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第6節: 文也の本音を聞き出す
しおりを挟む颯太は最近、文也の様子が少しおかしいことに気づいていた。
以前は、放課後に一緒に本を読んだり、何気ない会話を楽しんでいた文也が、
ここ数日、少し距離を取るようになった。会話も短く、笑顔も減ったように思える。
放課後、いつもの教室の隅で文也の隣に座った颯太は、
思い切って切り出すことにした。
「なあ、文也。最近、なんか元気ないよな?」
文也は一瞬驚いたように目を見開いたが、
すぐに視線をそらした。「…別に、なんでもないよ」
その言葉に、颯太はますます不安になった。
なんでもないわけがない。無表情な文也が、最近は特に沈んで見える。
「なんでもないってことないだろ?俺、なんかしちゃった?」
颯太は真剣な顔で問いかけたが、文也は答えない。
颯太は文也の顔をじっと見つめ、少しおどけて言ってみた。
「もしかして、俺の悪ノリが過ぎた?それなら謝るよ、次からは控えめにするって!」
文也はその言葉に反応し、かすかに首を振った。
「…違うんだ。ただ、俺が颯太の時間を奪ってるんじゃないかって、
それが気になってて」
颯太は一瞬、何を言われたのかわからなかったが、すぐに思い当たった。
友達に「最近付き合いが悪い」と言われたことを、文也が聞いていたのか。
「ああ…それか!」颯太は少し笑いながら言った。
「あいつらのことは気にしなくていいよ!
それに、今は文也と話してるのが一番楽しいんだ」
文也は驚いたように颯太を見つめた。颯太は少しだけ真剣な表情で続ける。
「クラスのみんなといるのも楽しいけど、
正直言うと、文也とこうやって話してる時間が一番落ち着くんだ。
だから、文也が距離を取ろうとしてるなら、めっちゃ寂しいし、俺的には困る」
颯太の言葉には迷いがなく、文也はその真っ直ぐな言葉に胸が温かくなるのを感じた。
「だからさ、これからも一緒に過ごしてほしい。俺がそうしたいから」
文也は颯太の必死なお願いに、少しだけ微笑んだ。
そして、ぽつりと「ありがとう」とつぶやいた。
「俺も…颯太といる時間が楽しいよ」
その一言で、颯太の顔は一瞬で明るくなった。
まるで子犬のような無邪気な笑顔が文也に向けられる。
「本当?よかった!俺、めっちゃ心配してたんだよ!」
颯太は思わず文也にぐっと近づきながら言ったが、
すぐに熱意を抑えて、「あ、いや…でもこれでまた一緒に過ごせるな!」と続けた。
文也はその反応に、少し照れながらも笑ってしまった。
颯太は文也の笑顔を見て、心の中でガッツポーズを決めた。
――よし、これでまた文也と楽しい時間が過ごせる!
文也が「楽しい」と言ってくれたことが、颯太にとって何よりの喜びだった。
これからも二人だけの時間が続くことを、颯太は心から願っていた。
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