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第1章 異世界へ
クリスティーナ
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(今回から人が増えます!長かった…)
隆人は今日もダンジョンの中を歩き回っては魔物を倒すという生活を続けている。
だが、その顔からは幼さが消え、体つきも幾分がっしりしている。背も伸びたであろうか。
それもそのはず、既に隆人がこの世界に転生してからかなりの時間が経っていた。時計も太陽もない為正確ことは分からないが体感でも5年は経っているだろうと考えていた。
その間ずっとダンジョンから出ておらず、ひらすら魔物を狩り続ける生活をずっと続けていた
「グギャッ」
そして今もちょうど、遭遇したゴブリンとの戦闘が行われている。といってもおよそ戦いと呼べるものではないが。
走って接近してくるゴブリン。それに対して隆人の方はその場から全く動く気配がない。そして彼我の距離がほぼ0になり、ゴブリンが手に持った鈍器を振り下ろそうという時になってようやく隆人が動く。
隆人の手が素早く動き、その手に持っていたショートソードが2本の銀線を描く。
2本の銀線はまずその1本がゴブリンの武器を持つ方の腕を切り飛ばし、そしてもう一本はその首を刎ねる。
文字通り、瞬殺であった。
と、戦闘の終わった隆人であるがなぜが未だその場に立ったまま目を瞑っている。
そしてカッと目を開いたと思った瞬間、体を半回転させ、その勢いも利用して剣を切り上げる。
手応えを感じると共に何がドサッと地面に落ちる音。見ると兎魔物の死体である。
隆人は後方から高速で突っ込んでくる兎魔物の動きを気配探知だけで把握し、切り裂いたのである。
数年もの間、無数の魔物が跋扈する危険地帯であるダンジョンで戦い続けた為に、隆人の気配探知は洗練されており、数年前と比べて範囲も制度も大幅に強化されていた。
このくらいの芸当は容易にやってのける。
そして先程ゴブリンを倒した剣の技術もそうである。あのリザードマンに託された剣であるショートソードは最初はその間合いや立ち回りに難儀していたが、慣れてくるとこれ以上ないほど隆人の戦闘方法にマッチしており、今ではその技量も剣士と名乗って遜色ないものになっていた。
そして、何よりもレベルである。ひたすら魔物を狩り続けた隆人は
隆人/人間族 LV. 274 job なし
HP 1440/1440 MP 636/736 (100)
STR 724
MND 648
VIT 680
AGI 703
魔法適正 風
スキル
ユニークスキル 身体強化 LV.10☆
〈神速〉〈剛力〉〈鉄壁〉〈転魔〉〈霊装〉
パッシブスキル 危機回避 LV.3
状態異常耐性 LV.5☆
各種属性耐性 LV.4
習得スキル 天駆 LV.3☆
ストレージ LV.4
HP回復 LV.4
〈ヒール〉〈ハイヒール〉〈メガヒール〉
換装 LV.3
割ととんでもないことになっていた。
レベルは3桁をはるかに超えているし、ステータス欄の数値もまるでバグってる。他の人間に出会ってないのでこの世界の水準はわからないが、前世では確実に人外と呼ぶにふさわしいだろう。
「って言っても、もう今更かなぁ……」
隆人自身もレベル100を超えた辺りでは「もしかして人間やめちゃったのかも!?」とか色々焦ってはいたのだが、それもしばらくしたら慣れがきてしまい。じきに気にしなくなってしまった。
「よし、こんなもんかな」
そんな調子でそこから更に何体かの魔物を狩ったところで日課の魔物狩りを終え、小部屋に戻った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「でも、退屈だなぁ……」
小部屋に戻った隆人は焼いた魔物の肉を適当に食べながらぼんやりと呟いた。
ちなみに、隆人が転生してきたこの小部屋であるが、ここも無機質で何も無かった頃と比べて変化があった。
今では生活に役立つ椅子や机、布団といった生活用具が不恰好ながら揃っている。と言っても生えていた木や魔物の素材で硬質なもの鳥系魔物の羽毛などで作ったものである。
だが、素材が良かったのかかなり良いものであり隆人も気に入っている。
と、閑話休題。隆人は最近、ダンジョン生活に退屈を感じ始めていた。その理由はいたって単純。『隆人が強くなった』からである。
