングのところに向かう。
 ちなみに場所は初めて前回スティングと話した場所である。


 スティングは書類の山の中で忙しそうにしていたが、隆人達が入ってきたのを見て、それらを横に退けた。


「来てくれたか、リュート君にクリスティーナ。それと……?」
「あぁ、この子はロロノ。俺の新しい仲間です」
「ロロノなのです」


 スティングは見知らぬ獣人の少女がいることに疑問を抱いたが、隆人の説明で納得した。


「そうか。まぁとりあえず座ってくれ」


 促されるように3人はソファに座る。


「それで、君たちを呼んだのは他でもない。今回の依頼での出来事について、君達の話を聞いておきたくてね。一応グリンジャーから報告は受けているが念のためだ」


 恐らくそうであろうとあたりをつけていた隆人達はスティングに促されるままに事の顛末を説明していった。


「それでは今回の魔物の大量発生はサイクロプスとは無関係だったわけか」
「いえ、そうとも言えないです。むしろアルラウネが生まれた事によりあの場所にサイクロプスが現れたという可能性が高いかと思います」
「なるほど。アルラウネ、周辺階層の魔物を急増させる階層無視の特異魔物か。やっかいだな」
「と言っても、本来はもっと深い階層でしか現れませんし、その場合は育つ前に他の魔物の餌になる事がほとんどなんですけどね」
「一応、冒険者には伝えといた方がいいだろうな。アルラウネの特徴と小されば即倒し、大きくなっていたらすぐに帰還し報告するよう義務付けなければ……」


 難しい顔をするスティング、だがすぐに隆人に顔を向けた。


「うむ、他は概ねグリンジャーの意見と同じようだな。ありがとう、助かったよ」


 そう言ってスティングは頭を下げた。そして、机の上に皮の袋を置いた。中からはじゃらじゃらと音がする。


「さて、報酬についてだが、金貨20枚を渡そう」
「そんなにですか!?」


 予想外に高額な報酬にティナが思わず声を上げる。横に座っていたロロノも口をあんぐりと開けている。


「小金貨5枚じゃなかったかな?」
「それは最低報酬だ、今回の件でリュート君達『暁の風』の功績は非常に大きい。本件のリーダーだったグリンジャーも君達がいなければ大惨事になっていただろうと言っていたしね」


 たしかに今回、アルラウネの存在に気づいたのも隆人で倒したのも隆人である。もしもう少し遅れていたら被害が拡大していた可能性は高い。
 だが、元々小金貨5枚の依頼に対して、金貨20枚。つまり日本円で200万近い大金である。驚くのも当然だろう。


 素材を売るだけで聖金貨を得られた隆人だけは殆ど表情を変えなかったが。


「こういうのは素直に受け取るべきなんだろうね」
「そうしてもらえると助かる。こちらとしても仕事に正当な報酬を渡さないことは外聞に関わるからな」


 隆人の言葉にスティングが少し本音を漏らす。それを聞いた隆人は笑みを浮かべ、報酬の入った皮の袋を受け取る。


 こうして隆人、そして『暁の風』の初めての依頼は終わりを告げた。
しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

転生してテイマーになった僕の異世界冒険譚

ノデミチ
ファンタジー
田中六朗、18歳。 原因不明の発熱が続き、ほぼ寝たきりの生活。結果死亡。 気が付けば異世界。10歳の少年に! 女神が現れ話を聞くと、六朗は本来、この異世界ルーセリアに生まれるはずが、間違えて地球に生まれてしまったとの事。莫大な魔力を持ったが為に、地球では使う事が出来ず魔力過多で燃え尽きてしまったらしい。 お詫びの転生ということで、病気にならないチートな身体と莫大な魔力を授かり、「この世界では思う存分人生を楽しんでください」と。 寝たきりだった六朗は、ライトノベルやゲームが大好き。今、自分がその世界にいる! 勇者? 王様? 何になる? ライトノベルで好きだった「魔物使い=モンスターテイマー」をやってみよう! 六朗=ロックと名乗り、チートな身体と莫大な魔力で異世界を自由に生きる! カクヨムでも公開しました。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で最強に・・・(旧:学園最強に・・・)

