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第1章 辺獄妄執譚
第48話 怪物フランケンシュタイン
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肉体を奪われ殺されたキング・メイソンは、屋敷の復活場所で己の不甲斐なさと、敵の凶悪さに嘆いた。
「クソッ!
俺は未だ何も出来ない!
彼奴が仲間達全員を殺すのを黙って見ている事しか出来ない!
俺は無力だ!」
膝をついて床を殴りながら涙するキング・メイソンは、真に絶望していた。
クリエイターは、そんなキング・メイソンを見て、仲間達がその怪物に襲われる様を想像し、恐怖に膝が笑い始めた。そんなクリエイターを聖は、クリエイターの右手を強く握る事で安心させながら、クリエイターの耳元に口を当てて
「大丈夫ですよ、旦那様
貴方は、誰にでも勝てる力を持っています。
だから、怯えないで仲間を勇気づけてあげてください」
と、言うとクリエイターは唾を飲み込み、大きく息を吸い込んでキング・メイソンに言った。
「君は、常に仲間の事を考えていた。君達、いや、僕らの絆は生前の社会では考えられない程に強固な物だ。なのに、それなのに君はその力を使おうとせず、己の力のみを高め仲間を救おうとする。それは、君の強欲だ。
君は、僕の元でそれを贖わなければならない
いつまでも挫けているな!
立って戦え!
それが、君が神に出来る唯一の贖いだ。」
僕が力強くそう言うと、キング・メイソンは、顔を上げ僕の方を見た。すると、僕の自信に満ちた表情を見て、顔を拭いて微笑むと、立ち上がって僕に尋ねた。
「だが、俺は敵に体だけでなく、猛威を振るう鎚の王も奪われた。俺にはもう武器が無いぞ?それに生物である以上奴には敵わない。さて、どうすれば良い?」
と、クリエイターに対して、堂々と開き直って対処方を尋ねると、クリエイターは、微笑んでキング・メイソンの右肩に触れこう言った。
「はははっ!
君は、僕の最強の装備を授かって尚、更なる力を求めるのか」
クリエイターが、そう言うとキング・メイソンは、微笑んで
「ああ、俺は強欲だからな」
と、言った。すると、キング・メイソンの右肩から五体を地に伏せて嘆く者の紋様が浮かび上がった。すると、キング・メイソンの体はみるみる変化していき、肉体がウルツァイト窒化ホウ素へと変化した。
「それで、君はもう生物では無い。奴もその体は奪えない。そして、君には更にこれを与えよう。前の体では操れなかった僕が作った新たな肉体だ」
クリエイターは、そう言うと異空間倉庫から、3m程の大きさの赤土色をした鉱物で出来た巨人の骨の様な体を取り出した。
キング・メイソンは、それを与えられ巨人の骨に触れると、キング・メイソンの体が骨の中の吸収される様に消え、変わり骨から黒いモヤの様な物が溢れ出て骨に肉体を与えて漆黒のコールタールの様な粘性を持った見た目だが、しっかりと肉体を保っている顔の無い人形の様な姿へと変わった。すると、それを見たクリエイターは、
「その姿は君の強欲さの象徴だ。その醜い体こそ僕が君に与える戒めだ。その力を持って己の罪を贖えッ!」
と言うと、グラスホッパーを呼び出しキング・メイソンを元いた船へと送った。
船に戻ったキング・メイソンは体から、体を構成している物と同じ材料で大剣を作り出し手に持つと、誰もいないクジラの背中で一人、魔法を叫ぶ。
「聴けッ!
厳格な意思の天才は
己の誠実さの証明に
煌々と光る刀剣を
眼前の敵に突き刺して
高らかに叫ぶは
ただ一つ
忍耐強く待ち望んだ
無謬の勝利ッ!
鬨を挙げるは、真なる英傑」
キング・メイソンが、魔法を唱えると目の前にグラジオラスの花の形の炎の剣が現れた。キング・メイソンは、それを確認すると、続けて魔法を唱える。
「聴けッ!
