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第1章 辺獄妄執譚
第63話 英雄を殺す者 その2
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クンフーがエウリュトスとメレアグロスの攻撃で動きを封じられていると、メディアの魔方陣からは次々にアルゴノーツが現れた。
現れたのは、他の者と同じ様な鎧だが動物が付ける為に形が変わった鎧を来たライオンと、足の部分だけ異常にカスタムされた鎧を着た男と、他の者の持つ剣よりも明らかに精巧な作りで立派な剣を持った男が現れた。
魔方陣はまだ開いている。
「ふはははは!
いくら彼奴でもこれだけのアルゴノーツが一斉にかかれば適うまい!」
増援のアルゴノーツ達を見てイアソンは大いに喜び得意げになった。だが、メディアはそれを見て
「でも、イアソン様。この短時間で彼は五人もアルゴノーツを倒したんですよ?ヘラクレスの回復を持ってからの方が良いのでは?」
と言った。しかし、イアソンは
「いや、これで良いんだ。奴らが倒れれば倒れる程ヘラクレスは強くなる。」
と言った。だが、メディアは
「でも、彼もどんどん強くなっていっていますよ?ヘラクレスでも難しいのでは?」
と言った。それに対しイアソンは微笑んで
「大丈夫さ、何たって彼奴は武装を付けずに行くと自信満々に言い放ってボコボコにされたからな。さっきの彼奴は準備運動程も力を出してないよ。」
と言った。
クンフーは突き刺さったエウリュトスの矢をナノマシン発生装置の自動修復機能で徐々に破壊しながら放たれる矢を切り裂き続け気を待っていた。メレアグロスの炎は殆どダメージが無かった。
そこへ……
足の部分が異常にカスタムされた男がエウリュトス達がいる所から跳び上がりクンフーに向けて上空から飛び蹴りをして来た。
エウリュトスの矢は未だ放たれ続けている。
クンフーは仕方なく武装に付いているボイスレコーダーを起動させ、予め入れて置いた音声を再生した。
その音声は、魔法を覚えるのが面倒だと言ったクンフーに対してクリエイターが取り付けた補助武装の役割を果たした。あまり多く入れると即座に判断が出来なくなる為に収録されている音声は二種類。そのうちの一つは、クリエイターが近接戦闘様に作ったが本人があまり前に出て戦う事が無くなったので今まで使われなかった物だったが、その効果は今まで出てきた魔法の中でもトップクラスの性能だった。
「聴けッ!
隠れた 隠れた
唯一の神 迫害され 耐え
死んだ 犠牲として
遠き地にて餞は幸福な永久の国
旅路の果てに手にした理想を護るべく
我らの意思は幾星霜
受け継がれ、洗練され
鎖を拒む自由の日の出
此度は我が身のみを照らせ
祈るは隠し清められた神の契約」
クンフーの武装から再生されたクリエイターの詠唱が終わると突如、クンフーの背後から巨大な魔法陣が現れ、そこから放たれた突風で矢と炎そして飛び蹴りを仕掛けてきた男を吹き飛ばした。その突風は桜の花弁を纏っていた。
「うあああっ!」
飛び蹴りを仕掛けて来た男が吹き飛ばされるとエウリュトスがその巨体を活かして掴み助けた。
「悪い、助かったぞ」
飛び蹴りを仕掛けてきた男が、エウリュトスにそう言うとエウリュトスは、
「気にするな、イーピクロス。それよりまだ気を張っていろ。」
エウリュトスはそう言いながらクンフーが出した魔法陣を見ていた。
