超絶美形な俺がBLゲームに転生した件

抹茶ごはん

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一話

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俺、高島 美麗たかしま みれいは超絶美形だった。
歩けば誰もが振り返り、笑えば誰もが魅了された。美しい顔、声、身体、生きた美術品とは俺のことだ。
そんな俺は二十六歳という若さでこの世を去った。美人薄命とはまさにこのことだろう。

俺には妹がいた。俺には劣るが美しい妹で、修羅場を経験し過ぎて二次元しか愛せなくなった哀れな妹だった。
そんな妹がハマっていたのは『白い薔薇は愛の象徴となり得るか』通称白薔薇と呼ばれるBLゲーム。俺はその世界の、所謂モブキャラに転生していた。
何を言ってるか分からない?大丈夫、俺にもよく分からない。
モブと言っても結構重要なポジションにいるキャラで、攻略対象であるこの国の第二王子の婚約者という立場なのだ。
ゲームの中で第二王子は主人公にひとめぼれする、しかし第二王子には婚約者が。悩む第二王子だったが主人公への想いは止まらず、婚約を破棄し積極的なアピールをし始めるのだ。その描写がたまらないと妹は言っていた。
そう、前世と全く同じ顔をした超絶美形なこの俺に対して一方的に婚約破棄をするのだ。どのルートでも。
許せるはずがない。俺だぞ?ふんわりとした飴色の髪に輝く金色の瞳、白く磁器のような肌に美しい顔、声、身体。全身が美しさでできたこの俺を、一方的に捨てるだなんて…ありえない!!
正直第二王子とか俺より美しくないし好きでもなんでもないのだが、俺のプライド的に婚約破棄は許せなかった。俺の名誉と自尊心のため、どうにかしなくてはならない。
俺は決意した。この時、わずか七歳だった。

まず手始めに俺は自分を徹底的に磨いた。俺は俺の美しさを保つためなら何でもする。犯罪以外ならな。
次に第二王子に優しく接した。国王や王妃、他の王子たちにも愛想よく接した。周りが婚約破棄を止めてくれるように願って。
まあ元々俺は誰にでも優しいし愛想だっていいから、あんまり他と変わらないけどな。性格も美しくありたいものだ。
そんな俺は十歳になった。そして今日は王宮に遊びに行く日だ。
客間で大人しく第二王子が来るのを待つ。第二王子…アダム・R・クリストフは、黒髪に銀の瞳を持つ少年だ。
ガチャリ、音を立てて扉が開く。誰かと思えば第一王子のアレンだった。
「ミレクシア!来てくれたんだな!」
お前に会いに来たわけではないのだが…まあいい、歓迎してくれる分には。
「アレン王子。」
「なあミレクシア、ピアノを弾いてはくれないか。歌も歌ってほしいんだ。」
「喜んで。でもここでアダム王子を待つようにって言われてるんだ。アダム王子は?」
金髪碧眼に少しくせっ毛のアレンは、口をとんがらせてこう言った。
「ああ、アイツはミレクシアの婚約者だもんな。待っててくれ、すぐに呼んでくる。」
俺は公爵家の長男で一人っ子だ。妹がいないのは少し寂しいと思わなくもない。
立場的に敬語を使うべきなんだろうがタメ口でいいと言われているため普段はこんな感じだ。すっかり仲のいい友達である。
「ミレクシア、アダムを連れてきたぞ!」
「引っ張らないでよ、兄さん。」
おそらく読書でもしていて俺の訪問の時間に気が付かなかったのだろう。ムカつくが顔には出さない。
「ごめんなさい、アダム王子。待っていても来ないからどうしたのかなって聞いたら、親切なアレン王子が呼びに行ってくれたんだ。読書の邪魔しちゃった?」
少し悲しそうな顔で問いかける。俺ってばどんな顔してても犯罪級に美しいもんな~。
「あ、いや、別に大丈夫。俺の方こそ忘れててごめん。」
うんうん、素直に謝れるのはいい子だ。忘れてたのは許さないけど。
「さあミレクシア!歌とピアノだ!」
第一王子は元気がいいなあ。
「アダム王子、本持ってきていいから一緒に行こう?」
「う、うん。」
第二王子は人見知りなのか口数が少ないしぶっちゃけ暗い。いつも王宮に遊びに行くとこんな感じで第一王子に振り回されている。
第二王子は本を取りに行き、俺と第一王子はピアノのある大広間に行った。
「今日は何を弾く?」
「白い薔薇の歌がいい!」
白い薔薇の歌、というのはゲームのテーマ曲の歌詞が無いバージョンだ。この国ではそれなりに有名な曲である。
黙って第二王子が部屋に入ってきた。二人が席に着いたところを確認してからピアノを弾く。前世からピアノは得意なんだ。
「らーらららあーららら」
うろ覚えの歌詞を思い浮かべながら歌う。我ながら綺麗な歌声だ。
最後まで歌い切るとパチパチと第一王子が拍手してくれる。いい子だ。
第二王子は本を読んでいる。…いや、持ってきていいとは言ったがガン無視かよ。俺の素晴らしい歌声を聴いて感想とかないのか??
「ミレクシア、素晴らしい歌と演奏だった!なあ次は森と狩人の歌がいい!」
第一王子は頬を赤く染めて興奮気味に次のリクエストをしてくる。そう、これが正しい反応だ。
「分かった。」
ゲームではストーカーかな?というくらい主人公に付きまとって熱烈アピールしていたらしいのに、この俺には塩対応…クソが。第二王子、貴様のような男は嫌いだよ!!
「ある日の~森の中~」
本気で歌った。オペラ歌手もびっくりの美声で美しく歌い上げた。二人の方を見れば…
「凄い!流石ミレクシアだ、俺はこんなに綺麗な歌声の人は知らないよ!」
うむ。第一王子はお手本のような素晴らしい反応だ。結婚する?
「………。」
第二王子は黙って本を読んでいた。心なしか眉間にしわが寄っている気がする。
…第二王子、てめーは駄目だ!!!

それからしばらく俺は歌わされ、一時間ほどしてお茶の時間になり簡単なお茶会をして解散した。俺は帰った。
自室で一人になり、クッションを思いっきり殴った。ごめんよクッション。
「このままじゃ第二王子に捨てられる…この俺が?はは、ありえないだろ…。」
弱気になるな、負けるな。あんな礼儀も知らないお世辞も言えない小僧にこの俺が泣かされてたまるか。
俺は打倒第二王子を心に誓った。
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