歴史に名高い兵士達
語り継がれる英雄譚
それに付随する数多の名工の妙技を此処に
鎚ふる匠は永遠に」
炎の剣が振り下ろされようとした時、キング・メイソンの魔法によって出現した黒い魔方陣が現れ、それにキング・メイソンが手に持った剣を放り込み、その放り込まれた魔法陣に炎の剣がぶつかると、黒い魔法陣から火花が散り、一振の黒い物質を中心に炎が刀剣の形で揺れる大剣となった。キング・メイソンは、それを手に取るとクジラの背中に空いた穴に向かって叫んだ。
「そこにいるのはわかっているぞ!
姿を現せッアダム!
貴様が奪った俺の肉体ごと塵に変えてやる!」
キング・メイソンが、そう言い放つとクジラの穴から、猛威を振るう鎚の王を灰色と緑に塗り替え、腰についたベルトの装備を全てSF仕様の武装に変えたアダムが現れた。
「うわ~、君さっき来たのと同じ人?
ぜんっぜん見た目違うね~
でも、カッコイイ!
ねえ、その体も僕に頂戴よ!」
アダムは、そう言うと穂先が五本に別れた槍を持ってキング・メイソンに迫った。
キング・メイソンは、それを剣で受け止め凄まじい脚力でアダムを押すと、槍を払ってアダムの右肩から左脇腹を切りつけた。
だが、切りつけられたアダムは、自慢げな顔をして
「父さんが言ってたよ~
この武装は、炎なんかじゃ傷つけられないって!それは、君が一番良く知っているでしょう?」
と、言ったが、キング・メイソンに切りつけられた部分に切り込みが入った。アダムは、それに驚き
「うそ!?
なんで?」
と、言ったそれに対し、キング・メイソンは、
「確かにその武装は炎では切れない、だがなこの剣の刃は炎では無く、この黒い物質だ!
この物質は、どの物質と触れてもその物質からガンマ線を放射させ、その物質のエネルギーを吸収する!つまりは、この物質にどんな物質をも削り取る力があるんだ!
ウルツァイト窒化ホウ素を用いたとしてもこの物質の前では無意味としれ!」
キング・メイソンが、そう言うと猛威を振るう鎚の王の切り口から熱波が吹き出して、アダムの体の表面を焼いた。
「うあああああっ!
熱い!痛いよー!
なんで、なんで炎が!」
アダムが、駄々っ子の様に泣き叫ぶとキング・メイソンは、
「それは、物質が武装を削り取る前に物質の表面を焼いた炎の熱が急激に武装内部に流れ込んだ物だ。もう、既にその武装の防御力は無いも同然だ!」
キング・メイソンが、そう言うとアダムはキング・メイソンから離れ、五本の穂先を持つ槍から光を放って遠距離からキング・メイソンを攻撃した。アダムの目にはキング・メイソンを確実に貫いた様に映ったが……
「俺に遠距離から攻撃を当てる事は、難しいぞ?」
と、キング・メイソンが言い放ちながら、アダムに急激に接近し槍を持つアダムの右手を剣で切り落とした。
「うあああああっ!」
アダムは、それに驚き腕を抑える。すると、キング・メイソンは、そんなアダムを蹴り飛ばし吹き飛んだアダムに魔法を発動する。
「聴けッ!
早春に吹く冷たい風は、
見放されたと過ぎ去り嘆き、
これが真実と受け止める
強く根付いた
小さな君は
アドニスの鮮血で花開く
誤ちの想いよ
今こそ
待ち焦がれた抱擁を
たとえ残酷な運命の悪戯だとしても」
キング・メイソンが魔法を唱えると、アダムの体を氷で出来たアネモネの花が包み込み、動きを封じた。
「これで終わりだな
所詮は、お前は生物の域を出られない。
そこがお前の敗因だ」
キング・メイソンが、そう言うと氷のアネモネの内側で深紅の十字架が光を放って現れ、アネモネを砕いた。すると、アダムは、立ち上がり
「もう、嫌だ!
お前は何なんだ!
お前みたいな奴知らない、父さんに習ってない!意味がわからない!
