告白1秒前

@るむば√¼

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ひなたとひかげ

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一目見て夢中になった。
あの子、徳島浩史好きなんだ。
声をかけずにはいられなくて話しかけてみた。
そしたらその子は人と話すのが苦手なのかおどおどしながら答えてくれた。
俺にはそれで充分だった。
おかしいな。今学期から人とはあまり関わらないようにしようって思ってたのに。
とわもあんなんだし、兄ってバレたらまずい。
人と深く関わるとバレるリスクが高まる。
それに、あのこともまだ.......

ーーーーーーーーーーーーーーー
あの子が代表リレーに選ばれたらしい。
でもあの子は辞退する!って言い張ってた。
本当は励ましの言葉をたくさん言ってあげたかったけどその勇気は出なかった。
でも結果的に代表リレーの選手として頑張ること決めたらしいから良かった。
俺の言葉なんていらなかったらしい。
佐久間優一と、藤山詩音の言葉だけで.......
佐久間優一.......

ーーーーーーーーーーーーーーー
その日の夕方、俺はいつものように図書館に行った。
そうしたら、あの子がいた。
一生懸命棚に並べられた本を取ろうと、爪先で立って思いっきり手を伸ばしている。
後ろからバレないように近づいて本をひょいっと取ってあげたら、あの子はびっくりしながらお礼を言った。
その後も、図書館で何度か会ったり、あの子と関わる機会がすごく増えた。
会う度、関わる度、ドキドキして、どんどん好きになっていく。
図書館から公園まで背負って来た時、あの子が軽すぎてびっくりしたっけ。
最近の事のはずなのに、何年も前の事のような気がして寂しくなる。
これも、あの子のことが好きだから故の事なのだろうか。
こんなに人を好きになったのは初めてで自分でも困惑している。
でも、今凄く幸せだから良いんだ。
とわがあの子を無理やり連れて行こうとしているところを見た時、実の兄とはいえ、一瞬殺意が芽生えた。
もしあの子が男を怖がるようになってしまったりしたら、本当に殺してしまおうと思った。
大袈裟だと思うかもしれない、大袈裟かもしれない。
それでも俺はあの子を守りたい。

ーーーーーーーーーーーーーーー
「俺の好きな人は.......篠原なんだよ、」

「え?」

「うん」

「え、なんて言った?全然聞こえなかった」

「はっ?!」

「ごめん、もう1回言ってくれる?」

「 言えるか!」

「え、なんでよ~」

聞こえなかったとか.......
天然かよ。かわいっ
あの子はずっと俺の言いかけたことが気になっていたけど、何回も言えるもんじゃない。
あの子は頬を膨らませて怒っていた。

ーーーーーーーーーーーーーーー

朝、登校すると俺のもとに篠原がやってきた。
一気に心拍数が上がる。

「おはよう。この前は本当に助けてくれてありがとうね」

「お礼なんて言わなくて良いよ。」

「木原くんがいなかったら、私どうなってたか.......」

「考えただけでゾッとするね」

「おはよ~!」

すると突然教室のドアからとわが姿を現した。
篠原は驚いてさっと俺の後ろに隠れた。
頼られているみたいで凄く嬉しい。

「お前、何しにきたんだよ」

「そんな怖い顔するなよ。」

「誰のせいでこんな顔してんのか分かってんのか?」

「分かってるよ。ミヤちゃんと2人にしてくれない?」

その言葉を聞き、篠原は俺のシャツをきゅっと掴んだ。
その行動に嬉しくてたまらず、思わず緩みそうになる頬を抑える。

「分かってねーだろ。ふざけるのもいい加減にしろよ。」

どんどん苛立っていく俺にさらに油を注ぐようにとわはニヤニヤしながら挑発してくる。

「そんなんで大好きなミヤちゃんを守ってるつもりかよ笑」

「え?」

篠原はキョトンとしてこちらを伺っている。

「っ.......!」

俺は意を決して言葉を放った。

「あぁ守るさ。守ってみせる。」

「え!」

篠原は口をぽかんと開けて俺を見ている。
俺は恥ずかしくて目を逸らした。

「き、木原くん、それってどういう.......」

あぁもうやけだ。
俺はもう一度篠原に目を合わせた。
篠原も真っ直ぐ俺の目を見つめている。

「篠原、今度は1回で聞けよ」

「え?」
篠原はちょっと困惑したような顔をしている。
篠原はどんな反応をするんだろう。
怖くて怖くて仕方がない。

「篠原、俺は篠原の事が好きだ!ちゃんと篠原の事大事にする。守るから俺と付き合ってください、」

篠原は驚いたような、少し泣きそうな顔をしている。
返事を聞くのが怖い.......
それにここは2Dの教室だ。
みんな俺に視線を向けている。
明日からきっと注目の的になってしまうのだろう。
篠原はちゃんと答えてくれるだろうか。
それ以前にちゃんと聞こえただろうか。
このまま流されたらどうすれば。
様々な不安が頭の中で飛び交っていて俺はプチパニックになっていた。
恥ずかしさと緊張でおかしくなりそうになっているとやっと、篠原は口を開いた。
篠原の頬には一筋の涙が流れていた。