すると、突風が止んだ後甲板のそこかしこを覆う花弁から小さな魔法陣が現れた。魔法陣同士は共鳴しあい、つむじ風を起こして宙を再び舞い始めた。舞い散る花弁は徐々に大樹の様な形を作り、クンフーの魔法陣から直線を道を作るようにノアの方舟の側面に氷で出来た桜の木が数十本生えた。しかし、その木には花が無く枯れ木の様な状態だった。
桜並木が出来上がると、クンフーは剣を強く握り締め並木の中央の道を高速で走った。
先程奪った聖遺物の効果でクンフーは思った以上に速度が出た。高速で動いたクンフーに最早反応出来る者はいないと思いきや
「遅いんだよ雑魚が!」
そう言って突如イーピクロスが高速でクンフーに飛び蹴りを放った。クンフーはそれに対し剣でイーピクロスの足を斬り裂いた。
だが、イーピクロスの体は剣とクンフーの体を通過してクンフーの背後に回った。そして、クンフーの背中を思い切り蹴り飛ばした。
「ぐっ!」
だが、クンフーは強く地面を踏みしめてそれを耐え背後にいるイーピクロスを斬り裂いた。だが、クンフーの攻撃をイーピクロスは通過して背後に回り後頭部を強く殴りつけた。
クンフーは何故イーピクロスに剣が効かないかを考え、大したアイデアが思い付かなかったので自分の出せる最高速度に挑戦し、その速さで手当たり次第に自分の周りを攻撃しようと考えた。
「はっ!そんなスピードじゃ俺は倒せないぞ!」
イーピクロスがクンフーを挑発すると、クンフーは考えを実行に移した。
クンフーの最高速度でイーピクロスの周りでは無く、自分の周りを手当たり次第に切り裂くとイーピクロスが見える場所とはまるで違う場所に手応えを覚え、そこを滅多刺しにした。
すると、前に見えていたイーピクロスは消え、手応えがあった場所にミンチになったイーピクロスの死体があった。
エウリュトス達はそれを見て驚き、急いで攻撃を仕掛けた。
だが、イーピクロスは速く動きすぎてあまり効果が無かったが、アルゴノーツ達の動きが明らかに鈍くなった。
「なんだ、これは!」
エウリュトスが驚くと、桜並木の桜が桃色と言うよりは凄く薄い紫色をした花を付け始めた。
それを恐れたメレアグロスは鎧を着たライオンと共にクンフーの元に走った。
「行くぞ、ペリクリュメノス!奴の魔術が発動仕切る前に奴を倒す!」
メレアグロスが炎を纏った状態で飛び上がり勇ましく言うと、ライオンは
「ああ、そうだなメレアグロス、彼奴は危険だ!」
と言い、黄金の粒子を身に纏った。すると、体が鈍くなる効果が格段に薄れたので
「皆、聖遺物の力を身に纏え!」
と叫んだ。ペリクリュメノスの呼び掛けに応じ全員黄金の粒子を纏うと、メレアグロスは黄金の炎をクンフーに向かって放った。
だが、クンフーはそれを正拳突きで吹き飛ばし、高速でメレアグロスに近づいてメレアグロスを斬り裂いた。
「ぐあああああ!」
炎の状態のメレアグロスが一刀両断され、半分になった生身の死体が甲板に落下した。
「メレアグロス!」
エウリュトスがそれを見ると黄金の矢でクンフーを撃ち抜こうとした。
だが、クンフーはそれを剣で切り裂き全く速度を緩めずに近くにいたペリクリュメノスの首を両断した。
ライオンの首を落としクンフーがペリクリュメノスを殺したと思ったが、首が離れた途端ライオンの首は大蛇となってクンフーに巻きついた。大蛇はクンフーの首に噛み付いたがクンフーには通じず、クンフーはペリクリュメノスを掴んで引きちぎり今度こそ絶命させた。
ペリクリュメノスを殺すとクンフーはエウリュトスに向かって走った。エウリュトスはそれに対し黄金の矢を速射して迎撃しようとするがクンフーは矢を切り裂きながら突進してくる。そこで
「ペーレウス、頼む!」
と叫んだ。すると立派な剣を持った男が前に出てきて
「任せとけ!このペーレウスに敵無し!」
