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第1章 辺獄妄執譚

第49話 無敵を誇る蒼き狼

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皆がホバーバイクに乗ってそれぞれの戦艦に向かった後、

ピキニ・カイカイは、咲と共に目的の船に向かって行った。その時ピキニ・カイカイは、八体のシェイプシフターを翼にして背中につけており、咲はピキニ・カイカイの前に座っていた。

「本当にこんな作戦で良いのかい?
普通に行っても良いんだよ?」

来る直前に咲が言った作戦に対し、ピキニ・カイカイは心配そうにそう言うと、咲は

「大丈夫、大丈夫~
聡は、私の援護をお願い!」

と、言うとピキニ・カイカイは、バイクから降りて飛び上がり、ホバーバイクに薬品の瓶を大量に乗せて

「じゃあ、任せたよ」

と、優しく良い、それに対し咲は

「任せて~」

と、言いながら変身した。

ピキニ・カイカイが降りると下にいる敵は咲が迫るのを見て集団で集まり、アサルトライフル型のレーザー銃を咲に向けた。
すると、咲はホバーバイクのスピードをあげて敵の弾を無視し、集団の中心にバイクで突っ込んだ。

咲の乗ったバイクが甲板に衝突すると、バイクに乗った薬品の瓶がいっせいに割れて凄まじい爆発が起こった。船の甲板にいた乗り組み員の殆どが爆風に巻き込まれて消滅し、その爆風の中から咲が他の肉塊にブチブチと穴を開けながら空中で肉塊を生成し復活した。

「ふ~
これで粗方片付いたかな~」

咲が、ゴキゴキと首の骨を軽く曲げながら言うと生き残った兵士達が一斉に咲に向かって銃口を向けた。すると、咲はその兵士達ににっこりと優しく微笑んだ。
咲の笑顔を見た兵士達は、恐怖に震え始めその場で固まった。すると、咲は尋常ではない身体能力で兵士との距離を詰め、一人、また一人と殺して行った。

そんな咲を見たピキニ・カイカイは上空で、

「やれやれ、あの調子じゃ直ぐに終わるな」

と、咲の強さに呆れていた。

咲が、敵を倒しきるとピキニ・カイカイに手を振って喜んでいた。ピキニ・カイカイはそれを見て手を振り返すと、突如見えた咲を狙う弓矢に驚き、叫んだ。

「咲、後ろだ!」

ピキニ・カイカイが、そう言うと咲は余裕の表情で矢を掴み、後ろにいる敵に投げ返した。咲が投げた矢は黄金の粒子を纏い、巨大な光の矢になって高速で弓を持った男に迫った。だが、弓を持った男はそれを煌々と紅く輝くシャムシールで弾いた。

男は、蒼い狼の模様をあしらった黒いデールを来て、足には軍用のブーツを履き、腕には軍人の使う合成素材の革手袋をつけ、頭には他の兵士が被っている様な生物味のあるSF仕様の兜を被っていた。

男は、矢を弾くと咲を見て

「なんだこの怪物は、煉獄の海にはこんな化け物がいるのか?」

と、呟いた。すると、咲はそれに怒り

「もう!
なんでみんな怪物って言うの!
可愛い女の子だよ!」

と、言いながら力強く地面を蹴り、男との距離を急激に詰め、男の腹に思い切りパンチを繰り出そうとした。

だが、男はそれを知っていたかの様に攻撃を避け、シャムシールで咲の背中を切りつけた。

だが、咲はその程度の攻撃ではビクともせずに、男の足を思い切り殴った。

男は、足にもろに攻撃をくらったが、体が鋼鉄の様に硬くそこまでの痛手では無かった。

男は、咲に攻撃を当てられると怒り自分の影で咲を捕え、動きを止めると咲の首を切り落とした。

「ふははははッ!
怪物め!
なかなかやるが、儂の敵では無いわ!」

男が、そう言って咲の頭を掴んで戦利品を眺めると、咲は口から強力な酸を吐いて男の顔にかけた。

すると、男は顔を抑えながら悶絶し床の上でのたうち回った。

咲は、その間に首無しの体をトコトコと可愛く歩かせて悶絶する男の腕を殴り、顔を取り上げて首の上に置くと体を再生させ、男の胴体に強力な酸を唾を吐きつける様にして吐きかけ、そのまま男のひっくり返った男の背中を蹴り続けた。

「ぐあああああああッ!」

男があまりの激痛に悲鳴を挙げると咲は、

「これで、わかった?
女の子を怪物呼ばわりすると酷い目に会うんだよ!」

と、怒った。すると、男は顔を抑えながら立ち上がり、手の隙間から咲を睨みつけ

「己ェッ!怪物め!
良くもこのチンギス・ハーンをこんな目に合わせたな!絶対に叩き殺してくれる!」

と言うと能力を使い、咲の手足を捻ってバキバキと音をたてながら、反対向きにした。

そして、シャムシールを拾い上げ雷を纏わせると振り上げて、咲に向かって振り下ろし咲に稲妻を浴びせた。

「あああああああっ!」

咲が、あまりの痛みに耐えかねて悲鳴を挙げると、上空からハーンに向かってシェイプシフター二匹落ちてきた。

「なんだ此奴は!
また化け物か!」

そう言って、ハーンはシェイプシフターに切りかかると、シェイプシフターはハーンの体を包み込み始めた。すると、ハーンはそれに警戒し霧になってシェイプシフターを避けて咲の背後に現れ、咲を掴むと