「う、う、嬉しいです。」

「う、うん」

「でも」

「.......」

振られてしまうのか。

「私はコミュ障で、可愛くも、頭が良くも、運動神経が良くも、面白くも無いんだよ。私が木原くんに釣り合うとは到底思えない。」

「釣り合うとか釣り合わないとかどうでもいいんだよ。お互い、好きあっていて一緒にいて楽しければ、俺はこれ以上のものは無いと思ってるよ。」

「.......私も.......そう思う。私も.......木原くんのこ、ことす、好き.......だから。」

篠原は声を震わせて一生懸命そう言った。
その姿が可愛すぎて今がそんな状況じゃないことは分かってはいるが、可愛いと思わざるを得なかった。

「付き合おう。」

俺も声を震わせてそう言った。
声だけじゃなくて、足や、唇、体全体が震えている。
俺の言葉を聞き、篠原は
「うん。」
と言った。
その瞬間教室全体から大歓声が巻き起こった。
「木原良かったなっ!」

「木原ー!!俺を置いていくなよ!ずっと友達だぞぉぉ!」

「ミヤ!おめでとう!」

「ミヤについに彼氏がっ!」

藤山は感動して大号泣している。
俺はほっと安心して胸をなで下ろした。
嬉しさと達成感のあまり、俺まで泣けてくる。
好きな人と付き合えるってこんなに嬉しいことだったんだ。
一気に篠原との想像が膨らみ、ワクワクしてきた。
これからきっと、たくさんのところに行って幸せに過ごすんだろう。
明日が楽しみになり今ならなんでも出来るような気がする。
篠原の方を見ると、俺にほっと笑いかけてくれた。
これが女子がよく言う、胸キュンというやつなのだろう。
再び泣きそうになる。
いつの間に俺はこんなに篠原のことを好きになっていたんだろう。
大歓声の中、俺と篠原の幸せな日々が幕を開けた。

ーーーーーーーーーーーーーーー

「篠原、俺は篠原の事が好きだ!ちゃんと篠原の事大事にする。守るから俺と付き合ってください。」

その言葉を聞き、一瞬にして思考が停止した。
木原くんが何を言っているのか分からない。
やっと理解したのは言われてから1分後ぐらいのことだった。
嘘告だってことも考えたけど、木原くんがするわけないと信じているし、こんな大勢の前でわざわざ嘘告するなんておかしい。
本当の本当の本当の告白だと認知したら、自然と涙が出ていて言葉が出なかった。
早く返事しなきゃ.......!って焦るけど上手く話せない。
やっと少し落ち着いて、一語、一語ゆっくり話している時のことはあんまり記憶にない。
あるのは、クラスのみんなの大歓声と、詩音が泣いて喜んでくれたこと、木原くんと目が合って笑ってくれたことぐらいだ。
嬉しさのあまり記憶が吹っ飛んだとでもいうのか。
とにかく、今でも信じられない。

ーーーーーーーーーーーーーーー

「ミヤ!」

「流星!」

「ごめん、待った?」

「全然。」

「そっかなら良かった。」

「じゃあ、行こっか」

「うん!」

告白から一週間が経ち、私達は仲良くやっている。
詩音にはバカップルとまで言われている。
まだ1週間しか経っていないのに、写真のアルバムには流星との写真が大量にあったり、彼氏が出来ると今までの生活がガラッと変わることにまだ体が追いつけていない。

