囀ずりは死の洗礼

ことりや鳥天

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11.勝利のさえずり

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~~~~~~~~~~~~~


ピーッピーッピーッピーッ、


バック音がして 車が止まる、

バタンッ  バタンッ

ドアの音もする

インコたちがよく真似てる音だ。

ようやく下僕たちが帰ってきたのだ。

ガチャ!
玄関が開く!

ベムは、真っ先に飛んで行った!

「やっと帰ってきたぁ!」

ピピピーッっ!ぺーぺーぺー!

人間が大好きなベムは、いつも肩に乗って、ご機嫌な さえずりを聴かせるのが日課だが、
今日ばかりは歌わない。

「あれ?ベム!何で出てるの?」

下僕1号が驚いてベムをみる

「ちょっと、窓がすごい あいてるんですけど!」
外で車から 荷物を運び出していた、下僕2号が大声をだす!

「え?ドロボー?!  」

リビングに入った3号は 凄まじい状況に目を見張る!

「遅いじゃないさー💦 」

ガンミたちはカゴの中で飛び跳ねている。

「  うわーー!!なんじゃこりゃ!」

部屋の中は 激しく荒らされ、物が散乱していた。
すべての鳥カゴはぶっ倒され、
転がされたキャリーケースには、セイバーの無惨な遺体が転がっている

「なんてひどい!!」
「暑苦しいと思って、ネット着けていかなかったから!!」
「かわいそうなセイバー!」

下僕たちは、口々に嘆いた。

「はっ!ブルウとバニラは?」

慌てて 二人のカゴに振り返ると、こちらも網が外れている。

えーー、どこにいった?!

恐る恐る部屋の中を探し回る、
まさか、部屋のどこかで食い殺されているとか…

下僕たちはそう思うとゾッとした

「……。」

いや、もしかして 網の外れたカゴの中に… 居るわけはないだろうが…と、そぉっと覗いてみる、

「!  バニラぁ!!」

なんと、回し車の下の隙間に 小さくなって隠れているではないか!

「バニラ!お前、ちゃんとカゴの中にいたの! こんな隅に小さくなって!  たった一人で隠れていたの?」

1号は、ボロボロ涙をながして、大声で泣きながら バニラを抱き上げた。

「ブルウは?」
「どこにもいないぞ、羽が散らばってないから、部屋の中で殺られてはないみたいだけど」

「外に逃げたのかなぁ」

2号たちは、いないブルウを探し回る

“いいか!バニラ、兄ちゃんの言うことを聞くんだ”

“下僕たちが帰るまで 絶対 出るなよ”

ブルウの声がしたようで、バニラはそっと目を開ける、

「!!」

羽をむしりとられ 血みどろになって横たわるセイバー、
バケモノの爪痕を残す混沌とした情景。

そこにあったものは、悪夢のように恐ろしすぎる現実だけだった、バニラの胸はバケモノたちの鋭い爪で 容赦なく引き裂かれる!

ビビビビーーーー!!!

思わず、下僕の手から飛び出した!

キキキキキィィ~ーーー!
「ブルウはどこーーー!!」

吹き出す恐怖が押さえきれない、決して覚めることのない悪夢にバニラのすべてが粉々にくだけ散る。


──

ぎゃぁぁぁーーー!!

洗面所の方でも悲鳴が上がった!

「ちょっときて!!!!Σ(-∀-;)」

下僕4号が大声で呼ぶ!
どうした!とみんな急いで飛んでいく。

えええええ~ーー!!!

「 何で、猫が風呂桶で死んでんの?」

バスタブの中には、相当もがき苦しんだと思われるガリレオが、眼をむき、口を半開きにして アカモクに絡まり浮かんでいる。

シャワーホックにはチョコがとまっていた。

「チョコも出てるし💧」

下僕1号が手を差し出す

「待ちくたびれたぜ!下僕共!」
「そうだ!そうだ!」
ベムもチョコも下僕の腕にとまると、お尻を振って歌い出す

チュッポーーーン、チュポン、チュポン!スイッーチョンノスイーッチョン、スイーチョンデスゥイーチョョン!

どうだ!!やってやったぞ!
俺たちは、薄汚いバケモノをやっつけたんだ!

セイバーの仇を取ったんだ!

二羽は、声高らかに、そして、
誇らしげに勝利のさえずりをした。

「お前たち、何をご機嫌さんに歌ってるの?」
「のんきだね~」
「死体があるのに」
「なんにも知らないって、こわー」

知らないのは下僕共だけである。

四人は首をかしげて、その死体を覗き込む。
いったい何が起きたのか…と青ざめて想像を巡らした。


さて、ブルウはどうなったのだろうか?

鳥たちの噂では、マダラに殺され、頭だけが、月見野藪を さ迷っているという話だが……。((((;゜Д゜)))

「そんなわけあるか!  体も ちゃんと付いてるわ!」

そうだ!きっとどこかで、逞しく生きているにちがいない。

        
 セイバーとブルウに捧ぐ           
                                                       完
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