【完結】四肢切断 - 目が醒めたら -

宿

空港に降り立つと生暖かい空気と南国特有の湿気を感じた。入国審査を済ませタクシーを探す。ボラれたくないが空港に出入りしているタクシーはおそらく割高であろうと腹をくくった。たったの6泊、移動時間は最小限にしたかった。1台のタクシーを止め、携帯でホテルの住所を見せると、愛想のいいドライバーがフィリピン訛の英語で「大丈夫。知ってる。乗って。」とこたえた。荷物とともに麻尋が乗り込むと、ドライバーはすぐに走り出した。

30分ほどするとホテルへ到着。チェックインでまさかのトラブル。
「ご予約がありませんね」レセプションの女性が麻尋に告げた。
麻尋は慌てて予約内容の書かれたメールを探すが確かに何のメールも来ていない。銀行のサイトでカード決済有無を確認。なんとカード決済の記録もない。どうやら眠い中操作した予約はきちんと最後まで完了していなかったらしい。
このホテルで今夜空いている部屋は麻尋が予約した数倍の金額。ホテルロビーのソファに腰をおろすと、近隣のホテルの料金とくらべ始める。
歩いて15 分程のホテルに麻尋好みの部屋があった。ネットで決済を済ませるとホテルスタッフに事情を伝えお詫びしつつホテルを出た。

生暖かい風が麻尋をつつむ。麻尋の荷物はスーツケースのようにキャスターがついているが、肩からも掛けられるバッグの形状。
辺りは日が落ち暗くなり始めている。玄関前のタクシー運転手が麻尋を見つめている。

この時タクシーに乗らなかったことを麻尋は後悔することになるが、麻尋は携帯のGPSを頼りに歩いて次のホテルへ向かうことにした。肩にかけるには重いがあえてバッグを肩にかけ、足早に歩き出した。