人生イージーモードになるはずだった俺!!

抹茶ごはん

文字の大きさ
上 下
8 / 26
第一章

俺の人生イージーモード計画2

しおりを挟む
「累、戻っていたのか」
「うん、つい今しがたね。とりあえずこれを着ろ」
兄が買ってきてくれた服を着ようとして、ああ、と思い出した。
「兄さん、申し訳ないんだけどシャワーを貸してくれないかな」
項に京極の匂いがついているというのであれば落としたいし確認しなければならない事もある。確かめるのは怖い。けれど、先送りしてもいい事などない。杞憂ならいいが、そうでなかったら放置は事態を悪化させるだけだ。
「いいよ」
蓮兄さんが何かを言いかけるのを兄さんが遮って言ってくれた

震える手で洗面台の兄の保湿クリームの裏に隠した検査紙を取り出す
カミソリで軽く指を切る。そのまま血液をたらした。俺が不安になりすぎているだけだと証明してくれ!
……
1分、たった1分の待ち時間がとてつもなく、とてつもなく長く感じた。
………
以前に試しで計測した時は、Ω値は検出されなかった。
今ははっきりと検出されている。この値がどれくらい危機なのかわからない……!
『この線を超えたら完全にΩに変わったと言う事よ』
まだ、半分だ。半分。でもここで止まってくれるのか!?

頸から、ニオイがした気がした。浴室に飛び込んだ。全身を思いっきり擦り洗いする。何度も何度も洗う。熱いお湯がひりついた肌に染みる。それでもまだ、うなじからニオイがする気がして悲鳴が漏れる。
俺はどこまで ピッチングが進んでいるのだろうか
蓮兄さんにうなじを嗅がれただけでゾワッとした。
けれど、ヒートは来ていない。まだ間に合うのだろうか
そしてコンちゃん、コンちゃんの言っていたことは正しかった。
この世界が小説の世界だなんて思いはしない。けれど、コンちゃんは未来予想、未来予見の力をもっていたのではないのだろうか

『いい?京極はね、陸の努力を全て台無しにするの。私は陸がαらしくあるためにどれだけ努力をしてきたかを知っている。お兄さんと比べられてどんなに辛かったかも知ってる。それを跳ね返すためにどれだけの努力をしてきたかを知っている。なのにあいつは……』

コンちゃん、俺はすごく努力をしてきたよ 
βでありながら優秀な兄。

『βであれだけ優秀なのだから、弟はαだし、すごいのだろうな』
『うちの小学校から帝都大卒が出るんじゃ!?』
『なんだ、α様ってたいした事ないんだな』
『あれだけ 優秀なβの弟のくせして、αなのに大したことはないんだな』
『逆の方が納得いくよな』
『詐欺なんじゃね?』
『測定が間違ってるじゃ?それとも自分でズルしたのかね、兄の血液とすり替えたりしたとかさ』

ずるりと浴室の床に座り込んだ
ずっと言われてきた言葉。それを跳ね返すためにずっと頑張ってきた。
コンちゃんは俺のそういった姿を見てもいないのに分かってくれていた。
結果の出てない俺を、結果の出せない俺のそれまでの姿勢を見てくれたのだ。 経過を評価してくれたのだ。
そんなコンちゃんに惹かれた
 2人で幸せになれると思ってた。コンちゃんは優秀な優秀なΩだ。俺は出来そこないのα
 世間的に求められる像とはほど遠い2人。
でも割れ鍋に綴じ蓋。世間の評価なんて関係ない、俺たちは番って幸せな家庭を作れると思っていた。

でも……
俺はいつまでαでいられるのだろう……

しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

転生悪役モブは溺愛されんで良いので死にたくない!

煮卵
BL
ゲーム会社に勤めていた俺はゲームの世界の『婚約破棄』イベントの混乱で殺されてしまうモブに転生した。処刑の原因となる婚約破棄を避けるべく王子に友人として接近。なんか数ヶ月おきに繰り返される「恋人や出会いのためのお祭り」をできる限り第二皇子と過ごし、婚約破棄の原因となる主人公と出会うきっかけを徹底的に排除する。 最近では監視をつけるまでもなくいつも一緒にいたいと言い出すようになった・・・やんごとなき血筋のハンサムな王子様を淑女たちから遠ざけ男の俺とばかり過ごすように仕向けるのはちょっと申し訳ない気もしたが、俺の運命のためだ。仕方あるまい。 俺の死亡フラグは完全に回避された! ・・・と思ったら、婚約の儀の当日、「私には思い人がいるのです」 と言いやがる!一体誰だ!? その日の夜、俺はゲームの告白イベントがある薔薇園に呼び出されて・・・ ラブコメが描きたかったので書きました。

アルファな俺が最推しを救う話〜どうして俺が受けなんだ?!〜

車不
BL
5歳の誕生日に階段から落ちて頭を打った主人公は、自身がオメガバースの世界を舞台にしたBLゲームに転生したことに気づく。「よりにもよってレオンハルトに転生なんて…悪役じゃねぇか!!待てよ、もしかしたらゲームで死んだ最推しの異母兄を助けられるかもしれない…」これは第二の性により人々の人生や生活が左右される世界に疑問を持った主人公が、最推しの死を阻止するために奮闘する物語である。

メインキャラ達の様子がおかしい件について

白鳩 唯斗
BL
 前世で遊んでいた乙女ゲームの世界に転生した。  サポートキャラとして、攻略対象キャラたちと過ごしていたフィンレーだが・・・・・・。  どうも攻略対象キャラ達の様子がおかしい。  ヒロインが登場しても、興味を示されないのだ。  世界を救うためにも、僕としては皆さん仲良くされて欲しいのですが・・・。  どうして僕の周りにメインキャラ達が集まるんですかっ!!  主人公が老若男女問わず好かれる話です。  登場キャラは全員闇を抱えています。  精神的に重めの描写、残酷な描写などがあります。  BL作品ですが、舞台が乙女ゲームなので、女性キャラも登場します。  恋愛というよりも、執着や依存といった重めの感情を主人公が向けられる作品となっております。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。

公爵家の次男は北の辺境に帰りたい

あおい林檎
BL
北の辺境騎士団で田舎暮らしをしていた公爵家次男のジェイデン・ロンデナートは15歳になったある日、王都にいる父親から帰還命令を受ける。 8歳で王都から追い出された薄幸の美少年が、ハイスペイケメンになって出戻って来る話です。 序盤はBL要素薄め。

乙女ゲームが俺のせいでバグだらけになった件について

はかまる
BL
異世界転生配属係の神様に間違えて何の関係もない乙女ゲームの悪役令状ポジションに転生させられた元男子高校生が、世界がバグだらけになった世界で頑張る話。

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

実は俺、悪役なんだけど周りの人達から溺愛されている件について…

彩ノ華
BL
あのぅ、、おれ一応悪役なんですけど〜?? ひょんな事からこの世界に転生したオレは、自分が悪役だと思い出した。そんな俺は…!!ヒロイン(男)と攻略対象者達の恋愛を全力で応援します!断罪されない程度に悪役としての責務を全うします_。 みんなから嫌われるはずの悪役。  そ・れ・な・の・に… どうしてみんなから構われるの?!溺愛されるの?! もしもーし・・・ヒロインあっちだよ?!どうぞヒロインとイチャついちゃってくださいよぉ…(泣) そんなオレの物語が今始まる___。 ちょっとアレなやつには✾←このマークを付けておきます。読む際にお気を付けください☺️ 第12回BL小説大賞に参加中! よろしくお願いします🙇‍♀️

処理中です...