現代神曲〜プルガトリオの人面樹が叫びを聴けッ!〜

氏家 慷

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第1章 辺獄妄執譚

第11話 賢人の法 ママラホエ

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武蔵は、瞬時にルベまでの間合いを詰めるとルベの鎧の比較的細い場所である足を狙い薙ぎ払うように切り裂こうとしたが 、横にいたハヌがニタリと笑って武蔵の前に割って入ると緬甸刀を両手で力強く握り、武蔵の一撃を受け止めた。

二人の刃がぶつかった時の衝撃で辺りに一陣の風が吹き荒ぶと、一瞬辺りを静寂が包み時が止まった様な感覚に陥った。

ふと、二人の顔を見ると両者ニヤリと笑い合った。

次の瞬間

まるで鞭でも振るっているかの様な空を切り裂く破裂音が濁流の様に辺りを飲み込む形で響き渡った。

その波は、比喩ではなくエネルギーを持った強風となり、二人を中心とした球状の空間から辺りに広がり、武蔵と一緒に来た兵士達が吹き飛んだ。

「「「「「うあああああああッ!」」」」」

SFに出てくる様な鎧から出るエネルギーシールドで何とか、数十人が持ち堪えそのまま武蔵から離れた。

僕は、玉座からエネルギーシールドを出しながら宙へ浮いて衝撃を避けながら、ルベとルムに聖を守るように支持すると、ルムが聖を少し離れた場所へ運んで衝撃を避けた。

「あれじゃあ援護も出来ないな...
それじゃあ、ルムは聖をルベに任せて、あの兵士達を倒せ
ルベは、聖を守ってろ」

僕が、二人にそう支持すると

「「かしこまりました、ご主人様!」」

と二人が笑顔で返事をすると、ルムは聖を優しく降ろすと、両手でハンマーを掴みSF鎧の兵士達に向かって飛び上がった。

ルムは、空中で兵士達を虫けらを潰す子供の様な楽しそうな目で見ながら、嬉しそうに叫ぶ。

「これなるは、我が相打った雷神の形見
真なる雷を纏う巨鎚の一撃で、原子の域まで砕け散れッ!
駆け抜ける雷神の断末魔フロウマト・ミョルニル

ルムが、そう言うとルムが持つハンマーから黒い雷が発生し、それが凄まじい熱を放ってハンマーが紅く輝くと、落下と共にハンマーをSF鎧の兵士達に振り下ろし、大地を揺るがす程の衝撃がSF鎧の兵士達の足元の走り、動きを止めた兵士達を黒い雷が、まるで大樹の様に伸びて触れた兵士達に突き刺さった。あまりの高エネルギーに空気中の原子から二次電子放出が起こり雷が走った場所からは、火花が発生した。
その地獄の様な光景に兵士達が震え、発狂した。
何故ならば、大樹の様な黒い雷は、空気中に飛び交う火花目掛けて駆け回り、火花が発生している空間に留まった。少しずつエネルギーが散っていき、連鎖する火花放電フラッシュオーバーが、止むまで黒い雷に打たれ焼かれる戦士達は、ただただ、赤子の様に泣いていた。
黒い雷は、クリエイターが作った新しい物理現象で、発生した火花に向かって進み、そのエネルギーを吸収する事で、長時間空間に留まる事が可能となっている。

ルムは、それを見て高笑いをしながら黒いハンマーで残りの兵士達を潰して行った。
兵士達は、仲間の惨状を見て怯えたが迫り来る死を振り払う為に、レーザー銃で必死にルムを撃った。
だが、ルムの鎧の緑の目は、レーザーを捉えるとレーザーの光を空中で散らしてルムの体まで届かない様にした。
レーザーは、空中で光を失うと弾丸が、ポロポロとルムの周りで落ちた。

「あれ?
これ、ただの銃弾になっちゃいましたよ?」

ルムが、不思議そうに落ちた弾を眺めると、僕は、

「光だけで殺傷能力を持たせられる筈が無い
それは、ただの曳光焼夷弾だ
まあ、アサルトライフル程の大きさでマガジンを変えずに打ち続けているのは、凄いがな」

と補足し

「そんな事は、良いから敵を倒せ!」

と気を逸らしたルムを注意した。
ルムが、不思議そうに首を傾げている間、敵がルムにレーザー銃携帯型曳光焼夷弾供給及び射出装置を打ち続け、ルムの周りには、発射された弾丸が山の様に積まれた状態になっていた。

「ご主人様が、作ってくださった鎧があるから大丈夫ですよ~」

とルムが、呑気にそう言うと

「どんな物でも無限に使い続ける事は、不可能だ
そろそろ、ゴルゴン・アイ熱エネルギー観測変換及び吸収装置も限界だ
壊れても知らないぞ!」

と僕が、叫ぶとルムの鎧の緑色の瞳が、充血した様な見た目に変わっていった。
ルムは、それを見て慌てて

「あわわ!
ご主人様すみません!
早く、片付けます!」

と言って兵士達を再び攻撃し始めた。
兵士達は、レーザー銃をルムに撃ち続けるが、ルムはそれを避けるように飛び上がって、再び黒い雷で兵士達を攻撃した。

ルムが、雷に焼かれる兵士達を見て安心していると、ルムが放った雷を光る槍で切り裂きながら進む大男が雄叫びを挙げながら、ルムに向かって突進して行った。

「うおおおおおおおッ!」

1.6m程の長さの光る槍は、熱した鉄の様な赤い光を放ちながら、寄ってくる雷を背中に纏うマントから放たれる金色の粒子を纏って切り裂くと雷が消滅し、ルムが武器の間合いに入るまで走ると、光の槍をルムの鎧の腹に付いた瞳
に向かって突き刺そうとした。
ルムは、手に持った柄の短いハンマーをブンブンと振り回し、地面に向かって振り下ろした時よりもハンマーを小さくして、大男に向かって投げ付けた。

大男は、ハンマーを光る槍で払い、動きを止めると、自分の鎧を叩いて埃を落とす様な仕草をすると、両手を挙げた後、槍の輝きを止めてSF鎧のヘルメットを胴体部に格納して、顔を見せると、とても優しげな表情でルムに話しかけた。

「おおっと!
驚かせて済まないね
だが、私も部下がやられているんだ
お愛顧だろう?」

ルムは、それを聞くと何だ此奴は、と言いたげな様子で首を傾げると不承不承話を聞いた。

「ありがとう
では改めて、挨拶がまだだったね
私は、カメハメハ
カメハメハ大王だ
以後、お見知り置きを
それでだ、私は君達と話がしたいと思っている
君のボスはあそこに座っている彼だろう?
もう少し、彼に近づいても良いかな?」

カメハメハ大王が、そう言って親しい相手に握手をするようにルムに近づいた。それに対しルムは、カメハメハ大王を睨みつけると、ハンマーから黒い雷を放った。
それを、カメハメハ大王は、マントを翻して黒い雷をマントに当てて防いだ。

「そうか、君は話し合いのチャンスを棒に振るんだな!
では、私も態度を改めさせて貰うぞ!」

そう言うと、カメハメハ大王は酷く憤り、今までの温厚な表情が嘘の様な顔になり、持っている槍が再び紅く輝き出すと、カメハメハ大王のSF鎧のヘルメットを再び出して顔を覆うと、尋常ならざる脚力で大地を蹴ってルムを襲った。

「話し合いは、これまでだ!」

物凄い勢いで突進しながら、怒号を発するカメハメハ大王は、まるで神話の怪物の様な威圧で差し迫った。
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