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『9.星の子たち〜子役時代〜』
まさかのお誘い
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連日の公演は大好評だ。
ルシファー始め、
舞台上と舞台裏の星たちが輝いてくれた成果だ。
すでにロングランも決まり、
俺は胸をなで下ろしていた。
しかし、俺は胃の痛むようなことに悩まされていた。
「⋯⋯嫌なら断っても良いんじゃないかな」
ルシファーが心配そうに隣で俺を見つめる。
あろうことか、父プロキオンが
今度一緒に食事でも、
と誘いの連絡をよこしたのだ。
「断る勇気すらない⋯⋯星のように弾けて消えたい気分だ⋯⋯」
めったにない父からの連絡というだけで冷や汗ものなのに、
一緒に食事だなんて⋯⋯
飲み物すら喉を通らないだろう。
つられて冷や汗をかく
ルシファーが俺の肩へ手を置く。
「いや、消えんなよ。
⋯⋯あ、じゃあさ、俺も一緒に行くよ。それならいくらかマシだろ?」
堕天使ルシファー、天使の救済だ。
「⋯⋯ルシ、ほんとうにお前は最高だ」
ルシファーがはっとした顔で俺を見た後、少し頰を赤らめた。
「……その名前で呼ぶなよ。照れくさいだろ」
ルシが視線をそらしながらそう言うのが、なんだか新鮮だった。
いつも余裕たっぷりな態度で
俺をからかってくるくせに。
「……ああ、悪い。じゃあ、やっぱり『一番星』って呼ぶか?」
からかうように言いながら
軽く笑うと、
やつは少し口をとがらせた。
「あんたなあ……いいか、次に変な名前で呼んだら、夜に仕返しするからな」
「……ほう、それは愉しみだ。一体どんな計画だ?」
ルシファーは悪戯っぽく目を細めた。
その目つきは、
おもわず魅入ってしまうほどに色っぽい。
「お愉しみは取っといた方が愉しめるだろ?」
「……小悪魔が。お前の体力が持つか心配だな」
「⋯⋯あんたが言うとほんとに返り討ちにされそうで怖いよ。絶倫野郎」
俺がため息をつくと、
やつはくすくすと笑い出す。
その笑顔には、嫌なことも
「まあ良いか」と
思わせてしまう効果がある。
「まあ、真面目な話。
俺が一緒なら、ちょっとくらい肩の力抜けるだろ?」
そう言って、ルシファーは俺の肩を軽く叩いた。その手のひらから伝わる温かさに、俺は少しだけ緊張が和らぐのを感じた。
「……ほんとに助かる、ルシファー。お前がいてくれるなら、きっと何とかなる気がする」
「だろ? 俺って頼れるだろ?
天狼様の相棒だもんな」
そう言って、彼は自慢げに胸を張る。
紅い瞳は
いつもと同じように優しく、
けれどどこか妖しく光っていた。
「ありがとう、ルシファー。本当にお前がいてくれて良かった」
「⋯⋯それ、俺の台詞じゃん。スキャンダル喰らった時、俺があんたに言った台詞⋯」
ルシファーは金の髪をかき上げる。
隠しきれない照れがにじむ
その仕草に、
俺は思わず笑ってしまった。
「なに笑ってんだ監督様。
⋯⋯くそっ、ちょっと前まで、あんなに俺の挑発にすぐ乗ってたのに」
「未だにすぐ乗るぞ」
俺が肩をすくめると、
やつは「たしかに!」と肩を揺らして笑う。
その笑い声を聞いていると、
不思議と希望が湧いてきた。
***
後日。
緊張の中、俺はルシファーと一緒に父の待つレストランへ足を踏み入れる。
父の姿を認めると、思わず身が竦むような気がしたが、隣に立つルシファーが俺の背を軽く叩いてくる。
「大丈夫だって。ほら、胸張れよ」
「……お前がいるなら、まあ何とかなるか」
「そうだよ、一番星がついてんだから安心しなよ」
その言葉に支えられながら、俺は父の待つ席に向かう。
まだ胃は痛むし、緊張は拭えない。
けれど、ルシファーが隣にいるだけで、不思議と何とかなる気がしてきた。
どんな雨も止むように、俺の中の雨雲もいつか光に溶けていく――そんな気がした。
『星の子たち ~子役時代~』おわり
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