【完結】四肢切断 - 目が醒めたら -

くるんてぷ

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忍び寄る悪意

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ホテルを背に歩きだすと、野犬がうろついていた。噛みつくような気配はないが、警戒しながら歩く。
GPSで携帯電話の地図上の自分の足取りを確認しながら先ほど予約した宿へ向かう。
通りには屋台がでておりまばらに人が歩いていた。次第にあたりは暗くなっていく。

10分ほど歩き携帯電話の地図を見ると、通信事情のせいか、麻尋の位置情報が変化した。まるで麻尋が予約したホテルと逆方向に進んでいるように見える。焦る麻尋。土地勘がない上に目立つ建物もない。少し戻ってみるが位置情報は動かぬまま。人気がない通りにたたずむ麻尋。人の往来がある通りに出たい。
麻尋がたたずむ通りの両側には古びたトタンの塀が続く。トタンの塀のずっと先に目をやると車が走り忙しそうな通りが見える。100m以上先かもしれない。人気の無さに不安になりながら忙しい通りを目指し歩き出す。
背後から車の音が聞こえる。ふりかえりもせず歩き続ける。車の速度が増すのがわかった。
ふと、何かを盗まれたらどうしようと不安が頭をよぎる。トタンの塀しかないので逃げようもない。目指す通りまではまだ距離がある。
車の音がどんどん近づいてくる。
胸騒ぎがし、麻尋はどんどん焦る。歩く速度もどんどん速まる。背後の車からとてつもない悪意を感じる。車は止まるような速度ではない。どんどん増すスピードに驚き振り返ると車はまさに麻尋を背後から跳ねようとしていた。
声にならない悲鳴をあげた瞬間、強い衝撃を体中にうけた。
麻尋の体はバッグとともに数メートル先に跳ばされた。そして地面に頭と体を激しく打ち付け着地した。
体中が痛み、浅く早い呼吸。腹部や背部もうちつけたのか声も出せない。ショックで頭から血の気も引き朦朧とする。運転手が降りてきたように思えたが、顔を見る余裕などない。
痛みと恐怖で麻尋の眼に涙が滲む。
悪意をもってわざと麻尋を跳ねたとしか思えなかった。逃げなければと頭を起こそうとするがわずかに頭を上げるのがやっとだった。
なんとか頭に手をやるとヌルリと温かい血が指についた。どのくらい出血しているのか、指についた血を見ながらどんどん気が遠くなる。
遠のく意識のなか、麻尋はこのまま殺されるのではないかと考え言い様のない哀しみと恐怖につつまれた。地面に横たわったまま、最後に視界にうつったのは麻尋を見下ろす男の足もとだった。麻尋はそのまま意識を失った。
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