上 下
17 / 21
初めての街 イーニフ

第17話

しおりを挟む

冒険者ギルドの資料室をあとにした俺は、薬の相場や品質、ついでにギルドの入会方法について尋ねてみようと、ひとまず商人ギルドの方へ向かった。
中は受付の他に、ギルド内でも商品を販売しているようだった。カウンターにニコニコとした店員さんがいたのでポーションについて尋ねてみるか。

「こんにちは、ちょっと聞きたいことがあるんですが、ポーションって幾らくらいですか?」

「1瓶で銀貨1枚ですが、いくつ買われますか?」

「えーっと…1瓶だけお願いします!」

「かしこまりました。ではこちらがポーションです。」

「ありがとうございます!ちなみに商人ギルドへの加入方法について教えてもらいたいんですけど…。」

そう尋ねた途端、こちらを馬鹿にするような表情に変わり、
「チッ…そんなことも知らずに…入会金で金貨150枚納めてもらえれば商人になれますよ?まぁ無理でしょうがね?」

「……そうですか、ありがとうございました。」

なんだこの職員は…胸糞悪い。加入方法聞いただけであんな態度取られるなんて…この街の商人ギルドはこんな人ばっかりなのかもしれないな。
この街のギルドではやめて、別の街に着いてから始めるか。

気分も晴れないし、とりあえず薬草の採取に向かうことにしようかな…。

そうこうしている内に正門へ着いた。
昨日黒の夜明け亭へ向かっていた時にはあまり気に留めていなかったが、正門は結構な大きさがあったものの、森の門ほど堅牢な作りというわけではない。
商人などの出入りがある為か、昼間は開きっ放しのようだが、身分証の確認はあるようだ。

「むっ、君は…森から現れた子じゃないか。無事にギルド登録できたようだな。」

「あ…森の門の番兵さん。はい、ラドロさんにも良くしてもらいまして。それはそうと今から依頼で外に行こうと思うんですけど、ここで身分証出せば良いんですか?」

「そうだ、ここで見せてくれるだけで良いぞ。昨日の今日で殊勝なことだな。」

「いえ…あまり持ち金もなかったので、依頼をこなして宿代を確保しないといけないんです…。」

「そうか…まぁ気をつけてな。」

「はい、ありがとうございます。」

何気ない会話をしつつも、きちんとチェックをしてくれていたので、あっさりと街を出ることができた。
森を抜けて、初めての街の外だ。なんというか、感慨かんがい深いものがある。森も崖に、街は防壁に囲まれていたから、この先に新たな街や新たな世界が広がっているんだと、まだ見ぬ世界に思いをせてしまう。


「よし、じゃあ早速薬草探しに行ってみよう!」

街から少し離れた物陰でジルに大きくなってもらい、ジルに乗って小鳥ゴーレムが示す方向へ向かう。ゴーレムがいるとなんでもできてしまうな。

「そういえば森で作業を続けているゴーレム達も、こっちに来れるようにしたいけど、さすがに街中を通るわけにはいかないか…。でも陸続きになっているのはあの門だけだし…どうしようか…。」

そうこう考えていたら、あっという間に薬草の群生地についた。
あの森で見かけた薬草よりは少し色も薄く、元気のないように見えるが、おそらくあの森が特殊なだけでこんなものなんだろう。この辺りも森のようになっているがどう違うんだ…?

「良い感じに沢山採取できたぞ、依頼を超えた分は買い取ってもらえるか聞いてみようかな。」



そう思って帰路についた時、遠くで男女の叫び声が聞こえた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた

杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。 なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。 婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。 勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。 「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」 その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺! ◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。 婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。 ◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。 ◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます! 10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

フリーター、ゴーレムになり異世界を闊歩する

てぃー☆ちゃー
ファンタジー
旧タイトル)オレはゴーレム、異世界人だ。あ、今は人では無いです 3/20 タイトル変更しました 仕事を辞めて、さあ就職活動だ! そんな矢先に別世界へ強制移動とゴーレムへの強制変化! こんな再就職なんて望んでません! 新たな体を得た主人公が異世界を動き回る作品です

王子は婚約破棄をし、令嬢は自害したそうです。

七辻ゆゆ
ファンタジー
「アリシア・レッドライア! おまえとの婚約を破棄する!」 公爵令嬢アリシアは王子の言葉に微笑んだ。「殿下、美しい夢をありがとうございました」そして己の胸にナイフを突き立てた。 血に染まったパーティ会場は、王子にとって一生忘れられない景色となった。冤罪によって婚約者を自害させた愚王として生きていくことになる。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

捨てられた侯爵夫人の二度目の人生は皇帝の末の娘でした。

クロユキ
恋愛
「俺と離婚して欲しい、君の妹が俺の子を身籠った」 パルリス侯爵家に嫁いだソフィア・ルモア伯爵令嬢は結婚生活一年目でソフィアの夫、アレック・パルリス侯爵に離婚を告げられた。結婚をして一度も寝床を共にした事がないソフィアは白いまま離婚を言われた。 夫の良き妻として尽くして来たと思っていたソフィアは悲しみのあまり自害をする事になる…… 誤字、脱字があります。不定期ですがよろしくお願いします。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

処理中です...