「今日はどこに行くの?」

「今日はお台場行こうと思ってるんだけどどう?」

「良いね!お台場。」

「ミヤが喜ぶと思ったよ」

「なんでも分かるんだね」

「みてたら、わかるよ」

「き、木原先輩とおんなじこと言うんだね」

「嘘っ、同じこと言って、た?」

「うんうん。」

「まじかー!最悪!」

「あはは、まあ兄弟だし似るもんだよ」

ミヤと流星は電車に乗り、お台場へ向かった。
お台場に着くと、流星はミヤと手を繋ぎ、ミヤを先導する。

「どこに行くの?」

ミヤが聞くと流星はニヤニヤしながら答えた。

「今日、お台場で何が開催されるか知ってる?」

「え?知らない」

「ふふ。ミヤと俺の出会いの原点!徳島浩史のサイン会があるんだよ!!!」

「え!そうだったの?!」

「そうだよ!知らなかったでしょ」

「うん!知らなかった!」

「だって隠してもん」

「覚えてろよ!」

「ははっ!行こう!」

「うん!」

ミヤと流星は元気に歩き出した。
サイン会の会場はたくさんの徳島浩史ファンで溢れかえっていた。
みんなお気に入りの1冊を手に持ち、ウキウキしている様子だ。

「私、本持ってきてないや.......」

「ごめん。それは俺が伝えてなかったのが悪かった。」

「大丈夫だよ。」

「だから、持ってきたよ!」

そう言って、流星はバックから2冊の本を取り出した。

「はい!恋然るべき時!」

「これ.......!」

「持ってなかったでしょ?この本は」

「うん、図書館で読んじゃったから買わなかった。」

「うんうん、1回読んじゃった本ではあるんだけど、俺の好きな1冊だから受け取って?」

「もちろん!嬉しいよ、ありがとう。」

「良かった。」

そしていよいよ、徳島浩史と対面する時が来た。
流星も緊張しているらしく、口数が少ない。
無理もない。
だってずっと好きで憧れ続けていた人が目の前にいて、サインも貰えちゃって、しかも会話だって出来ちゃうんだ。
私だって上手く話せるか不安だ。

「次の方どうぞー」

スタッフさんの合図で私達は徳島浩史が座るテーブルへ誘導される。
徳島浩史は私達を笑顔で見ていて、私は軽く会釈をした。
「こんにちは。来てくれてありがとうね」

「い、い、いえ!」

ミヤと流星は恐る恐る本を差し出す。
「おっ、恋然るべき時か。この本にサインするのは初めてだよ。珍しいね」

「俺がずっと好きだった1冊なんです。」

「そうか、そうか。嬉しいよ。2人はカップルかな?」

徳島浩史は本にサインをしながらそう言った。

「え!は、は、はい!」

「そうか、そうか。いいかい、長く付き合っていくためにはね、相手の隠し事さえ愛するんだ。分かったかね?」

「あ、は、はい。」

ミヤにはその言葉の意味がよく分からなかったが、流星の方は真剣な面持ちでその言葉を受け止めていた。

「今日は来てくれてありがとうね、お幸せに!」

「はい!ありがとうございました!これからも頑張って下さい!」

「はぁ~、終わっちゃった~」

「楽しかったな。」

「うん!私の人生で幸せだった出来事TOP3に入るくらい幸せだった」

「そっか!喜んで貰えてよかったよ。」

「連れてきてくれてありがとうね!」

「全然!」

ミヤ達がお台場の街を歩いていると、誰かに声をかけられた。

「あれ?流星とミヤちゃん?」

その声に2人はギョッとし、ゆっくり声のする方を見た。
そこにはやはり、何人かの女性を連れたとわが立っていた。

「とわっ?!」

「木原先輩?!」

「やっほ~」

「なんでお前ここに居るんだよ!」

「俺はお台場を歩いちゃ行けないのか?」

「ねぇねぇ、とわ、この人達誰?」

木原先輩の連れの1人がそう尋ねた。

「えっとね、こいつが俺の弟の流星。こっちの子が俺の彼女のミヤちゃん!」

「は!え?!」

「へぇ、第何彼女?」

「第6彼女かな~」

「なーんだ、私より後輩じゃん!」

「か、彼女になった覚えないんですけど」

「どーも、私、第3彼女のみゆうでーす!よろしく!」

木原先輩の右隣の女の人がそう言った。
すると、木原先輩の左隣の女の人が、
「私、第2彼女のさくらでーす!」

と言った。

き、木原先輩何人彼女いるの?!
しかも、彼女全員が浮気を受け入れてる?!
どういう状況か全く理解出来ない。
いや、これは理解しちゃいけない状況なんだ。
ミヤが唖然としていると、とわが口を開いた。

「あっ!そうだ、ちょうどいい、面白いもん見せてあげるよ。ついてきて。」

「誰がお前なんかについて行くかよ。」

「そう?これは把握しておいた方が良い事だと思うけど」

「なんのことだよ。」

「それは来たらわかるよ」

「行くわけねーだろ」

「本当に良いの?大事な友達が苦しんでんだよ?」

「え?どういうことですか?」

「ミヤちゃん、来る?」

「.......流星が一緒なら。」

「分かった。ミヤが行くなら行くよ。」

「じゃあ決まり!ってことで、さくらとみゆうはもう帰って良いよ。」

「えぇ、もう終わり~?」

「ごめんね、また埋め合わせするから。じゃあね。」

「はーい、ばいばーい!」

さくらさんとみゆうさんは従順に木原先輩に従い、速やかに帰って行った。

「じゃあ、いこっか。」

「はい。」

私の横には常に流星が付いていてくれて私は安心して木原先輩について行った。
ついて行くと、お台場の目立たない、人気の無いところまでやってきた。

「ここら辺かな。ミヤちゃん、流星、こっから見てみ。」

木原先輩に言われるままに柱の陰から覗いてみると、なんと、優一とりみが腕を組んでイチャイチャしている光景が広がっていた。
人気のない道から1本外れると数々の飲食店やアパレルショップなどが建ち並ぶ大通りがあるようで、2人はそこでデートしているらしい。

「なんで、優一とりみが.......」

「ミヤちゃん、君のせいだよ」
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