この数年間、狂ったようにレベリングをしていた隆人のレベルはこのダンジョンに対して上がりすぎてしまった。
最初は命懸けだった魔物との戦闘も今では作業のようになっており、緊張感もなくなってしまった。
それにここらにいる魔物は大概戦っており、やることがもうない、のである。
「よし!じゃあ上階にいってみようか!」
そう考えた隆人はここら辺でやることがないなら、これまで未知の階層に行ったり、出口が見つかったらダンジョンを出ようと思い至った。
と言っても、実はこの決意をするのは今回が初めてではない。それが、目的地が上階のみという理由でもある。
ここ数年間で何度もこんなテンションになった隆人はその度に未知の階層に突貫した。現在上は30階、下は23階まで探索が終わっている。
何故下階層が中途半端かと言うと、ダンジョンがそこまでしか無かったからである。
今日からおよそ半年前、遂にたどり着いたこの小部屋のある階層から23階層下、そこには巨大なホールになっていた。そしてそこには主のような魔物やダンジョンのボスともいうべき巨大な魔物がいた。
そしてその魔物との死闘の上に勝利した隆人は、このダンジョンがその階層で最奥だとわかったのである。
そこで目指す場所を上に切り替えた隆人だが、敵が弱かった上階はサクサク進む一方で終わりが見えず、上30階まで行ったところでやめてしまっていたのだ。
そして今回、もっと上に行ってみようという気持ちが出てきたということである。
決断してからは早かった。そそくさと小部屋を片付けていく。家具もどきは無理だが、装備や小道具などを現在のストレージLV.4の最大容量である160まで詰め込んでいく。
もしかしたらしばらく戻らない可能性があるので、荷物はなるべく持っておきたかったのである。
そして、最後に入り口に岩などを置き万が一の時のために隠した後小部屋を後にした。
「さぁ、何か新しい発見があるといいな」
この行動が隆人の人生に大きな影響を与えるとは、この時の隆人には予想もついていなかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そして途中途中で野宿をしながら今までの最大進出階層である小部屋から30階層を超え、更に2階層ほど進んでいた。
それまで何の変哲もない階層が続き、隆人のテンションが冷め始めてきた頃、広げていた気配探知の網に反応がかかった。
一つは反応が大きく、もう一つはそれに比べてかなり反応が小さい。
隆人は魔物の戦闘だろうと思い、未知の魔物と遭遇したいと思って駆け出す。
だが、最後の角を曲がりその反応の主を目にした隆人の目は予想外に見開かれる。
たしかにそれは未知であったのだが。
「単眼の魔物と……女性!?」
そう、そこには魔物と戦闘しているひとりの女性ーーつまり人間がいたのだ。そしてその女性はみたところ少し年下の少女のようで、更に騎士のような身なりであるが、既に装備もその身体も傷だらけでボロボロであった。
相対しているのは単眼で体長が2メートル半程ある青色の人型魔物であり、ゴブリンをそのまま巨大化したようなパワーファイターの魔物である。
本来こんな上の階層にいることはない魔物であり、その強さは熊魔物の同等くらいはある。
その単眼の魔物はその腕を振りかぶって拳を少女に向かって振り下ろす。
少女は身動きが取れないのか、それをただ黙って見つめている。
「これは、まずいね!『身体強化』」
その光景に最悪の結果が見えた隆人はすぐに身体強化を使い、一気に距離を潰す。
274レベルにもなった隆人の身体強化。その効果は凄まじく、その身体能力で行われた縮地は短距離であればまるで転移のような動きを可能にする。
ガキッ
そして、瞬時に少女の前に立った隆人は振り下ろされた拳を引き抜いた剣の腹で止めた。
「…………え?」
目の前に突然少年が現れ、巨大な魔物の攻撃を受け止める。現実離れしたその光景に、騎士風の装備の少女は思わず変な声を上げる。
だが、少し落ち着き状況を把握したのか、血相を変えて叫んだ。
「何をしているんですか!その魔物はサイクロプス--ランクA相当の魔物ですよ!?一人でなんとかできる魔物ではありません!」
単眼の魔物ーーサイクロプスの拳受け止めている為後ろが見えない隆人だが、恐らくその顔は蒼白か真っ赤だろう。
そんなことを考えるくらいに隆人には余裕があった。熊魔物相当とはいえ、今の隆人の敵ではなく本来身体強化すらいらない魔物である。