だから、そんな奴消えちゃえ!」
アダムが、そう言うとアダムの体を黄金の粒子が包み込み、猛威を振るう鎚の王を黄金の粒子で強化すると、アダムは、キング・メイソンの方を睨んだ。
アダムが、キング・メイソンを力強く睨むと、猛威を振るう鎚の王の目から紫色の光を放ちキング・メイソンにぶつけた。すると、アダムは喜んで
「これは、バロールの魔眼だ!
この目に睨まれた者はなんであれ、死を迎える!これでお前もお終いだ!」
と、言った。だがアダムは、キング・メイソンを睨んだつもりでいたが、キング・メイソンに変化は無い。アダムは、それに驚いて
「なんで!?
どうして効かないの?」
と、叫び地団駄を踏んだ。
すると、キング・メイソンは、それに呆れて
「だから、さっきも言っただろう?
目に見えている通りに俺を狙っても、時際に俺がいる地点とは別だ。
俺の体は暗黒物質で出来ている。本来、ダークマターは目に見えないが、クリエイターが生み出したダークマターは、光を放つ代わりに生物に存在の痕跡を見せる。それを認識した生物の脳は経験的にその痕跡を目に見える物質と認識し、光を放たぬダークマターの痕跡を黒い何かがいると勘違いするんだ。つまりは、お前のその目でも俺を捉える事は出来ない!」
と、言った。すると続けて
「さて、勉強の時間は終わりだ
終わりにするぞ!アダム!」
と、言うと背中から八本の腕を生やし、その手全てに大剣を持たせると、急速にアダムに接近し、全ての剣で猛威を振るう鎚の王の体を高速で切りつけた。
徐々に消える武装に、流れ出す熱波、アダムは産まれてから初めて経験する恐怖という感情に怯え、発狂した。
「痛い、痛い、痛い、痛い、痛い!
ああ、あああああああああっ
あああああああああああああああああッ!
嫌だ、嫌だッ!
もう、やめろ!
嫌だよ、ねえ!
うあああああああああああああッ!」
アダムは、絶叫しながら血肉をスライムのようにして、必死で触れられる物へとしがみついた。キング・メイソンの体に触れたアダムは、安堵しキング・メイソンの体を奪おうとした。
「ははははは!
あはははははっ!
やっぱり、僕は誰にも負けない!
さあ、その体を僕に頂戴!
僕が君の分まで生きるよ
良いだろう?
僕は、優秀だ!僕は、完璧なんだよ!
優秀な者が生き残るのは、自然の摂理なんでしょ?だったら、よこせよッ!
その体ッ!
僕が、生きるんだァッ!」
アダムは、そう言ってキング・メイソンの体を奪おうとしたが、体に入り込む事が出来ない。
「え!?
なんで!?
だって、僕は……」
驚いたアダムに対し、キング・メイソンは、
「悪いな、俺はもう生き物じゃ無いんだ。
思えば、お前も悲しいな。誰かに生かして貰う事を前提とした生き物なんて……
少し、心苦しいがもう、楽になれ」
キング・メイソンが、悲しそうな雰囲気を醸し出しながら、優しくアダムにそう言うと
「聴けッ!
生を叫ぶ厳格な棘、
己に触れるなと主張する妖艶な復讐は、
群衆を遠ざけ、
独立を高らかに嘆く
これで満足だと、
諦めを持って
真の生を知れ
吝嗇な愚者は絶えず伸びる俗物を嗤う……」
キング・メイソンが、魔法を唱えると、キング・メイソンの体から、炎の薊が現れて強力な熱波を放った。
「うああああああああッ!
嫌だ、嫌だ!
殺さないで!
父さん、父さん見てるんでしょ?
ねえ、僕を助けて
お願いだよ、父さん……」
アダムがそう言って泣き叫び、父親に助けを求めると、クジラの穴から三体の完全に球体のドローンが現れ、その中の一つがこう言った。
「やれやれ、君も最初は得意げに私の役にたとうとして、余計に私を煩わせるのか……
また、失敗だよ
今度は、合作だと言うのにこのザマだ。お前は、アダムなんかじゃない。お前も醜い怪物だ。大人しく、私の前から消えてくれ」
すると、別のドローンが
「まあ、彼からは良いデータが取れた。次は完成するさ。気を落とすな」
と、言うと父さんと呼ばれていたドローンは、
「だと、良いがな……
全く、石黒博士
君のAIが問題なんじゃ無いのか?