と叫び聖遺物の力を解放した。ペーレウスが聖遺物の力を解放すると今までの誰よりも大量の黄金の粒子が放出されペーレウスの体と剣に黄金の粒子が纏い大量に出てきた黄金の粒子が全て凝縮された形になった。
それを見たクンフーはほくそ笑み
「敵無しだと?本当か試してやる!」
と大喜びでペーレウスに向かって走って行った。クンフーは全速力でペーレウスに斬りかかった。ペーレウスはそれを全力で受け止め、二人の剣がぶつかると衝撃波が起こった。
衝撃で二人とも吹き飛ぶかと思いきや両者一歩も引かずに初撃と同程度の威力の打ち合いを続けた。打ち合いが続くと最初は両者拮抗していたが徐々にペーレウスが押し始めクンフーの左肩を斬り裂いた。
「どうだ?敵は無いだろ?」
ペーレウスはそう言うと、そのままクンフーの足を踏みつけてクンフーを固定しクンフーの頭に頭突きをした後怯んだクンフーを横一閃して上半身と下半身を分けた。
「がはッ!」
クンフーがそれに倒れるとエウリュトスはクンフーの両足を動けぬように矢で撃ち抜いた。
更にペーレウスはクンフーの上半身をもう半分に分けようと思い切り剣を振り下ろした。
「クソッ!」
クンフーはペーレウスの一撃を左手を伸ばして止めようとした。しかし、素手でペーレウスの剣は止まらず、ペーレウスの剣はクンフーの左手を割いた。
「ぐあああああああああッ!」
クンフーは左手を割かれ悲鳴を挙げたが、何とか体を両断されずに済んだ。それに対しペーレウスは
「どうした!その程度で終わりか!」
とクンフーを挑発した。すると、クンフーは
「終わるわけ無いだろ、ふざけんな!足が治るの待ってんだよ!」
と叫んだ。するとクンフーの上半身から新たに下半身が生えクンフーは立ち上がり、油断していたペーレウスの首に下から剣を突き立てた。
「舐めてかかるからこうなるんだよ!終わりだ!」
クンフーがそう言ってペーレウスの首に剣を突き刺そうとした時、ペーレウスはクンフーの膝を蹴り体勢を崩して剣の軌道を逸らしてそのままクンフーを蹴り上げた。
「ぐはッ!
うああああああああ!」
ペーレウスに蹴りあげられるとクンフーは何と宙に向かって吹き飛んだ。
「エウリュトス、今だ!」
クンフーを吹き飛ばすとペーレウスはエウリュトスに合図し
「よし、これなら行けるぞ!」
とエウリュトスは黄金の粒子を最大限に放出し一本の矢にそれを全て収束させると、クンフーに向かって放った。
黄金の矢はクンフーに向かって勢い良く飛んで行き空中で身動きが取れないクンフーに突き刺さった。矢はクンフーに突き刺さると内側に収束された黄金の粒子を爆発的な勢いで放出しクンフーの体を粉微塵に吹き飛ばした。
「やったぞペーレウス!」
エウリュトスが吹き飛んだクンフーを見て喜ぶと、ペーレウスも
「何、楽勝、楽勝!」
と喜んだ。
だが、二人が喜んだのもつかの間。
クンフーの体が吹き飛ぶと、既に満開の状態になっていた桜並木の花弁が一斉に散り始め再びつむじ風で集まり始めた。
しかし、今度は木の形ではなく人型に集まり薄紫色の花弁は紫色に輝くクンフーの武装に変わった。クンフーの武装の形に花弁が集まると紫色の輝きが段々背中に集約され始め、体の色は青みがかった銀色にそして背中には深紅に輝く太陽の紋章が現れた。
エウリュトスとペーレウスはそれに驚くとクンフーは
「驚いたか?この桜がある限り俺は不滅だ!」
と叫び高速で動いてエウリュトスを手刀で突き殺そうとした。
「あっぶねえ!」
しかし、それをペーレウスに止められた。先程まではペーレウスの剣で切り裂かれていたクンフーの武装だったが、今度は傷も付かなかった事にペーレウスは驚き
「お前、何をした!」
