ペースト学園かまぼこ部能力ver〜抗う能力者達〜

澪音

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第一章「機械の戯れ」

狂気の沙汰

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美海side

「お前の全てを破壊してやる」
あまりの剣幕にナミトは狼狽える。
つーか、さっきからバチバチなってんのなんなん?
ふと、ナミトの腕をよく見てみる。
切断したナミトの腕から、火花が散っていた。
落ちている腕の切断面を見ると、機械のような構造の切り口がバラバラになっている当り、かなり頑丈に作られているものだと見える。
「お前…機械か…?」
思わずそう告げる。
身体の全てが機械でできている人間…通称『製造人間アンドロイド』と言われていた。
過去形なのは、もう製造されていないから。
製造人間アンドロイドは自由な思考を持たない、だから誰かがパソコンかなんかで入力しないと動かない仕様なんだけど…そのデータを変えて殺人を犯す奴が出てきたから政府が全ての製造工場を停止させたって話。
でもまさか…止めさせた政府元凶が秘密裏で造っていたなんてな…。
これは…。
「面白ぇじゃねーかよ…」

「おい」
俺はナミトに声をかけた。
切られた腕は痛むんだろうなぁ…。
知ったこっちゃないけど(外道)
「お前の本体は何処どこに居る?」
腕を組みながら語りかける。
「…政府ここ何処どこかにある牢屋だ」
観念したのか、ナミトはぼそりと呟く。
牢屋かー…。
「…嘘じゃねぇな?」
「嘘をついてどうなる、どの道この体は貴様に壊される運命なんだ…悔いは無い」
このナミトの発言に無性に腹が立った。
何故なぜかは知らない。
いや、知りたくないの方が正しい気がする…。
「…お前は悲しいヤツだな」
心の中で言ったつもりが口に出ていたらしく、ナミトは俺を睨む。
「…どういう意味だ」
会話した中で聞いた事の無い、凄く低い声でナミトは言う。

すかさず俺は続ける。
「お前の先程の発言…お前は俺に殺されたがってるようにとれたが?いくら政府バカ共の命令とはいえ、そんなあっさり負けを認めるような雑魚じゃねーだろ…?お前は破壊ころされたいんじゃない、本当のお前自身を政府ここから解放して欲しいんじゃねーのか?」
俺はナミトを睨み続けながら言う。
「……………………っ!!」
見抜かれたようにナミトは口を噤む。
……あぁ…胸糞悪い。
昔の俺を見てるようで…今すぐにでもぶん殴りてぇ。
だが…おそらくここで殴ったら政府アイツらの思惑通りだろうな。

ふと俺は、ある提案を思い付いた。

「なぁ、ナミト…お前の今の体は壊れても本体には影響しねーのか?」
(自身の中で)落ち着いた声で質問を投げる。
「…あぁ、何も損傷はない…だが、俺は本体の意思で動いているからな、この会話の内容も全て知っている…だったらなんだ」
あぁ、そうかそうか…。
そして俺は少し笑みを浮かべながら言った。
「じゃあ、俺の提案を一つ聞いてくれよ」

「提案?内容にもよるな…」
やっぱそうか…でも、提案内容を聞けばその気になるはず…。
「安心しろ、互いに利益しかねぇからさ」
果たしてナミトは本当の"僕"がどんな顔してるのか理解できるのかな?
「ほぅ…興味深いな、それで…内容は?」
内容が気になるのか急かすナミト。
この提案にナミトが乗った瞬間、俺は"僕"と交代する。

一応言っておくか、本当の"僕"は戦闘狂だ。
え?今のでも充分戦闘狂だって?
それが違うんだなー。
俺は"僕"の狂気を人並みに扱ってるだけ、つまりただの仮面。
これはメンバー全員知っている。
変わろうとすると大抵瑞輝みずきが止めに来るから、目の前で変わったことは無い。
"僕"は威力を考えずに使うから、最悪人が死ぬ。
それでも平然としているから随分とタチ悪い。
だけど、今回は釘を指しておかねばならん。
『じわじわとやれ、絶対建物は壊すな』
そして終わったらまた交代してもらう。
一応頼みは聞いてくれるから、こちらとしては助かっている。

っと、話がだいぶ逸れたな。
そして俺は提案をふっかけた。
「本気で俺を殺しに来い…勿論手加減は無用だ、俺もそれなりの力でいかせてもらう」
殺しに来い、俺からその言葉が出るとは思わなかっただろう。
ナミトは信じられないように目を見開いている。
「安心しろ、お前は俺が壊すって決めてたからな…それにお前も俺ともっと殺り合いたかったやろ?」
早く、早く…。
早く、乗ってこい…そして…"僕"をもっと楽しませろ!
「…なかなか楽しそうな提案だな……」
ナミトがぼそりと呟いたのを俺は聞き逃さなかった。
これは、乗るな。
「いいだろう…ただ、貴様が死んでも俺は知らないからな」
…ナミトは承諾した。
それと同時に俺は"僕"と交代した。

さて、キミはいつまでその威勢が続くのかな?
僕は満面の笑みで言う。

ねぇ、ナミトさん。

「僕を楽しませてくださいね?」
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