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第1章 辺獄妄執譚

第65話 煉獄の創造神

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クンフーが戦車に乗って空を駆けアイタリデースの指揮する軍団と戦っていると、そこに翼のマントを着けたヘラクレスが現れた。

クンフーはそれを見ると少し微笑み

「おいおい、またお前か?もう一度倒されに来るとはマヌケだな」

クンフーは戦車をヘラクレスに向かって走らせペーレウスの剣でヘラクレスを切り裂こうとした。

だが、ヘラクレスはアステリオスの剣でそれを受け思い切り力を入れてクンフーを押した。

「次はお前が倒される番だ」

ヘラクレスはそう言ってクンフーに力強く斬りかかった。クンフーはそれを剣で払いヘラクレスの喉に剣を突き刺そうとした。だが、ヘラクレスは首を傾けてそれを防ぎクンフーに対して頭突きをした。

クンフーはそれに怯み、ヘラクレスはそこにすかさず剣でクンフーの右肩を切り落とそうとした。だが、クンフーはヘラクレスの剣を右腕で掴み剣ごとヘラクレスを引っ張って放り投げ戦争から引き離した。

クンフーがそこでやっとヘラクレスから解放されるとそこを艦砲射撃が襲い、同時に巨竜が戦車を襲った。

巨竜は高熱の炎のブレスを吐いて戦車を攻撃したが、艦砲射撃と共に黄金の粒子で戦車を包みそれを回避した。

クンフーは黄金の粒子を戦車に纏わせたまま巨竜に突進し巨竜を攻撃すると、巨竜はそれに押され体勢を崩した。クンフーはその隙に戦車を走らせて巨竜の背中に周り、巨竜の背中を剣で斬った。

だが、巨竜の鱗が少し剥がれただけで巨竜には殆どダメージが無かった。

巨竜は剣で切られると全速力で戦車から遠ざかり、そこに下の戦艦から艦砲射撃でナパーム弾を撃ち込まれた。

ナパーム弾は戦車の周りで爆散し空中に火の海を作り出した。クンフーは黄金の粒子を戦車に纏わせていたので炎は通じなかったが、戦車の下からヘラクレスが戦車をひっくり返す様に飛び出してきた。

「仲間達から奪った物を返して貰うぞ!」

ヘラクレスがそう言いながら戦車を下から持ち上げクンフーを落とそうとしたが、クンフーは戦車を引いている獣達を走らせヘラクレスを引き離し、獣の手網を足で踏み付けて背中からエウリュトスの弓を取り、黄金の粒子で矢を作るとヘラクレスに向かって撃ち放った。

ヘラクレスはそれを剣で振り払いながらクンフーの戦車に近づいた。だが、クンフーはそれを見て矢に込める黄金の粒子の量を最大まで貯めた矢を作り出し、それをヘラクレスに撃ち込んだ。

「さて、ギリシャの大英雄はこの矢を止められるかな!」

クンフーの放った矢は空を裂いてヘラクレスの元へ行くさなか先端から超高熱の球体を生み出し太陽の様な輝きを放ちながらヘラクレスへ向かった。

ヘラクレスは自らの剣に黄金の粒子を纏わせてそれに対抗しようと剣で矢を払ったが、クンフーはアルゴノーツから奪った能力を使いヘラクレスに見えている矢の位置と実際の矢の位置を離した為に矢はヘラクレスの右膝に突き刺さった。

矢が当たった後にその事に気が付いたヘラクレスは矢の球体が徐々に大きくなりヘラクレスの体を高熱に包み込み状況を知り絶叫した。

「うああああああああッ!」

灼熱の炎に焼かれその場からヘラクレスが離れようとしたが、球体のエネルギーはヘラクレスを強力な引力で引き寄せた為にヘラクレスは身動きが取れなかった。

ヘラクレスの苦しむ様を見てクンフーは続けてヘラクレスの頭を矢で撃ち続けた。

藻掻き苦しむヘラクレスを助けるべくアイタリデースは巨竜をクンフーに向かって突進させた。クンフーはそれに対し一度弓を置きペーレウスの剣を取って巨竜に対処するべく黄金の粒子を剣に纏わせて巨大な剣を作り巨竜を切り裂こうとした。