感情なぞ持たせるから、子供の様に馬鹿げた様子で行動するんだ。機械的な考え方のAIは作れないのか?」
と、言うと先程とはまた別のドローンが
「はははっ、感情の無いAIが欲しいなら、私では無くApple社の人間を辺獄に連れて来れば良かっただろう?
私に言わせれば、感情無くして発想は得られず、発想の無いAIは人を超えられない。完全な物には不完全な要素が必要なのさ。
不完全とは、発展性の同義語だからね。
君は、そんな発想だから、最初の怪物と、2人目の彼の心を理解出来ないのさ。
君は、彼らよりも怪物だよフランケンシュタイン博士」
と、愉快に応えた。それを聞いた父さんと呼ばれたドローンは、
「もう言い!
急いでアダムを完成させるぞ!
賀建奎、石黒浩その為に君達を連れて来たんだ!」
と、怒ってドローンから何かの光線を発して空中にドローンより少し大きい位の大きさの穴を開け、帰ろうとした。
すると、アダムは、
「ねえ、待って父さん
すごく熱いし、痛いんだ
僕を置いて行かないで、僕が大事だって言ったじゃないか!」
と、言うと父さんと呼ばれたドローンは、
「黙れ、失敗作
お前には焼却処分が相応しい」
と冷徹に言い放ち、空中の穴へと入り、三体のドローンが穴を通ると穴を閉じた。
すると、それを見たアダムは
「嘘だあああああああああああああああッ!
父さん、父さん!
行かないでええええええええええッ!
もっと、頑張るから!
もっと、強くなるから!
お願いだよ、父さん!
あああああああああああああああッ!」
と、言って声を枯らして泣き叫びながら、塵となっていった。
キング・メイソンは、それを黙って見ている事しか出来なかった。
アダムが、燃え尽きるとキング・メイソンは、アダムの灰を拾い集めダークマターで包み海へと放り投げた。
「全ての若者が等しく救われる世界で眠れ
ここがお前の居場所だ……」
と、心を痛めながら言った。
「クソッ!
俺は未だ何も出来ない!
彼奴が仲間達全員を殺すのを黙って見ている事しか出来ない!
俺は無力だ!」
膝をついて床を殴りながら涙するキング・メイソンは、真に絶望していた。
クリエイターは、そんなキング・メイソンを見て、仲間達がその怪物に襲われる様を想像し、恐怖に膝が笑い始めた。そんなクリエイターを聖は、クリエイターの右手を強く握る事で安心させながら、クリエイターの耳元に口を当てて
「大丈夫ですよ、旦那様
貴方は、誰にでも勝てる力を持っています。
だから、怯えないで仲間を勇気づけてあげてください」
と、言うとクリエイターは唾を飲み込み、大きく息を吸い込んでキング・メイソンに言った。
「君は、常に仲間の事を考えていた。君達、いや、僕らの絆は生前の社会では考えられない程に強固な物だ。なのに、それなのに君はその力を使おうとせず、己の力のみを高め仲間を救おうとする。それは、君の強欲だ。
君は、僕の元でそれを贖わなければならない
いつまでも挫けているな!
立って戦え!
それが、君が神に出来る唯一の贖いだ。」
僕が力強くそう言うと、キング・メイソンは、顔を上げ僕の方を見た。すると、僕の自信に満ちた表情を見て、顔を拭いて微笑むと、立ち上がって僕に尋ねた。
「だが、俺は敵に体だけでなく、猛威を振るう鎚の王も奪われた。俺にはもう武器が無いぞ?それに生物である以上奴には敵わない。さて、どうすれば良い?」
と、クリエイターに対して、堂々と開き直って対処方を尋ねると、クリエイターは、微笑んでキング・メイソンの右肩に触れこう言った。
「はははっ!