それよりも隆人意識は後ろの少女が叫んだ、「ランクA」や「一人でなんとかできない」といった言葉が気になっていた。
拳を受け止めたまま動かない隆人の姿に危険だと思ったのだろう、再び少女が叫ぶ。
「私が隙を作りますからその隙に逃げてください!これでも多少は腕に自信があります!あなたが逃げるくらいの時間は稼いで見せますよ」
そう言いながら、フラフラと立ち上がる。その姿は満身創痍と言えるものであり、とても無茶ができる状態ではない。
それを察した隆人は早々に決着をつけてしまうことにした。
「いや、それには及ばないよ……はっ!」
競り合ってた状態から更に力を込め相手を押す、予想外の力にサイクロプスがたたらを踏む。
その隙を逃さず、隆人はその剣を袈裟懸けに振るう。
サイクロプスの肩口に入ったショートソードはそのまま反対側の腰まで到達し切り抜ける。
サイクロプスの胴体は斜めに滑り落ちた。
ズドンという音、そして一瞬の静寂。
「…………へ?」
そしてまた、少女が間抜けな声を出す。この少女、予想外のことに語彙が飛んだようである。
「大丈夫かい?」
「…………え、あ、はい!ありがとうございます?」
まだ現実が受け入れていないのか、しどろもどろに答える。そしてうわ言のように「……え、なんで……なにこれ……」と呟いている。
そしてある程度落ち着いたのか、しばらくしてからキリッとした顔をして再び感謝を述べる。
「改めて、助けていただきありがとうございます。高名な冒険者の方だったのですね」
ぺこりと頭を下げる少女。その姿をみた隆人の頭の中は
(こ、この子……可愛いな……)
その容姿に殆どもってかれていた。
明るく輝くような金髪のストレートは腰の少し上まで伸びていて幼さの残る顔つきでありながら芯の強い表情をしており、少女と大人の間特有の魅力を持っている。騎士鎧で隠されているが、そこから覗くスタイルは引き締まっていてすらりとしている。
美少女といって過言ではないどころかそれを超える容姿であり、見たことのないような美少女に驚く。
「えっと……、あなたの名前を聞かせてくれませんか?」
隆人はその声で我を取り戻し、少女の質問に答える。
「俺は隆人、君は?」
「りゅーと……リュート様ですね!私はクリスティーナと言います、以後お見知り置きを!」
そういって弾けるような笑顔を見せる。
これが少女ーークリスティーナとの出会いであった。
隆人は今日もダンジョンの中を歩き回っては魔物を倒すという生活を続けている。
だが、その顔からは幼さが消え、体つきも幾分がっしりしている。背も伸びたであろうか。
それもそのはず、既に隆人がこの世界に転生してからかなりの時間が経っていた。時計も太陽もない為正確ことは分からないが体感でも5年は経っているだろうと考えていた。
その間ずっとダンジョンから出ておらず、ひらすら魔物を狩り続ける生活をずっと続けていた
「グギャッ」
そして今もちょうど、遭遇したゴブリンとの戦闘が行われている。といってもおよそ戦いと呼べるものではないが。
走って接近してくるゴブリン。それに対して隆人の方はその場から全く動く気配がない。そして彼我の距離がほぼ0になり、ゴブリンが手に持った鈍器を振り下ろそうという時になってようやく隆人が動く。
隆人の手が素早く動き、その手に持っていたショートソードが2本の銀線を描く。
2本の銀線はまずその1本がゴブリンの武器を持つ方の腕を切り飛ばし、そしてもう一本はその首を刎ねる。
文字通り、瞬殺であった。
と、戦闘の終わった隆人であるがなぜが未だその場に立ったまま目を瞑っている。
そしてカッと目を開いたと思った瞬間、体を半回転させ、その勢いも利用して剣を切り上げる。
手応えを感じると共に何がドサッと地面に落ちる音。見ると兎魔物の死体である。
隆人は後方から高速で突っ込んでくる兎魔物の動きを気配探知だけで把握し、切り裂いたのである。
数年もの間、無数の魔物が跋扈する危険地帯であるダンジョンで戦い続けた為に、隆人の気配探知は洗練されており、数年前と比べて範囲も制度も大幅に強化されていた。
このくらいの芸当は容易にやってのける。
そして先程ゴブリンを倒した剣の技術もそうである。あのリザードマンに託された剣であるショートソードは最初はその間合いや立ち回りに難儀していたが、慣れてくるとこれ以上ないほど隆人の戦闘方法にマッチしており、今ではその技量も剣士と名乗って遜色ないものになっていた。
そして、何よりもレベルである。ひたすら魔物を狩り続けた隆人は
