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第7節: ふたりの関係の変化

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自主練の日、航太はいつも以上に集中していた。
タクミが「これからはもっとお互いに向き合って過ごそう」と言ってから、
練習の時間が今までとは違った意味を持つようになった。
以前は、ただの技術向上のためのトレーニングだったが、今ではその時間が、
より親しい関係を築くための大切なひとときになっていた。


「今日は動きがなかなかいいじゃん」 タクミが笑顔で言う。
航太の心臓はドキンと跳ね上がる。以前なら、この笑顔はただの指導の一環だと思っていた。
でも、最近は違う。タクミの声には、どこか柔らかさが混じっているように感じるのだ。

「…あ、ありがとうございます!」 照れくさそうに答える航太。
タクミに近づくために始めた自主練だったが、
いつの間にかタクミとの距離が少しずつ縮まっている気がした。

練習後、ふたりでスタジオの片隅に座り込む。ふぅっと息をつくタクミ。
汗を拭きながら、彼はふと仕事の話題ではなく、少しプライベートな話題を切り出した。

「最近、ちょっと仕事のプレッシャーがすごくてさ…舞台のこととか、考えすぎちゃって」 
タクミがそんなふうに悩みを打ち明けてくれるのは初めてだった。
リーダーである彼が、悩みを誰かに話すなんて、航太にとっては特別な瞬間だった。

「それなら、無理しないでくださいね。僕たちがサポートしますから!」 航太は思わず口に出した。
タクミが自分に心を開いてくれることが嬉しくて、自然と本音が出てしまったのだ。

「ありがとう、航太」 タクミは少し照れくさそうに笑った。
以前は鉄壁のリーダーとしての顔しか見えなかったタクミが、
今は少しずつ素顔を見せてくれている。航太はその変化を肌で感じていた。

その後も、自主練や打ち合わせの後は、仕事の話からいつの間にかプライベートな話題へと移り、
ふたりの会話が続くようになった。リーダーとしてのタクミだけでなく、
一人の人間としてのタクミが少しずつ見えてくる。
少しずつだが、確実にふたりの関係が深まっていた。
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