君は、僕の最強の装備を授かって尚、更なる力を求めるのか」
クリエイターが、そう言うとキング・メイソンは、微笑んで
「ああ、俺は強欲だからな」
と、言った。すると、キング・メイソンの右肩から五体を地に伏せて嘆く者の紋様が浮かび上がった。すると、キング・メイソンの体はみるみる変化していき、肉体がウルツァイト窒化ホウ素へと変化した。
「それで、君はもう生物では無い。奴もその体は奪えない。そして、君には更にこれを与えよう。前の体では操れなかった僕が作った新たな肉体だ」
クリエイターは、そう言うと異空間倉庫から、3m程の大きさの赤土色をした鉱物で出来た巨人の骨の様な体を取り出した。
キング・メイソンは、それを与えられ巨人の骨に触れると、キング・メイソンの体が骨の中の吸収される様に消え、変わり骨から黒いモヤの様な物が溢れ出て骨に肉体を与えて漆黒のコールタールの様な粘性を持った見た目だが、しっかりと肉体を保っている顔の無い人形の様な姿へと変わった。すると、それを見たクリエイターは、
「その姿は君の強欲さの象徴だ。その醜い体こそ僕が君に与える戒めだ。その力を持って己の罪を贖えッ!」
と言うと、グラスホッパーを呼び出しキング・メイソンを元いた船へと送った。
船に戻ったキング・メイソンは体から、体を構成している物と同じ材料で大剣を作り出し手に持つと、誰もいないクジラの背中で一人、魔法を叫ぶ。
「聴けッ!
厳格な意思の天才は
己の誠実さの証明に
煌々と光る刀剣を
眼前の敵に突き刺して
高らかに叫ぶは
ただ一つ
忍耐強く待ち望んだ
無謬の勝利ッ!
鬨を挙げるは、真なる英傑」
キング・メイソンが、魔法を唱えると目の前にグラジオラスの花の形の炎の剣が現れた。キング・メイソンは、それを確認すると、続けて魔法を唱える。
「聴けッ!
歴史に名高い兵士達
語り継がれる英雄譚
それに付随する数多の名工の妙技を此処に
鎚ふる匠は永遠に」
炎の剣が振り下ろされようとした時、キング・メイソンの魔法によって出現した黒い魔方陣が現れ、それにキング・メイソンが手に持った剣を放り込み、その放り込まれた魔法陣に炎の剣がぶつかると、黒い魔法陣から火花が散り、一振の黒い物質を中心に炎が刀剣の形で揺れる大剣となった。キング・メイソンは、それを手に取るとクジラの背中に空いた穴に向かって叫んだ。
「そこにいるのはわかっているぞ!
姿を現せッアダム!
貴様が奪った俺の肉体ごと塵に変えてやる!」
キング・メイソンが、そう言い放つとクジラの穴から、猛威を振るう鎚の王を灰色と緑に塗り替え、腰についたベルトの装備を全てSF仕様の武装に変えたアダムが現れた。
「うわ~、君さっき来たのと同じ人?
ぜんっぜん見た目違うね~
でも、カッコイイ!
ねえ、その体も僕に頂戴よ!」
アダムは、そう言うと穂先が五本に別れた槍を持ってキング・メイソンに迫った。
キング・メイソンは、それを剣で受け止め凄まじい脚力でアダムを押すと、槍を払ってアダムの右肩から左脇腹を切りつけた。
だが、切りつけられたアダムは、自慢げな顔をして
「父さんが言ってたよ~
この武装は、炎なんかじゃ傷つけられないって!それは、君が一番良く知っているでしょう?」
と、言ったが、キング・メイソンに切りつけられた部分に切り込みが入った。アダムは、それに驚き
「うそ!?
なんで?」
と、言ったそれに対し、キング・メイソンは、
「確かにその武装は炎では切れない、だがなこの剣の刃は炎では無く、この黒い物質だ!
この物質は、どの物質と触れてもその物質からガンマ線を放射させ、その物質のエネルギーを吸収する!つまりは、この物質にどんな物質をも削り取る力があるんだ!