こたろう文庫
ファンタジー
カクヨムにて日間・週間共に総合ランキング1位! 死神が間違えたせいで俺は死んだらしい。俺にそう説明する神は何かと俺をイラつかせる。異世界に転生させるからスキルを選ぶように言われたので、神にイラついていた俺は1回しか使えない強奪スキルを神相手に使ってやった。 閑散とした村に子供として転生した為、強奪したスキルのチート度合いがわからず、学校に入学後も無自覚のまま周りを振り回す僕の話 2作目になります。 まだ読まれてない方はこちらもよろしくおねがいします。 「クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される」

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

捨てられた転生幼女は無自重無双する

紅 蓮也
ファンタジー
スクラルド王国の筆頭公爵家の次女として生を受けた三歳になるアイリス・フォン・アリステラは、次期当主である年の離れた兄以外の家族と兄がつけたアイリスの専属メイドとアイリスに拾われ恩義のある専属騎士以外の使用人から疎まれていた。 アイリスを疎ましく思っている者たちや一部の者以外は知らないがアイリスは転生者でもあった。 ある日、寝ているとアイリスの部屋に誰かが入ってきて、アイリスは連れ去られた。 アイリスは、肌寒さを感じ目を覚ますと近くにその場から去ろうとしている人の声が聞こえた。 去ろうとしている人物は父と母だった。 ここで声を出し、起きていることがバレると最悪、殺されてしまう可能性があるので、寝たふりをして二人が去るのを待っていたが、そのまま本当に寝てしまい二人が去った後に近づいて来た者に気づくことが出来ず、また何処かに連れていかれた。 朝になり起こしに来た専属メイドが、アイリスがいない事を当主に報告し、疎ましく思っていたくせに当主と夫人は騒ぎたて、当主はアイリスを探そうともせずに、その場でアイリスが誘拐された責任として、専属メイドと専属騎士にクビを言い渡した。 クビを言い渡された専属メイドと専属騎士は、何も言わず食堂を出て行き身支度をして、公爵家から出ていった。 しばらく歩いていると、次期当主であるカイルが後を追ってきて、カイルの腕にはいなくなったはずのアイリスが抱かれていた。 アイリスの無事に安心した二人は、カイルの話を聞き、三人は王城に向かった。 王城で、カイルから話を聞いた国王から広大なアイリス公爵家の領地の端にあり、昔の公爵家本邸があった場所の管理と魔の森の開拓をカイルは、国王から命られる。 アイリスは、公爵家の目がなくなったので、無自重でチートし続け管理と開拓を命じられた兄カイルに協力し、辺境の村々の発展や魔の森の開拓をしていった。 ※諸事情によりしばらく連載休止致します。 ※小説家になろう様、カクヨム様でも掲載しております。

伯爵家の三男は冒険者を目指す!

おとうふ
ファンタジー
2024年8月、更新再開しました! 佐藤良太はとある高校に通う極普通の高校生である。いつものように彼女の伶奈と一緒に歩いて下校していたところ、信号無視のトラックが猛スピードで突っ込んで来るのが見えた。良太は咄嗟に彼女を突き飛ばしたが、彼は迫り来るトラックを前に為すすべも無く、あっけなくこの世を去った。 彼が最後に見たものは、驚愕した表情で自分を見る彼女と、完全にキメているとしか思えない、トラックの運転手の異常な目だった... (...伶奈、ごめん...) 異世界に転生した良太は、とりあえず父の勧める通りに冒険者を目指すこととなる。学校での出会いや、地球では体験したことのない様々な出来事が彼を待っている。 初めて投稿する作品ですので、温かい目で見ていただければ幸いです。 誤字・脱字やおかしな表現や展開など、指摘があれば遠慮なくお願い致します。 1話1話はとても短くなっていますので、サクサク読めるかなと思います。

前世の記憶さん。こんにちは。

満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。 周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。 主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。 恋愛は当分先に入れる予定です。 主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです! 小説になろう様にも掲載しています。

処理中です...