隆人/人間族 LV. 274 job なし
HP 1440/1440 MP 636/736 (100)
STR 724
MND 648
VIT 680
AGI 703
魔法適正 風
スキル
ユニークスキル 身体強化 LV.10☆
〈神速〉〈剛力〉〈鉄壁〉〈転魔〉〈霊装〉
パッシブスキル 危機回避 LV.3
状態異常耐性 LV.5☆
各種属性耐性 LV.4
習得スキル 天駆 LV.3☆
ストレージ LV.4
HP回復 LV.4
〈ヒール〉〈ハイヒール〉〈メガヒール〉
換装 LV.3
割ととんでもないことになっていた。
レベルは3桁をはるかに超えているし、ステータス欄の数値もまるでバグってる。他の人間に出会ってないのでこの世界の水準はわからないが、前世では確実に人外と呼ぶにふさわしいだろう。
「って言っても、もう今更かなぁ……」
隆人自身もレベル100を超えた辺りでは「もしかして人間やめちゃったのかも!?」とか色々焦ってはいたのだが、それもしばらくしたら慣れがきてしまい。じきに気にしなくなってしまった。
「よし、こんなもんかな」
そんな調子でそこから更に何体かの魔物を狩ったところで日課の魔物狩りを終え、小部屋に戻った。
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「でも、退屈だなぁ……」
小部屋に戻った隆人は焼いた魔物の肉を適当に食べながらぼんやりと呟いた。
ちなみに、隆人が転生してきたこの小部屋であるが、ここも無機質で何も無かった頃と比べて変化があった。
今では生活に役立つ椅子や机、布団といった生活用具が不恰好ながら揃っている。と言っても生えていた木や魔物の素材で硬質なもの鳥系魔物の羽毛などで作ったものである。
だが、素材が良かったのかかなり良いものであり隆人も気に入っている。
と、閑話休題。隆人は最近、ダンジョン生活に退屈を感じ始めていた。その理由はいたって単純。『隆人が強くなった』からである。
この数年間、狂ったようにレベリングをしていた隆人のレベルはこのダンジョンに対して上がりすぎてしまった。
最初は命懸けだった魔物との戦闘も今では作業のようになっており、緊張感もなくなってしまった。
それにここらにいる魔物は大概戦っており、やることがもうない、のである。
「よし!じゃあ上階にいってみようか!」
そう考えた隆人はここら辺でやることがないなら、これまで未知の階層に行ったり、出口が見つかったらダンジョンを出ようと思い至った。
と言っても、実はこの決意をするのは今回が初めてではない。それが、目的地が上階のみという理由でもある。
ここ数年間で何度もこんなテンションになった隆人はその度に未知の階層に突貫した。現在上は30階、下は23階まで探索が終わっている。
何故下階層が中途半端かと言うと、ダンジョンがそこまでしか無かったからである。
今日からおよそ半年前、遂にたどり着いたこの小部屋のある階層から23階層下、そこには巨大なホールになっていた。そしてそこには主のような魔物やダンジョンのボスともいうべき巨大な魔物がいた。
そしてその魔物との死闘の上に勝利した隆人は、このダンジョンがその階層で最奥だとわかったのである。
そこで目指す場所を上に切り替えた隆人だが、敵が弱かった上階はサクサク進む一方で終わりが見えず、上30階まで行ったところでやめてしまっていたのだ。
そして今回、もっと上に行ってみようという気持ちが出てきたということである。
決断してからは早かった。そそくさと小部屋を片付けていく。家具もどきは無理だが、装備や小道具などを現在のストレージLV.4の最大容量である160まで詰め込んでいく。
もしかしたらしばらく戻らない可能性があるので、荷物はなるべく持っておきたかったのである。
そして、最後に入り口に岩などを置き万が一の時のために隠した後小部屋を後にした。
「さぁ、何か新しい発見があるといいな」
この行動が隆人の人生に大きな影響を与えるとは、この時の隆人には予想もついていなかった。
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そして途中途中で野宿をしながら今までの最大進出階層である小部屋から30階層を超え、更に2階層ほど進んでいた。
それまで何の変哲もない階層が続き、隆人のテンションが冷め始めてきた頃、広げていた気配探知の網に反応がかかった。