「見ろ!
お前の仲間がどうなってもいいのか!」

と、シェイプシフターに向かって叫んだ。
すると、ハーンの背後から気配もせずに短剣がハーンに迫った。ハーンはそれを能力で悟り避けるとそこをシェイプシフターが硬化させた体の一部を触手の様に伸ばしハーンを突き刺そうとした。

ハーンはそれをシャムシールで切り裂き、シェイプシフター本体も切り裂くと、船の外に波を起こして周囲を囲み、辺り一面に稲妻を放った。

だが、シェイプシフターで身を包んだピキニ・カイカイには通用せずに、ライズクラールハイトを発動させたままハーンに近づき、先端を槍の様に鋭くし硬化させたシェイプシフターを触手の様に伸ばしハーンを攻撃した。

咲は、それに乗じてハーンの腕を殴り、解放されると、そのまま飛び降りてハーンの膝を殴りつけた。

周囲を攻撃で囲まれたハーンは、能力で空を飛び、上空からピキニ・カイカイを弓矢で射抜いた。

「うああああッ!」

ピキニ・カイカイはシェイプシフターで守られていたが、矢が貫通し右肩を貫かれた。
さらに、上空から能力で咲の体をベキベキと曲げて球状にし、稲妻を纏った弓矢で撃った。

「あがッ!
あああああああッ!」

下にいる敵が二人とも悲鳴を挙げると、ハーンは波で二人を飲み込み、二人を海中に沈めた。二人は、必死で藻掻いたが海中で泥に捕まり動きを封じられると、そのまま海底まで引きずり込まれた。

自分の船だけを海上に浮かび上がらせて、ハーンはそこに降りると高笑いしながら

「ふはははははッ!
誰もこの儂の配下が使った能力を得る能力には適わないぞ!」

ハーンが、高笑いをして満足しているとハーンはこれから起こる事を能力で悟り、上空へ飛び上がった。

ハーンが上空に飛び上がると、戦艦の怒りが船底から船を突き破り、甲板まで飛び出して来て、甲板の上をめちゃくちゃに破壊して回った。

錨は、船が沈没し始めるまで暴れると、錨は、船の残骸と共にハーンに迫った。

ハーンが、それに対し波を起こして動きを止めようとしたが、錨と船の残骸はそのまま突き進んできた。そこでハーンは稲妻を周囲に放ち、船の残骸を吹き飛ばすと、錨をシャムシールで斬り裂いた。

ハーンが、そに満足すると切れた錨は流体となりハーンを捕えた。

ハーンはそれに焦り、脱出を試みようと考えたその瞬間

「我が敵を包む金属よ
内部を急激に酸化させ、敵の酸素を奪え!」

と、声がしハーンが驚くと、その声の言う通りに酸素が突如消え、呼吸が出来なくなる。

それにハーンが驚くと、声は続けて

「聴けッ!
早春に吹く冷たい風は、
見放されたと過ぎ去り嘆き、
これが真実と受け止める
強く根付いた
小さな君は
アドニスの鮮血で花開く
誤ちの想いよ
今こそ
待ち焦がれた抱擁を
たとえ残酷な運命の悪戯だとしてもアイス・ブルーム  シューン・ライン・デ・リーベ

と魔法を放ち、金属の周りを氷のアネモネの花で覆った。さらに、続けて

「聴けッ!
厳格な意思の天才は
己の誠実さの証明に
煌々と光る刀剣を
眼前の敵に突き刺して
高らかに叫ぶは
ただ一つ
忍耐強く待ち望んだ
無謬の勝利ッ!
鬨を挙げるは、真なる英傑フランメ・ブルーメ ジーク・ハイル

と、叫んだ。
すると、巨大な炎のグラジオラスの花が剣の様に金属の塊に突き刺さり、男を焼いた。

あまりの業火に金属が蒸発し勝ち誇った顔でマイスターが姿を現した。

「はっ!
やはり、私は無敵だな
かなり、強力な相手だったようだが、このとおり木っ端微塵だ」

と、意気揚々と言っていると、マイスターの背後に霧が集まり、マイスターの体を球場に丸めた。

マイスターは、声を挙げる前に声を挙げられる体の形では無くなり、そのまま海に落とされた。

「はあ、はあ、こんな物では私には敵わぬ
ははははは!
ふはははははははは!」

全てが破壊された海上でハーンは、一人勝利を喜んだ。
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