ウルツァイト窒化ホウ素を用いたとしてもこの物質の前では無意味としれ!」
キング・メイソンが、そう言うと猛威を振るう鎚の王の切り口から熱波が吹き出して、アダムの体の表面を焼いた。
「うあああああっ!
熱い!痛いよー!
なんで、なんで炎が!」
アダムが、駄々っ子の様に泣き叫ぶとキング・メイソンは、
「それは、物質が武装を削り取る前に物質の表面を焼いた炎の熱が急激に武装内部に流れ込んだ物だ。もう、既にその武装の防御力は無いも同然だ!」
キング・メイソンが、そう言うとアダムはキング・メイソンから離れ、五本の穂先を持つ槍から光を放って遠距離からキング・メイソンを攻撃した。アダムの目にはキング・メイソンを確実に貫いた様に映ったが……
「俺に遠距離から攻撃を当てる事は、難しいぞ?」
と、キング・メイソンが言い放ちながら、アダムに急激に接近し槍を持つアダムの右手を剣で切り落とした。
「うあああああっ!」
アダムは、それに驚き腕を抑える。すると、キング・メイソンは、そんなアダムを蹴り飛ばし吹き飛んだアダムに魔法を発動する。
「聴けッ!
早春に吹く冷たい風は、
見放されたと過ぎ去り嘆き、
これが真実と受け止める
強く根付いた
小さな君は
アドニスの鮮血で花開く
誤ちの想いよ
今こそ
待ち焦がれた抱擁を
たとえ残酷な運命の悪戯だとしても」
キング・メイソンが魔法を唱えると、アダムの体を氷で出来たアネモネの花が包み込み、動きを封じた。
「これで終わりだな
所詮は、お前は生物の域を出られない。
そこがお前の敗因だ」
キング・メイソンが、そう言うと氷のアネモネの内側で深紅の十字架が光を放って現れ、アネモネを砕いた。すると、アダムは、立ち上がり
「もう、嫌だ!
お前は何なんだ!
お前みたいな奴知らない、父さんに習ってない!意味がわからない!
だから、そんな奴消えちゃえ!」
アダムが、そう言うとアダムの体を黄金の粒子が包み込み、猛威を振るう鎚の王を黄金の粒子で強化すると、アダムは、キング・メイソンの方を睨んだ。
アダムが、キング・メイソンを力強く睨むと、猛威を振るう鎚の王の目から紫色の光を放ちキング・メイソンにぶつけた。すると、アダムは喜んで
「これは、バロールの魔眼だ!
この目に睨まれた者はなんであれ、死を迎える!これでお前もお終いだ!」
と、言った。だがアダムは、キング・メイソンを睨んだつもりでいたが、キング・メイソンに変化は無い。アダムは、それに驚いて
「なんで!?
どうして効かないの?」
と、叫び地団駄を踏んだ。
すると、キング・メイソンは、それに呆れて
「だから、さっきも言っただろう?
目に見えている通りに俺を狙っても、時際に俺がいる地点とは別だ。
俺の体は暗黒物質で出来ている。本来、ダークマターは目に見えないが、クリエイターが生み出したダークマターは、光を放つ代わりに生物に存在の痕跡を見せる。それを認識した生物の脳は経験的にその痕跡を目に見える物質と認識し、光を放たぬダークマターの痕跡を黒い何かがいると勘違いするんだ。つまりは、お前のその目でも俺を捉える事は出来ない!」
と、言った。すると続けて
「さて、勉強の時間は終わりだ
終わりにするぞ!アダム!」
と、言うと背中から八本の腕を生やし、その手全てに大剣を持たせると、急速にアダムに接近し、全ての剣で猛威を振るう鎚の王の体を高速で切りつけた。
徐々に消える武装に、流れ出す熱波、アダムは産まれてから初めて経験する恐怖という感情に怯え、発狂した。
「痛い、痛い、痛い、痛い、痛い!
ああ、あああああああああっ
あああああああああああああああああッ!
嫌だ、嫌だッ!
もう、やめろ!
嫌だよ、ねえ!
うあああああああああああああッ!」
アダムは、絶叫しながら血肉をスライムのようにして、必死で触れられる物へとしがみついた。キング・メイソンの体に触れたアダムは、安堵しキング・メイソンの体を奪おうとした。
「ははははは!