と叫んだ。するとクンフーは
「クリエイターに説明されたが、忘れちまったよ。」
と言ってペーレウスを殴り付けた。すると、ペーレウスの鎧が一撃で砕け後方に吹き飛んだ。
「ぐあッ!」
クンフーはペーレウスが吹き飛ぶと直ぐ様追撃し、クンフーの胸に手刀を突き刺して心臓を抉り出して殺した。
「ペーレウス!」
エウリュトスは急いでクンフーに矢を放ったがクンフーはペーレウスの体に腕を突き刺したまま持ち上げ、それを盾にしてエウリュトスに突進し、エウリュトスのアキレス腱を手刀で切って膝を付かせた。
「うああああああッ!」
エウリュトスが足の痛みに悲鳴を挙げて踞ると、クンフーはペーレウスの死体を下ろし、腕を引き抜くと、死体から剣を奪い取ってエウリュトスの首を切り落とした。
「あああああああああああッ!」
エウリュトスが断末魔を挙げて絶命すると、クンフーは辺りに転がっている死体から聖遺物を剥ぎ取って回った。
イアソンはその姿を見て
「ええい!ヘラクレスと奴を治療しているアスクレーピオス以外全てのアルゴノーツを奴にけしかけろ!」
と叫んだ。するとメディアは
「あの……イアソン様、大丈夫なんですよね?」
と困った様に言った。するとイアソンは
「大丈夫だ!ヘラクレスが奴を倒す!」
と自信満々で豪語した後、続けて
「そうだメディア!お前が使役する龍も出せ!」
と言った。するとメディアは
「ああ、女神ヘカテーよ、どうかイアソン様がやけになっている訳ではありませんように……」
と呟いて、全てイアソンの言う通りにした。
現れたのは、他の者と同じ様な鎧だが動物が付ける為に形が変わった鎧を来たライオンと、足の部分だけ異常にカスタムされた鎧を着た男と、他の者の持つ剣よりも明らかに精巧な作りで立派な剣を持った男が現れた。
魔方陣はまだ開いている。
「ふはははは!
いくら彼奴でもこれだけのアルゴノーツが一斉にかかれば適うまい!」
増援のアルゴノーツ達を見てイアソンは大いに喜び得意げになった。だが、メディアはそれを見て
「でも、イアソン様。この短時間で彼は五人もアルゴノーツを倒したんですよ?ヘラクレスの回復を持ってからの方が良いのでは?」
と言った。しかし、イアソンは
「いや、これで良いんだ。奴らが倒れれば倒れる程ヘラクレスは強くなる。」
と言った。だが、メディアは
「でも、彼もどんどん強くなっていっていますよ?ヘラクレスでも難しいのでは?」
と言った。それに対しイアソンは微笑んで
「大丈夫さ、何たって彼奴は武装を付けずに行くと自信満々に言い放ってボコボコにされたからな。さっきの彼奴は準備運動程も力を出してないよ。」
と言った。
クンフーは突き刺さったエウリュトスの矢をナノマシン発生装置の自動修復機能で徐々に破壊しながら放たれる矢を切り裂き続け気を待っていた。メレアグロスの炎は殆どダメージが無かった。
そこへ……
足の部分が異常にカスタムされた男がエウリュトス達がいる所から跳び上がりクンフーに向けて上空から飛び蹴りをして来た。
エウリュトスの矢は未だ放たれ続けている。
クンフーは仕方なく武装に付いているボイスレコーダーを起動させ、予め入れて置いた音声を再生した。
その音声は、魔法を覚えるのが面倒だと言ったクンフーに対してクリエイターが取り付けた補助武装の役割を果たした。あまり多く入れると即座に判断が出来なくなる為に収録されている音声は二種類。そのうちの一つは、クリエイターが近接戦闘様に作ったが本人があまり前に出て戦う事が無くなったので今まで使われなかった物だったが、その効果は今まで出てきた魔法の中でもトップクラスの性能だった。
「聴けッ!
