人生イージーモードになるはずだった俺!!

抹茶ごはん

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第二章

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待ちに待った夏祭り──またの名を夏至祭の日。
無事集合した俺達三人は、大いに祭りを楽しんでいた。
「綿あめ、焼きそば、林檎飴。フランクフルト、ポテトにかき氷。後は何を食べてないかな。」
「レオンはよく食べるよな…おっ、射的しようぜ!」
「お面買ってきてもいいか。」
このメンバー協調性が皆無だな…俺も人のことは言えないが。
「いいね、射的。並んでおくからお面買ってきなよ。」
「そうする。」
アレクは先程通り過ぎたお面売りのところへ歩いて行った。
「射的だ!なあレオンはどれが欲しい?」
「駄菓子かな。あれが食べてみたい。とってくれるの?」
「おう、任せとけ!」
すぐに順番は回って来た。猟銃を構える姿も結構、様になっているじゃないか。
「見てろよ~それっ!」
得意げにヨルハが弾を打ち出すと、見事に俺が欲しいと言った駄菓子の詰め合わせにヒットした。うまいな!
「わあ、すごいね、ヨルハ!」
「へっへへ、ま、こんなもんよ。」
ヨルハは得意げだ。俺は銃は上手く扱えないので素直に尊敬する。
景品として駄菓子を受け取り射的の屋台を後にする。アレクはまだのようだ。
「アレクいないね。お面のとこそんなに混んでなかったと思うんだけど…。」
「な。行ってみるか?」
「うん。」
そしてお面売りの屋台まで来てみたのだが、そこにアレクはいなかった。この人混みだ、入れ違いにでもなったか…?
「花火見る場所は決めてたんだし、花火の時間にまた合流できるだろ。時間勿体ないし俺達だけで回ってようぜ。」
確かに南の帝都大橋で花火を見る予定だった。その時間に行けば会えるだろう。携帯なんて便利なものはないし、その方が確実かもしれない。
「うーん、仕方ないか。うろついてたら会うかもしれないし。」
全くどこに行ったんだ、アレクのやつ。

二人であちこち屋台を回る。この世界特有の食べ物もあって非常に楽しかった。
「じゃがバタだ!ヨルハ、あれも買おう。」
「ラムネあるぞ、飲もうぜ!」
「焼きトウモロコシ食べてなかった、行こう!」
「魔牛の焼き串…?美味いのか?」
「水風船すくいしよう!」

「はー。もう全部回ったんじゃないか?」
会場の端から端まで行っただろう。アレクとは会わなかったが。
「こんなに歩いたの久しぶりだよ。足痛くなっちゃった。」
まあ魔法ですぐ治せるんだけどな!
「大丈夫か?俺も痛いけど。」
「治してあげるよ。『癒せ、治せ──』」
詠唱し痛む足を治してやる。自分も治しておしまいだ。
「サンキュ。もうすぐ花火の時間だな。」
「そうだね、帝都大橋まで行かないと…」
「レオン。」
立ち上がって行こうとすると、真剣な声音のヨルハに呼び止められる。
どうした?
「なあに?」
笑顔でヨルハに向き直る。夏季休暇の時もアレクにこんな風に呼び止められたっけ。
「レオンはさ、第二皇子のことどう思ってるんだ?」
…急になんだ。
「どう、ってそりゃ、人として皇族として尊敬して──」
「そういうんじゃなくて。好きか嫌いかで言ったら?」
本当にどうしたんだ?ヨルハは怖いくらい真剣な表情だ。
「えっと、好きだよ。十歳の頃から一緒だし、これからもずっと隣にいる人だもの。嫌いになんてなれないよ。」
「そっか。じゃあ、もしも第二皇子に何かあったら、レオンは悲しいか?」
「……悲しいよ。イヴァに何かした奴のこと、僕はきっと許さない。」
ずっと一緒だったイヴァングに情が移ったのは事実だ。この感情は、作り物じゃない。
「…そっか。」
「なんでこんなこと聞くの?」
これは率直な疑問だ。何故?返答次第ではヨルハ相手とはいえ…。
「…いや、実はな、お前らがデキてるって噂を聞いたんだよ。だから本当かどうか確かめたかったんだ!俺レオンのこと好きだし。」
急に明るいトーンになってヨルハは話し出した。
なんだって?
なんて噂だ!俺はボンキュッボンの美少女と付き合うって決めてるんだぞ!!
「その噂はデマだから。今度聞いたらしっかり否定しといてね!!」
「おう!」

無事に帝都大橋でアレクと合流し花火を眺めた。形や色はシンプルだが、空の星と相まってとても美しかった。
「そういえばアレクはどうしてたの?」
「一人で回りつつレオンを探してた。何処にいたんだ?」
「お面売りの屋台まで探しに行ったんだけどいなくて…やっぱり入れ違いだったのかな。」
「みたいだな!アレクお前方向音痴なら先に言っとけよ~。」
「違う。…おかしいな、一本道なのに。」
アレクは納得がいっていないらしい。しかしあれだけ歩き回って出会えなかったのも事実だ。
「花火はちゃんと一緒に観られてよかった。」
「ああ。」
こうして、俺の初めての夏至祭は幕を閉じた。
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