一つは反応が大きく、もう一つはそれに比べてかなり反応が小さい。
隆人は魔物の戦闘だろうと思い、未知の魔物と遭遇したいと思って駆け出す。
だが、最後の角を曲がりその反応の主を目にした隆人の目は予想外に見開かれる。
たしかにそれは未知であったのだが。
「単眼の魔物と……女性!?」
そう、そこには魔物と戦闘しているひとりの女性ーーつまり人間がいたのだ。そしてその女性はみたところ少し年下の少女のようで、更に騎士のような身なりであるが、既に装備もその身体も傷だらけでボロボロであった。
相対しているのは単眼で体長が2メートル半程ある青色の人型魔物であり、ゴブリンをそのまま巨大化したようなパワーファイターの魔物である。
本来こんな上の階層にいることはない魔物であり、その強さは熊魔物の同等くらいはある。
その単眼の魔物はその腕を振りかぶって拳を少女に向かって振り下ろす。
少女は身動きが取れないのか、それをただ黙って見つめている。
「これは、まずいね!『身体強化』」
その光景に最悪の結果が見えた隆人はすぐに身体強化を使い、一気に距離を潰す。
274レベルにもなった隆人の身体強化。その効果は凄まじく、その身体能力で行われた縮地は短距離であればまるで転移のような動きを可能にする。
ガキッ
そして、瞬時に少女の前に立った隆人は振り下ろされた拳を引き抜いた剣の腹で止めた。
「…………え?」
目の前に突然少年が現れ、巨大な魔物の攻撃を受け止める。現実離れしたその光景に、騎士風の装備の少女は思わず変な声を上げる。
だが、少し落ち着き状況を把握したのか、血相を変えて叫んだ。
「何をしているんですか!その魔物はサイクロプス--ランクA相当の魔物ですよ!?一人でなんとかできる魔物ではありません!」
単眼の魔物ーーサイクロプスの拳受け止めている為後ろが見えない隆人だが、恐らくその顔は蒼白か真っ赤だろう。
そんなことを考えるくらいに隆人には余裕があった。熊魔物相当とはいえ、今の隆人の敵ではなく本来身体強化すらいらない魔物である。
それよりも隆人意識は後ろの少女が叫んだ、「ランクA」や「一人でなんとかできない」といった言葉が気になっていた。
拳を受け止めたまま動かない隆人の姿に危険だと思ったのだろう、再び少女が叫ぶ。
「私が隙を作りますからその隙に逃げてください!これでも多少は腕に自信があります!あなたが逃げるくらいの時間は稼いで見せますよ」
そう言いながら、フラフラと立ち上がる。その姿は満身創痍と言えるものであり、とても無茶ができる状態ではない。
それを察した隆人は早々に決着をつけてしまうことにした。
「いや、それには及ばないよ……はっ!」
競り合ってた状態から更に力を込め相手を押す、予想外の力にサイクロプスがたたらを踏む。
その隙を逃さず、隆人はその剣を袈裟懸けに振るう。
サイクロプスの肩口に入ったショートソードはそのまま反対側の腰まで到達し切り抜ける。
サイクロプスの胴体は斜めに滑り落ちた。
ズドンという音、そして一瞬の静寂。
「…………へ?」
そしてまた、少女が間抜けな声を出す。この少女、予想外のことに語彙が飛んだようである。
「大丈夫かい?」
「…………え、あ、はい!ありがとうございます?」
まだ現実が受け入れていないのか、しどろもどろに答える。そしてうわ言のように「……え、なんで……なにこれ……」と呟いている。
そしてある程度落ち着いたのか、しばらくしてからキリッとした顔をして再び感謝を述べる。
「改めて、助けていただきありがとうございます。高名な冒険者の方だったのですね」
ぺこりと頭を下げる少女。その姿をみた隆人の頭の中は
(こ、この子……可愛いな……)
その容姿に殆どもってかれていた。
明るく輝くような金髪のストレートは腰の少し上まで伸びていて幼さの残る顔つきでありながら芯の強い表情をしており、少女と大人の間特有の魅力を持っている。騎士鎧で隠されているが、そこから覗くスタイルは引き締まっていてすらりとしている。
美少女といって過言ではないどころかそれを超える容姿であり、見たことのないような美少女に驚く。
「えっと……、あなたの名前を聞かせてくれませんか?」
隆人はその声で我を取り戻し、少女の質問に答える。
「俺は隆人、君は?」
「りゅーと……リュート様ですね!私はクリスティーナと言います、以後お見知り置きを!」
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