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初めての街 イーニフ
第17話
しおりを挟む冒険者ギルドの資料室をあとにした俺は、薬の相場や品質、ついでにギルドの入会方法について尋ねてみようと、ひとまず商人ギルドの方へ向かった。
中は受付の他に、ギルド内でも商品を販売しているようだった。カウンターにニコニコとした店員さんがいたのでポーションについて尋ねてみるか。
「こんにちは、ちょっと聞きたいことがあるんですが、ポーションって幾らくらいですか?」
「1瓶で銀貨1枚ですが、いくつ買われますか?」
「えーっと…1瓶だけお願いします!」
「かしこまりました。ではこちらがポーションです。」
「ありがとうございます!ちなみに商人ギルドへの加入方法について教えてもらいたいんですけど…。」
そう尋ねた途端、こちらを馬鹿にするような表情に変わり、
「チッ…そんなことも知らずに…入会金で金貨150枚納めてもらえれば商人になれますよ?まぁ無理でしょうがね?」
「……そうですか、ありがとうございました。」
なんだこの職員は…胸糞悪い。加入方法聞いただけであんな態度取られるなんて…この街の商人ギルドはこんな人ばっかりなのかもしれないな。
この街のギルドではやめて、別の街に着いてから始めるか。
気分も晴れないし、とりあえず薬草の採取に向かうことにしようかな…。
そうこうしている内に正門へ着いた。
昨日黒の夜明け亭へ向かっていた時にはあまり気に留めていなかったが、正門は結構な大きさがあったものの、森の門ほど堅牢な作りというわけではない。
商人などの出入りがある為か、昼間は開きっ放しのようだが、身分証の確認はあるようだ。
「むっ、君は…森から現れた子じゃないか。無事にギルド登録できたようだな。」
「あ…森の門の番兵さん。はい、ラドロさんにも良くしてもらいまして。それはそうと今から依頼で外に行こうと思うんですけど、ここで身分証出せば良いんですか?」
「そうだ、ここで見せてくれるだけで良いぞ。昨日の今日で殊勝なことだな。」
「いえ…あまり持ち金もなかったので、依頼をこなして宿代を確保しないといけないんです…。」
「そうか…まぁ気をつけてな。」
「はい、ありがとうございます。」
何気ない会話をしつつも、きちんとチェックをしてくれていたので、あっさりと街を出ることができた。
森を抜けて、初めての街の外だ。なんというか、感慨深いものがある。森も崖に、街は防壁に囲まれていたから、この先に新たな街や新たな世界が広がっているんだと、まだ見ぬ世界に思いを馳せてしまう。
「よし、じゃあ早速薬草探しに行ってみよう!」
街から少し離れた物陰でジルに大きくなってもらい、ジルに乗って小鳥ゴーレムが示す方向へ向かう。ゴーレムがいるとなんでもできてしまうな。
「そういえば森で作業を続けているゴーレム達も、こっちに来れるようにしたいけど、さすがに街中を通るわけにはいかないか…。でも陸続きになっているのはあの門だけだし…どうしようか…。」
そうこう考えていたら、あっという間に薬草の群生地についた。
あの森で見かけた薬草よりは少し色も薄く、元気のないように見えるが、おそらくあの森が特殊なだけでこんなものなんだろう。この辺りも森のようになっているがどう違うんだ…?
「良い感じに沢山採取できたぞ、依頼を超えた分は買い取ってもらえるか聞いてみようかな。」
そう思って帰路についた時、遠くで男女の叫び声が聞こえた。
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