隠れた 隠れた
唯一の神 迫害され 耐え
死んだ 犠牲として
遠き地にて餞は幸福な永久の国
旅路の果てに手にした理想を護るべく
我らの意思は幾星霜
受け継がれ、洗練され
鎖を拒む自由の日の出
此度は我が身のみを照らせ
祈るは隠し清められた神の契約」
クンフーの武装から再生されたクリエイターの詠唱が終わると突如、クンフーの背後から巨大な魔法陣が現れ、そこから放たれた突風で矢と炎そして飛び蹴りを仕掛けてきた男を吹き飛ばした。その突風は桜の花弁を纏っていた。
「うあああっ!」
飛び蹴りを仕掛けて来た男が吹き飛ばされるとエウリュトスがその巨体を活かして掴み助けた。
「悪い、助かったぞ」
飛び蹴りを仕掛けてきた男が、エウリュトスにそう言うとエウリュトスは、
「気にするな、イーピクロス。それよりまだ気を張っていろ。」
エウリュトスはそう言いながらクンフーが出した魔法陣を見ていた。
すると、突風が止んだ後甲板のそこかしこを覆う花弁から小さな魔法陣が現れた。魔法陣同士は共鳴しあい、つむじ風を起こして宙を再び舞い始めた。舞い散る花弁は徐々に大樹の様な形を作り、クンフーの魔法陣から直線を道を作るようにノアの方舟の側面に氷で出来た桜の木が数十本生えた。しかし、その木には花が無く枯れ木の様な状態だった。
桜並木が出来上がると、クンフーは剣を強く握り締め並木の中央の道を高速で走った。
先程奪った聖遺物の効果でクンフーは思った以上に速度が出た。高速で動いたクンフーに最早反応出来る者はいないと思いきや
「遅いんだよ雑魚が!」
そう言って突如イーピクロスが高速でクンフーに飛び蹴りを放った。クンフーはそれに対し剣でイーピクロスの足を斬り裂いた。
だが、イーピクロスの体は剣とクンフーの体を通過してクンフーの背後に回った。そして、クンフーの背中を思い切り蹴り飛ばした。
「ぐっ!」
だが、クンフーは強く地面を踏みしめてそれを耐え背後にいるイーピクロスを斬り裂いた。だが、クンフーの攻撃をイーピクロスは通過して背後に回り後頭部を強く殴りつけた。
クンフーは何故イーピクロスに剣が効かないかを考え、大したアイデアが思い付かなかったので自分の出せる最高速度に挑戦し、その速さで手当たり次第に自分の周りを攻撃しようと考えた。
「はっ!そんなスピードじゃ俺は倒せないぞ!」
イーピクロスがクンフーを挑発すると、クンフーは考えを実行に移した。
クンフーの最高速度でイーピクロスの周りでは無く、自分の周りを手当たり次第に切り裂くとイーピクロスが見える場所とはまるで違う場所に手応えを覚え、そこを滅多刺しにした。
すると、前に見えていたイーピクロスは消え、手応えがあった場所にミンチになったイーピクロスの死体があった。
エウリュトス達はそれを見て驚き、急いで攻撃を仕掛けた。
だが、イーピクロスは速く動きすぎてあまり効果が無かったが、アルゴノーツ達の動きが明らかに鈍くなった。
「なんだ、これは!」
エウリュトスが驚くと、桜並木の桜が桃色と言うよりは凄く薄い紫色をした花を付け始めた。
それを恐れたメレアグロスは鎧を着たライオンと共にクンフーの元に走った。
「行くぞ、ペリクリュメノス!奴の魔術が発動仕切る前に奴を倒す!」
メレアグロスが炎を纏った状態で飛び上がり勇ましく言うと、ライオンは
「ああ、そうだなメレアグロス、彼奴は危険だ!」