クンフーの光の剣が煌々と黄金の輝きを放ち、溢れ出る熱が辺りに何人も近寄らせぬ強大な力を見せつけるとクンフーはそれに歓喜して巨竜に黄金の剣を振り下ろした。

だが、それを妨げる様にヘラクレスと巨竜を巨大な魔法陣が包み、ヘラクレスが呑み込まれている球体とクンフーの黄金の剣を四散させ、攻撃を防いだ。

「なんだと?何が起こった!」

クンフーがそれに激怒するとノアの方舟に乗っているメディアがクンフーの方を向き

「貴方は聖遺物の力に頼り過ぎていますね。アルゴノーツや他の辺獄の能力者から奪った力があまりに強大でそれに酔っている。なので、貴方の聖遺物の力を消し去ります。これで貴方は無力ですね」

とクンフーに対して巨大な魔法陣を展開させた。クンフーはメディアの発言に恐怖しそれを止めさせようとエウリュトスの矢を取りメディアを狙った。

しかし巨竜はそれを阻止しようとクンフーの戦車に突っ込んだ。

「クソがッ!邪魔だァッ!」

クンフーは巨竜を振り払おうとしたが、同時に下からの艦砲射撃もクンフーを襲い、その上メディアの対処が最優先の為に焦り、完全に混乱していた。

今まで無敵の様な戦いをしていたクンフーは圧倒的な数により完全に窮地に陥っていた。

「ちくしょうッ!ここ迄来てッ!これだけの力を得てすら数に屈っするのか!俺がどれだけ努力しようと無意味だって言うのか!
クソおおおおおおおおおおッ!」

クンフーは生前の事を思い出しながら現状の誰も頼る事の出来ぬ状態で無惨な結末を迎えようとしている事に慟哭した。

クンフーが嘆いて膝を屈しようとした時、
クンフーが目を閉じて絶望しかけたその時、

暗雲を払う様に神の声が聞こえた。

「悪かったな。新しい能力に少し手こずっていた。だが、もう安心だ」

クリエイターがそう言いながら巨大な恐竜の様な鳥に乗って従者達と共に現れるとすぐ様従者の命令を下した。

「ルベ、クンフーを守れ」

最初に命令されたのは大型の黒い鎧を来た盾と槍を持った従者だった。従者は命令を受けるとすぐ様

「かしこまりました、ご主人様。」

と一言述べてクンフーに向けて盾を構え、武装のギミックを発動した。

「冥府への門開かれて、呻く亡者が木霊する。我その声を退けて価値ある命を包み護る。亡者達よ苦悶せよ
嘆く響きに生の壁クラヴィギト・ネクロン

その従者は淡々とギミックの名称を言い、静かに解き放ったが発動したギミックは身の毛もよだつ程絶叫を挙げて自らを示した。

ルベが武装のギミックを発動させるとクンフーの周りに黒いモヤの様な塊が幾つも出現しクンフーを囲んだ。すると、そのモヤから半透明の人間の口が大量に現れてクンフーの周りを動き回った。その口は飛び出して空間を一頻り飛び回ると今までいた場所と今いる場所が違う事に気が付き、今までいた場所に戻る前に必死で悲鳴を挙げて助けを求めた。

「キィィィィアァァァァァッッ!!!」

声に鳴らぬ耳をつんざく声が辺りに響き渡り、巨竜はそれを恐れて逃げヘラクレスは耳を塞いで苦しんだ。

その様を確認したルベはクリエイターの方を向きスカートの裾を持って恭しくお辞儀をしながら

「ご主人様、ご命令を完了しました」

ルベがそう言うとクリエイターはルベの頭を撫でて

「ありがとう、良くやってくれたね」

と優しく微笑んだ。そして、ルベがそれに喜んでいると今度は聖の方を向き

「僕は側近と一緒に艦隊と竜を倒す。君はメイド達を連れてあの魔女を倒してくれるかい?」

クリエイターが優しげな表情でそう言うと、聖は

「ええ、勿論ですよ旦那様」

と聖も微笑み返し、続けて

「では行ってきますね」

と言って僕に近づき僕の肩に触れた。すると、僕も聖の肩に触れて二人は口付けをした。口付けを済ませると聖は背中に天使の様な翼を生やしてノアの方舟まで飛んでいき、メイド達もそれを追った。

