人生イージーモードになるはずだった俺！！

序章

６

あの不良…グレイの言う通りに進めば大通りに戻ってこれた。慌てて駆け寄って来るヨルハ達に迎えられ、特に問題無く修学旅行は終わった。
怖かった…隣国の王族に手を上げたとなれば国際問題だ。向こうがその気じゃなくて本当に良かった…。
もう喧嘩はすまい。そう固く誓った。

それからも悲しいことに何事もなく日々は過ぎ、結局新たな友達も彼女もできずに卒業式を迎えてしまった。まあ何か問題が起きるよりはいいか…。
「レオンも高等部へ持ち上がりだろ？」
「うん。ヨルハ達も？」
「ああ。俺もそうだよ。」
「俺もだ。」
「じゃあみんな一緒だね。ちょっと安心したよ。」
一から新しく友達を作れる自信が無い。何故だ、俺は成長してこんなにも美人になったというのに…！
家柄だって公爵家の息子というもので、性格は穏やかで優しく面倒見もいい。甘くて澄んだ声は声優さながらで、腹筋だって薄くだが割れている。白銀の髪は今もさらさらで指通り良く、秋の満月のような銀の瞳はキラキラと輝いている。肌は白くきめ細やかで、手足や指は細長く身長だって百七十はある。
そう、まるで人形のように完成された美顔美体を持つこの俺は、人生イージーモードのはずなのだ。…たぶん。

冬休みが過ぎれば四月から高等部に入学することとなる。今度こそ、彼女を作って青春を謳歌するのだ！
そんな決意を胸に抱く俺は知らなかった。これから俺の身には、様々な事件の数々が待ち受けているということを──。

序章　完