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◆釛珠玉
しおりを挟むその日の娘は、真夜中の闇に紛れて、そっとやって来たという。
龍に会わずに釛珠玉を置いて立ち去ろうというわけだった。
しかし、娘の匂いに気づいた龍につかまって、
〝なぜそんなことをするのか〟
と問いただされた。
すると娘はしくしくと泣き出して、
〝あなた様にお別れを言うのが辛すぎて会わずに行こうと思いました〟
と重い口をひらいて話しを続けた。
〝実は私はもう間もなく定められた方の元へお嫁に行かねばなりません、二度とあなた様にお目にかかることはないでしょう 黒龍さま、どうか私のことはお忘れください〟
がーーーん
黒龍の胸に築城された風光明媚な愛の砦は崩れ去ってゆく。
息苦しく、気の遠くなるような思いをこらえて龍は尋ねる。
〝それは…それはお前の心願なのか?〟
その問いに娘は顔をあげて
〝はい、それは赤木の巫女の本分と心得ております〟
と澄んだ瞳で答えられてはどうすることもできない。
〝ならば、仕方ない。釛珠玉はお前に授けたもの。それを持って進むべき道へ行くがいい〟
と帰したという。
いやはや精一杯のやせ我慢をしたわけか…
なるほど、そこが本当の嘆きの理由とは浅はかすぎてため息もでないとやっぱりため息をつく虎紋呪僧。
黒龍は隣に寄り添う僧をジロリと睨み、そんな思いも無きにしも有らずだが、それだけで己の魂塊を渡すやつがいるものか…と吐き捨てた。
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