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二話
しおりを挟む何だかんだ時は過ぎ、俺は四年制の高等学校に通うこととなった。勿論、王子たちも通うBLゲームの舞台となる学園だ。
ゲームの主人公がこの学園にやって来るのは来年。そして進むルートが決まり婚約破棄が行われるのは六月。
それまでが勝負だ。
攻略対象は四人。第二王子と生徒会長、先輩にクラスメイトだ。名前まではハッキリと覚えていない。
主人公のデフォルトネームは無く、容姿はダークブラウンの髪をしていて身長が第二王子の頭一個分低いという情報しかない。
「アダムと同じクラスで嬉しいよ。」
今のところ俺と第二王子の関係性に変わりは無い。…そう、変わらないのだ。
このままだと婚約破棄ルート一直線である。何とかして阻止しなければならないのだが、生憎と俺は今まで人の顔色を窺って生きたことがなかった。俺が笑えば皆笑うし俺が悲しめば皆悲しむのだ。
だからどうやったら第二王子が俺を好きになるのかさっぱり分からなかった。困った。
とりあえず俺の方から第二王子にアピールすることにした。…アピールってこれでいいのか?
「俺もだ。」
第二王子は少しも嬉しそうしていない。おかしい、普通は俺と同じクラスになれたら狂喜乱舞して喜ぶのに。
ほら、あいつらみたいに。
「やった、俺サンダルフォン様と同じクラスだ!!」
「いいなあ。僕、隣のクラスだよ…。」
後ろで騒いでるお前ら、正解。
クラスで自己紹介をし、休み時間は周りにちやほやされて過ごした。まさしく俺の日常だ。
昼食は第二王子と第一王子と共に食べることになっている。これは第一王子の提案だ。
「ねえサンダルフォンくん、お昼一緒に食べませんか?」
まあまあ可愛らしい女の子からのお誘いだが、俺は断らなくてはならない。
「ごめ「駄目だ。」アダム?」
ごめんね、と言おうとしたら第二王子が俺の言葉を遮ってきた。
「ミレクシアは俺と昼食を取る予定になっている。諦めてくれ。」
お、おう、その通りなんだがお前がそんな風に言うなんて珍しいな。いつも全然喋らないのに。
「え、そうなんですね、ごめんなさい。」
女の子はすごすごと去っていった。ごめんな、フォローしてやれなくて。
「行こう、ミレクシア。」
短時間で二回も名前を呼ばれたのなんて初めてだ。今日は雪でも降るのだろうか?
食堂の一角を陣取って食事する。相変わらず第一王子は底抜けに明るくて、いろんな話をしてくれる。無口で不愛想でちっとも俺を褒めてくれない第二王子とは大違いだ。
「あ、ミレクシア、口にソースが付いてるぞ。」
可愛いな、と言って正面に座る第一王子が手を伸ばしてくる。拭いてくれるのだろう。
全く、俺は所作も美しいはずなんだがとんだ失態だな。
「ん。」
あと少しで第一王子の手が俺の唇に触れる、といったところで横から手が伸びてきた。
なんと第二王子が俺の口元を指で拭き取り、あまつさえ指についたソースを舐めとったのだ。
「…あ、ありがとう、アダム。」
「いい。」
「チッ、俺が拭ってやろうと思ったのに。」
…こんな漫画のイケメンがやるような動作を第二王子がするなんて…明日は槍が降るに違いない。
それから数日経ち休日。俺は王宮にお茶をしに来ていた。いつかの幼い頃のように、ピアノを弾きながら歌う。
今日は第一王子は予定があるらしく、いるのは本を読む第二王子だけだ。
なのにどうして歌うことになったか、だって?俺が聞きたい。第二王子に何がしたいか聞いたら、「お前の歌が聞きたい。ピアノを弾きながら、な。」と言われたからだ。
なのに!本人は本を読みだすという…ふざけてんのか?舞い上がった俺の気持ちを返せ!
適当な歌を片っ端から弾きつつ歌う。二人だけの静かな時間だった。
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