相川くんと吉田くん

高禄あみ

文字の大きさ
上 下
9 / 15
噂の吉田くん

9

しおりを挟む
  

「……エッチのテクがすごいとか?」
「えっ!?」


 真剣な顔でさらりと凄いことを言う彰に、吉田は分かりやすいくらいに動揺して、耳を赤く染めた。


「い、いきなりどうしたの」
「実はすっごい口説き上手だったりして」
「相川君??」


 ずいっと吉田に迫る彰の顔は怖いくらいに真面目で、「何で吉田が良くて、俺はダメなんだ……」とブツブツと呟き、黒いオーラを撒き散らしている。


「なあなあ、何で彼女ができたんだ?」
「え? いや、向こうから告白してきたから……」
「向こうから!?」


(よっぽどエッチが上手いのか!?)


 もはや彰の頭の中には下半身の事情のことしかなく、他の可能性は考えられなくなっていた。


「そこまで凄いのか……」


 圧倒された様に彰は呟く。


(どうしよう……やっぱりドーテイはダメなのか?? いや、でも卒業のアテもないし……)


 勝手に沈没した彰に、吉田はおずおずと声をかけている。


「相川君? どうしたの?」
「いや、何でもねえよ……。……っと、もうこんな時間か」


 時刻はもう六時を過ぎようとしていて、彰は驚く。つい話し込んでしまったようだ。


「悪い、遅くなっちまって。何か用事とかあった?」
「いや、大丈夫だよ。僕も楽しかったし」
「そうか」


 何となく口元が緩んでしまう。この短時間、ずいぶんとリラックスして談話していたので、大分吉田に対する印象が変わった。

 見た目と違って卑屈ではないし、意外と話も楽しい。

 柔らかい話し方のせいもあってか、気構えることもなく肩の力を抜ける。


(わりと楽しいかも)


 彰はへへっと笑って、照れ臭さを隠して立ち上がった。


「俺も、お前と話せて楽しかったよ」


 よいしょと腰を上げながら笑う彰を、吉田は無言で見詰める。

 そして、帰り支度を始める彰を見て、ハッとしたように言った。


「あ、相川君っ」
「ん、何?」


 その声の大きさに若干驚きながらも、振り返る彰。


「ま、また一緒に話そうね」
「? おう。てか、明日も掃除じゃん。ダルいから喋っちゃおうぜ」


 にっと笑う彰に、吉田はまたボーッとした様な顔をする。……正確なことはわからないが。


「んじゃ、明日な。お疲れ」
「お、お疲れ……」


 ヒラヒラと手を振り、教室を後にする彰。


 その後ろ姿を、吉田はただじっと見詰めていた。





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

真・身体検査

RIKUTO
BL
とある男子高校生の身体検査。 特別に選出されたS君は保健室でどんな検査を受けるのだろうか?

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

モルモットの生活

麒麟
BL
ある施設でモルモットとして飼われている僕。 日々あらゆる実験が行われている僕の生活の話です。 痛い実験から気持ち良くなる実験、いろんな実験をしています。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

カテーテルの使い方

真城詩
BL
短編読みきりです。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

処理中です...