と言い、黄金の粒子を身に纏った。すると、体が鈍くなる効果が格段に薄れたので
「皆、聖遺物の力を身に纏え!」
と叫んだ。ペリクリュメノスの呼び掛けに応じ全員黄金の粒子を纏うと、メレアグロスは黄金の炎をクンフーに向かって放った。
だが、クンフーはそれを正拳突きで吹き飛ばし、高速でメレアグロスに近づいてメレアグロスを斬り裂いた。
「ぐあああああ!」
炎の状態のメレアグロスが一刀両断され、半分になった生身の死体が甲板に落下した。
「メレアグロス!」
エウリュトスがそれを見ると黄金の矢でクンフーを撃ち抜こうとした。
だが、クンフーはそれを剣で切り裂き全く速度を緩めずに近くにいたペリクリュメノスの首を両断した。
ライオンの首を落としクンフーがペリクリュメノスを殺したと思ったが、首が離れた途端ライオンの首は大蛇となってクンフーに巻きついた。大蛇はクンフーの首に噛み付いたがクンフーには通じず、クンフーはペリクリュメノスを掴んで引きちぎり今度こそ絶命させた。
ペリクリュメノスを殺すとクンフーはエウリュトスに向かって走った。エウリュトスはそれに対し黄金の矢を速射して迎撃しようとするがクンフーは矢を切り裂きながら突進してくる。そこで
「ペーレウス、頼む!」
と叫んだ。すると立派な剣を持った男が前に出てきて
「任せとけ!このペーレウスに敵無し!」
と叫び聖遺物の力を解放した。ペーレウスが聖遺物の力を解放すると今までの誰よりも大量の黄金の粒子が放出されペーレウスの体と剣に黄金の粒子が纏い大量に出てきた黄金の粒子が全て凝縮された形になった。
それを見たクンフーはほくそ笑み
「敵無しだと?本当か試してやる!」
と大喜びでペーレウスに向かって走って行った。クンフーは全速力でペーレウスに斬りかかった。ペーレウスはそれを全力で受け止め、二人の剣がぶつかると衝撃波が起こった。
衝撃で二人とも吹き飛ぶかと思いきや両者一歩も引かずに初撃と同程度の威力の打ち合いを続けた。打ち合いが続くと最初は両者拮抗していたが徐々にペーレウスが押し始めクンフーの左肩を斬り裂いた。
「どうだ?敵は無いだろ?」
ペーレウスはそう言うと、そのままクンフーの足を踏みつけてクンフーを固定しクンフーの頭に頭突きをした後怯んだクンフーを横一閃して上半身と下半身を分けた。
「がはッ!」
クンフーがそれに倒れるとエウリュトスはクンフーの両足を動けぬように矢で撃ち抜いた。
更にペーレウスはクンフーの上半身をもう半分に分けようと思い切り剣を振り下ろした。
「クソッ!」
クンフーはペーレウスの一撃を左手を伸ばして止めようとした。しかし、素手でペーレウスの剣は止まらず、ペーレウスの剣はクンフーの左手を割いた。
「ぐあああああああああッ!」
クンフーは左手を割かれ悲鳴を挙げたが、何とか体を両断されずに済んだ。それに対しペーレウスは
「どうした!その程度で終わりか!」
とクンフーを挑発した。すると、クンフーは
「終わるわけ無いだろ、ふざけんな!足が治るの待ってんだよ!」
と叫んだ。するとクンフーの上半身から新たに下半身が生えクンフーは立ち上がり、油断していたペーレウスの首に下から剣を突き立てた。
「舐めてかかるからこうなるんだよ!終わりだ!」
クンフーがそう言ってペーレウスの首に剣を突き刺そうとした時、ペーレウスはクンフーの膝を蹴り体勢を崩して剣の軌道を逸らしてそのままクンフーを蹴り上げた。
「ぐはッ!
