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エッセイ
見守り隊
しおりを挟む「あの辺りには、幽霊が出るから行かないほうがいいよ」
母が昔からそう言い聞かせていた場所には、少し変わったおじさんが住んでいた。
私はそこにはあまり近付かなかった。
おじさんの存在は知っていたし、子供ながらに変な人なのも分かっていた。
しかし、理由はそれではなく、ただただ幽霊が怖かったからだ。
つまり、母の作戦は成功であった。
そう考えると、幽霊や妖怪の類いが出ると言われている場所には、そもそも危険な場所が多い気がする。
流れの急な川、深い森や険しい山、井戸
それに危なっかしい人が住んでる家、
例を上げれば沢山あるだろう。
歳を重ねてみて解る。
幽霊や妖怪を一枚噛ませることで、間接的に危険な場所から子供達を遠ざけて守っていたのだと。
幽霊や妖怪達は恐怖の対象になるという損な役回りを押し付けられながらも、子供達を見守ってくれていたのかと思うと、なんだか居た堪れない気持ちと同時に、とても親近感が湧いた。
と、横断歩道で黄色い旗を振りながら、そんな事を考える。
ここは、事故で亡くなった女の霊が出ると言われている車通りの多い交差点。
信号無視をすると呪われるらしい、、、
「いつも、お疲れ様です」
通学する子供達を見送り、
私は深々と頭を下げた。
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