身体強化って、何気にチートじゃないですか!?

ルーグイウル

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第2章 迷宮都市と主の脅威

商業区巡り(2)

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(24hポイントが1日ですが1500を超えました~!たくさんの方に見ていただき感謝です!)



 お金を得る為、ティナの案内で素材買い取りをしてくれる店に向かった隆人はと何気なく迷宮深層で手に入れたボルケーノグリズリーの素材をいくつか売りに出す。
 だが隆人の軽い気持ちとは裏腹に提示された金額は聖金貨4白金貨5枚と、前世の円換算で4500万円相当という破格のものであった。


「せ、聖金貨……。1匹の魔物の素材でそこまで……」


 ティナが思わずといった様子で呟く。その表情には驚愕の中に少量の疑惑が混ざっている。
 それを横から感じた隆人はティナに顔を寄せ小声で尋ねる。


「(ティナ、これは相場と違うのかい?)」
「(Aランクの魔物の素材に相場なんてありませんよ!ただ、聖金貨4枚なんて普通魔物の素材1匹分に払われるようなものではないと思うのですが」


 世間知らずの隆人の言葉に小声で叫ぶという器用な真似を見せたティナは、疑問の理由を話す。
 日本とは物価等が色々と違うとは言え、適当な家が一つ建つような金額である。それがポンと出てきたのだ、多少疑問に思うのはむしろ当然と言える。


 それを聞き警戒するような視線を店員らしき男に向ける隆人、その視線に気づいた男が口を開く。


「疑われているようなので説明を致しましょうか。金額についてですが、私どもはこれが妥当だと考えております。一つは素材としての希少性と有用性です。ボルケーノグリズリーが前回討伐されたのはもう数十年前、文献として残っている程度です。しかしその素材は非常に有用で、毛皮はAランクの魔物らしく高い防御力を持つと同時に熱耐性を持っておりそれは龍燐にも匹敵します。そして爪、これは硬度と炎への親和性も持っており、武器にも触媒にも高い効果を発揮する高い価値を持つ素材なのですよ。そしてもう一つは言わば今後の『期待』のようなものでしょうか」
「……期待?」
「Aランクの素材を持ってくるような冒険者、それは素材の取り扱いが生業の我々からしたら是非とも関係を持ちたい顧客でございます。我々のような素材屋は冒険者の方々から買い取った素材を各方面に売るのが仕事です。その目玉となる高ランクの素材、その伝手を得られるかもしれないのです。今回のものを高く評価することによって願わくば次回、また次回と関係を築いていきたいと考えての提示額でもあるのでございます」


 と、そこまで説明をしたところで言葉を切り、隆人とティナを見据えた上で再び口を開く。


「それにーーこの額でも利益を出す自信がありますから」


 そう言う男はとてもいい笑顔をしていた。その表情からは根拠のない自信ではなく、しっかりした経験と実績に裏付けされた自信が伺える。
 その雰囲気に隆人は好感を持つ。


 勘のようなものではあるが、この男は商人として信頼に値すると感じたのだ。


「そ、そんなこと客に言っていいんですか!?」
「えぇ、構いませんよ、お客様なら遠からず理解されたことだろうとも思いますし」


 突然素材屋側の打算を思いっきり暴露され戸惑いの声を上げるティナ。だが対する男はさもなんでも無いように言い、隆人の方をチラッと見る。
 事実、隆人は男の表情や雰囲気から思惑に薄々感づいていた。隆人は常識は無いようではあるが察しはそれなりにいいのだ。


「さて、これらの素材の数々は我々に売っていただけるのでしょうか」
「うん、それで構わないよ」


 そう言って素材の入ったトレイを男に向けて少し押し出す。男は「ありがとうございます」と一言言った後席を立った。


「それでは買い取り金を持ってまいりますので」


 そして数分後、お金の入ったらしき皮袋を持った男が戻ってくる。


「はい、こちらが買い取り金の聖金貨4枚と白金貨5枚でございますご確認ください。ちなみに要望通り白金貨5枚のうちの1枚分は金貨に変えておきましたので」
「ティナ、どうかな?」
「…………はい、間違えありませんリュート様」
「大丈夫そうだね」


 そう言って立ち上がる隆人とティナ。そこで思い立ったように隆人が声をかける。


「そうだ、素材を卸してるのならこの辺のお店の事少し聞かせてくれないかな?」
「……構いませんよ、と言ってもこちらも立場上評判程度しかお伝えできませんが」


 そう言って素材屋の男は色々と情報を話す。あの店は値段に対して質がいいとか、あの店は同価格でも成分の含有量が少ないとか、とてもじゃないが評判程度なんてものではない裏話と言っていいようなものもいくらか混ざっていた。


「予想以上だね、ここまでの情報がもらえるとは」
「我々商人にとって情報は武器ですからね、情報収集を怠る商人は長くはありません。これでも一線を越える話はしていませんしね」


 そう言ってまたいい笑顔を向ける男に対して、隆人もまたいい笑顔を返す。


「すごいね、贔屓にさせてもらうよ」
「ありがとうございます」
「あ、これはおまけね、これからもよろしく」


 そう言い隆人はストレージから何かを取り出すとトレイにどさっと載せる。
 そしてそのまま店を後にした。



 隆人が去った後、男はトレイに隆人の置いていったおまけというものを見る。


「これは……アクセルラビットの毛皮!?しかも傷のない上物っ。……これはすごい客と縁を結べたのかもしれませんね……」


 そう言って男は隆人とティナの出て言った出入り口を見た。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 素材屋から出た頃、外はもう夕暮れで空もオレンジ色に染まっていた。


「リュート様、もうそろそろ宿に行きましょう。私の泊まっているところは『銀の櫛亭』というのですけれど、いい宿なんですよ」
「そうなんだ、じゃあ今夜はそこに泊まってみようかな」


 ここ数年の間ずっとダンジョンの中で生活してきた隆人に取って宿に泊まるというのは未知の体験であり、声からもウキウキとした様子が漏れ出ている。


 ちなみに冒険者が多く集まるこの街には宿もそれなりに多く存在し、その質もピンからキリまで様々である。それに応じて値段も差があるのだが、ティナのお世話になっている『銀の櫛亭』は少々値がはる分質は高く、設備も十分整っていると評判の高い宿である。


「では、行きましょうか!こちらです」


 そうして宿に向かって足を向けた時。


  ウワァァァァァン
「うるせぇ!黙って歩け!」


 突然聞こえる子供の泣き声と男の怒声。何事かとそちらを向いた隆人の目に映ったのは、大の大人にロープで引かれる少年少女達だった。泣いているのはその中の子供らしい。よく見ると猫のような耳がついてる
 それを見てティナが隆人に話す


「あれは奴隷ですね」
「奴隷?」
「はい、奴隷になった事情は様々ですが、奴隷紋によって行動をしばれる奴隷はこの迷宮都市で重宝されているんですよ」
「あんな小さい子もなのかい?」
「はい、特に子供は反抗が弱いので……」


 そういうティナの表情は暗い。こうは言っているが内心あまり良くは思っていないのであろう。


 隆人達は釈然としない思いを抱きながらその場を後にする。隆人の頭には泣いていた猫耳の少女がこびりついていた。
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