聖達がノアの方舟へ向かうと僕はイカロスに対して

「では、クンフーの元まで急いでくれ」

と指示を出した。するとイカロスは

「御意に」

と返答すると全速力でクンフーの元まで飛んで行った。クンフーを包んでいた魔法陣は聖が阻止をしたようで消滅していたが、クンフーは未だ怯えていた。

クリエイターはそんなクンフーを見て、彼の肩に触れながら優しげにこう言った。

「どうしたんだ?君は僕の部下で最強のはずだ。何を覚えている」

クリエイターのその声にクンフーは目を開きクリエイターの顔を見て

「俺は怖いんだ。この力を失う事が……」

と力無くそう言った。するとクリエイターは微笑んで

「良いか良く聴くんだ。誰だって自分が今出来る事が次の瞬間出来なくなったら怖い。だから、それを深刻に考えるな。怖くて当たり前なんだよ。自分の技術や知性を失うのは自分が死ぬ事と同じだ。だが、死を恐れるな。死は常に君の隣にある。それが君達だっただろう?思い出すんだメメント・モリだと。
そうすれば覚悟が手に入る。君は覚悟を持って敵とこれまで戦ってきた。これまでと何ら変わらないさ。」

クリエイターがそう言うと、クンフーは自分が何の為に、何を思って戦ってきたかを改めて思い出し、そして、立ち上がった。

「じゃあ、僕の為に戦ってくれるかい?」

立ち上がったクンフーにクリエイターがそう言うとクンフーは強い覚悟を秘めた真剣な表情で

「ああ、任せておけ!」

と勢い良く言った。

すると、そこへ亡者の叫びから解放されたヘラクレスがクンフー目掛けて飛んできた。
それに対しクリエイターはクンフーとヘラクレスの前に異空間倉庫へのゲートを開き、その中に二人を吸い込んだ。

クンフーが異空間倉庫の中に吸い込まれる前にクリエイターは

「存分に暴れろ!」

とクンフーに対して激励した。するとクンフーは

「ああ、さっさと倒して戻る!」

と言って中に入りクリエイターはゲートを閉じた。

クンフーを送り出すと、クリエイターはイカロスとブラックアウトに

「お前達は巨竜を倒せ」

と命令を下し、二人は

「御意」 「了解」

と返事をした。すると、クリエイターは他の側近達に

「じゃあ、君達は僕と一緒に艦隊を倒そうか」

と優しく言い、自分の近くに寄せてアイタリデースの元まで転移した。

五人の従者を引き連れてアイタリデースの前に現れたクリエイターはこの煉獄に来て最初に作った服装を換装し顔に貼る札を大きく広げて顔全体を覆うようにすると従者達を下がらせて

「では君達、僕は久しぶりに一人で本気を出すから、それをよく見て勉強するんだよ?」

今まで一人で戦う時とは違い余裕のクリエイターは得意げに従者達にそう言うと従者達は尊敬の眼差しをクリエイターに向けて

「「「「「頑張ってくださいね、神様!」」」」」

とクリエイターを応援した。得意げなクリエイターに対し相対するアイタリデースは

「君が煉獄の神か、面白いわざわざ従者を引き連れてきて一人で戦うとは……
はっきり言って愚かだね」

と冷静に状況を見てそう言った。するとクリエイターは

「愚かは他人の実力をわからぬ内から過小評価する君の様な頭でっかちの事を言うんだよ。ご覧?」

とアイタリデースを嘲笑する口振りで言うと、指をパチンと鳴らした。すると、突如、アイタリデースの船団が宙に浮き上がり、巨竜を含めた船団の全ての行く手を塞ぐように辺りに巨大な竜巻を囲む様に作った。竜巻は炎と雷を纏い、船団の下の海は針山地獄の様に水面が巨大な棘で覆われていた。竜巻の下は水が押し退けてあり海底まで接していて海底の土砂を大量に上空へと引きげていた。クリエイターはそれの全てを操って様々な武器の形にすると、武器の全てに炎と雷を纏った竜巻を纏わせた。船団の上空には天を覆うほどの武器が並び、その武器の上空には巨大な太陽が下にある物を嘲笑うかの様に現れて熱線を放って竜巻の内側に入ろうとする物を焼き払う。

舞台のセッティングが終わるとクリエイターはアイタリデースを念力で中に浮かせ、彼の周りをバリアで囲むと武器を全て彼の方へと向けて彼の直ぐ上まで上昇して彼を見下しながらこう言った。

「荒ぶる大海、吹き荒ぶ嵐、険しい山脈、灼熱の炎の全てを操り、果てなく続く空間に果てなく流れる時ですら、この世の全てを支配するこの僕こそは煉獄の創造神クリエイターだ。夢々忘れる事無かれ」

クリエイターの能力を駆使した脅しにアイタリデースは恐れ慄いて声も出せずにただ考えを巡らした。
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