うああああああああ!」
ペーレウスに蹴りあげられるとクンフーは何と宙に向かって吹き飛んだ。
「エウリュトス、今だ!」
クンフーを吹き飛ばすとペーレウスはエウリュトスに合図し
「よし、これなら行けるぞ!」
とエウリュトスは黄金の粒子を最大限に放出し一本の矢にそれを全て収束させると、クンフーに向かって放った。
黄金の矢はクンフーに向かって勢い良く飛んで行き空中で身動きが取れないクンフーに突き刺さった。矢はクンフーに突き刺さると内側に収束された黄金の粒子を爆発的な勢いで放出しクンフーの体を粉微塵に吹き飛ばした。
「やったぞペーレウス!」
エウリュトスが吹き飛んだクンフーを見て喜ぶと、ペーレウスも
「何、楽勝、楽勝!」
と喜んだ。
だが、二人が喜んだのもつかの間。
クンフーの体が吹き飛ぶと、既に満開の状態になっていた桜並木の花弁が一斉に散り始め再びつむじ風で集まり始めた。
しかし、今度は木の形ではなく人型に集まり薄紫色の花弁は紫色に輝くクンフーの武装に変わった。クンフーの武装の形に花弁が集まると紫色の輝きが段々背中に集約され始め、体の色は青みがかった銀色にそして背中には深紅に輝く太陽の紋章が現れた。
エウリュトスとペーレウスはそれに驚くとクンフーは
「驚いたか?この桜がある限り俺は不滅だ!」
と叫び高速で動いてエウリュトスを手刀で突き殺そうとした。
「あっぶねえ!」
しかし、それをペーレウスに止められた。先程まではペーレウスの剣で切り裂かれていたクンフーの武装だったが、今度は傷も付かなかった事にペーレウスは驚き
「お前、何をした!」
と叫んだ。するとクンフーは
「クリエイターに説明されたが、忘れちまったよ。」
と言ってペーレウスを殴り付けた。すると、ペーレウスの鎧が一撃で砕け後方に吹き飛んだ。
「ぐあッ!」
クンフーはペーレウスが吹き飛ぶと直ぐ様追撃し、クンフーの胸に手刀を突き刺して心臓を抉り出して殺した。
「ペーレウス!」
エウリュトスは急いでクンフーに矢を放ったがクンフーはペーレウスの体に腕を突き刺したまま持ち上げ、それを盾にしてエウリュトスに突進し、エウリュトスのアキレス腱を手刀で切って膝を付かせた。
「うああああああッ!」
エウリュトスが足の痛みに悲鳴を挙げて踞ると、クンフーはペーレウスの死体を下ろし、腕を引き抜くと、死体から剣を奪い取ってエウリュトスの首を切り落とした。
「あああああああああああッ!」
エウリュトスが断末魔を挙げて絶命すると、クンフーは辺りに転がっている死体から聖遺物を剥ぎ取って回った。
イアソンはその姿を見て
「ええい!ヘラクレスと奴を治療しているアスクレーピオス以外全てのアルゴノーツを奴にけしかけろ!」
と叫んだ。するとメディアは
「あの……イアソン様、大丈夫なんですよね?」
と困った様に言った。するとイアソンは
「大丈夫だ!ヘラクレスが奴を倒す!」
と自信満々で豪語した後、続けて
「そうだメディア!お前が使役する龍も出せ!」
と言った。するとメディアは
「ああ、女神ヘカテーよ、どうかイアソン様がやけになっている訳ではありませんように……」
と呟いて、全てイアソンの言う通りにした。
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時々、シリアスですがハッピーエンドになる予定。
※カクヨムやなろうでも連載しています(なろう先行)作:皐月乃 彩月
システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
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はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
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色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
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※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
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