あはははははっ!
やっぱり、僕は誰にも負けない!
さあ、その体を僕に頂戴!
僕が君の分まで生きるよ
良いだろう?
僕は、優秀だ!僕は、完璧なんだよ!
優秀な者が生き残るのは、自然の摂理なんでしょ?だったら、よこせよッ!
その体ッ!
僕が、生きるんだァッ!」
アダムは、そう言ってキング・メイソンの体を奪おうとしたが、体に入り込む事が出来ない。
「え!?
なんで!?
だって、僕は……」
驚いたアダムに対し、キング・メイソンは、
「悪いな、俺はもう生き物じゃ無いんだ。
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「聴けッ!
生を叫ぶ厳格な棘、
己に触れるなと主張する妖艶な復讐は、
群衆を遠ざけ、
独立を高らかに嘆く
これで満足だと、
諦めを持って
真の生を知れ
吝嗇な愚者は絶えず伸びる俗物を嗤う……」
キング・メイソンが、魔法を唱えると、キング・メイソンの体から、炎の薊が現れて強力な熱波を放った。
「うああああああああッ!
嫌だ、嫌だ!
殺さないで!
父さん、父さん見てるんでしょ?
ねえ、僕を助けて
お願いだよ、父さん……」
アダムがそう言って泣き叫び、父親に助けを求めると、クジラの穴から三体の完全に球体のドローンが現れ、その中の一つがこう言った。
「やれやれ、君も最初は得意げに私の役にたとうとして、余計に私を煩わせるのか……
また、失敗だよ
今度は、合作だと言うのにこのザマだ。お前は、アダムなんかじゃない。お前も醜い怪物だ。大人しく、私の前から消えてくれ」
すると、別のドローンが
「まあ、彼からは良いデータが取れた。次は完成するさ。気を落とすな」
と、言うと父さんと呼ばれていたドローンは、
「だと、良いがな……
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君のAIが問題なんじゃ無いのか?
感情なぞ持たせるから、子供の様に馬鹿げた様子で行動するんだ。機械的な考え方のAIは作れないのか?」
と、言うと先程とはまた別のドローンが
「はははっ、感情の無いAIが欲しいなら、私では無くApple社の人間を辺獄に連れて来れば良かっただろう?
私に言わせれば、感情無くして発想は得られず、発想の無いAIは人を超えられない。完全な物には不完全な要素が必要なのさ。
不完全とは、発展性の同義語だからね。
君は、そんな発想だから、最初の怪物と、2人目の彼の心を理解出来ないのさ。
君は、彼らよりも怪物だよフランケンシュタイン博士」
と、愉快に応えた。それを聞いた父さんと呼ばれたドローンは、
「もう言い!
急いでアダムを完成させるぞ!
賀建奎、石黒浩その為に君達を連れて来たんだ!」
と、怒ってドローンから何かの光線を発して空中にドローンより少し大きい位の大きさの穴を開け、帰ろうとした。
すると、アダムは、
「ねえ、待って父さん
すごく熱いし、痛いんだ
僕を置いて行かないで、僕が大事だって言ったじゃないか!」
と、言うと父さんと呼ばれたドローンは、
「黙れ、失敗作
お前には焼却処分が相応しい」
と冷徹に言い放ち、空中の穴へと入り、三体のドローンが穴を通ると穴を閉じた。
すると、それを見たアダムは
「嘘だあああああああああああああああッ!
父さん、父さん!
行かないでええええええええええッ!
もっと、頑張るから!
もっと、強くなるから!
お願いだよ、父さん!
あああああああああああああああッ!」
と、言って声を枯らして泣き叫びながら、塵となっていった。
キング・メイソンは、それを黙って見ている事しか出来なかった。
アダムが、燃え尽きるとキング・メイソンは、アダムの灰を拾い集めダークマターで包み海へと放り投げた。
「全ての若者が等しく救われる世界で眠れ
ここがお前の居場所だ……」
と、心を痛めながら言った。
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修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
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この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
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朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
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萌の物語が始まる。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
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日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
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