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第3章
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しおりを挟むそれから半月後。数日後には衣替えとは思えないほど濃い陽の下、文化祭は開幕した。
文化祭は、私の想像を遥かに越えていた。
私たちの出し物である巫女カフェは、教室を使用しており、パーテーションで半分に区切り、半分をカフェ風に、もう半分はスタッフルームだ。
接客担当はおそろいで作った紅白の巫女風の衣装を着て、その他の生徒たちはこれまたおそろいで作ったクラスティーシャツを着る。
私たちのクラスの出し物は、二年の中でもかなり大盛況なようだった。
提供するのは、缶ジュースと事前に焼いておいたカップケーキ。
調理系のものは許可を取ることが難しいらしく、普通科はそう簡単に提供することはできないため、簡単なカップケーキを販売することになったのだ。
その代わりラッピングに少しこだわり、和風の千鳥柄や市松模様で、紙も和紙風の手触りのものにした。
目にも可愛い、そして美味しいがウチの売り……らしい。
宣伝担当となった私は、制服のスカートはそのままにクラスティーシャツを着て、手作り感満載のダンボール製のプラカードを持って構内を歩いていた。
構内は、遊園地になったのではと錯覚するほど賑やかで、あちこちから華やかな声が聞こえてくる。
薄ぼやけていたはずの教室や廊下が、今はカラフルに色付いている。
赤色や黄色のペンキで丁寧にダンボールに塗られた文字。七色の風船。わいわいと楽しげなさざめき声も、それぞれの色をまとって学校を彩っている。
小学校の運動会に少し雰囲気が似ている、と思った。
しばらく構内を練り歩いていると、
「水波ちゃん、宣伝お疲れ様! 交代するね!」
と、ピンク色のぽんぽんを持ったクラスメイトが、私に声をかけながら駆け寄ってきた。
背が低くて、ふわふわとしたくせ毛がどことなくうさぎを思わせる、愛くるしい、という表現がぴったりな子だった。
名前はたしか、松本歩果ちゃんだ。
「あ、うん。お願いします」
プラカードを渡そうとすると、歩果ちゃんはぽんぽんを片手で持とうとする。しかし、手が小さいせいでぽとりと落としてしまった。
「わわっ」
「大丈夫?」
「うん、ご、ごめんね」
歩果ちゃんは生徒や来場者が激しく往来するなかでぽんぽんを落としたことが恥ずかしかったのか、頬を赤くしながら慌てて拾う。
そんなに慌てなくても、と思いながら私はその様子を微笑ましく見守った。
そのあとも、歩果ちゃんは何度かわたわたと、拾っては落としてを繰り返していた。見兼ねた私は、控えめに口を開く。
「……よかったら、それ持ってようか?」
「えっ? あっ、ありがとう」
歩果ちゃんからぽんぽんを受け取り、プラカードを渡す。
「それで、これはどこに持っていけばいい――」
じっと視線を感じて歩果ちゃんを見ると、はたと目が合った。首を傾げる。
「……歩果ちゃん?」
歩果ちゃんはハッと我に返ったように、早口で言った。
「あっ……ごめんね! 水波ちゃんって、本当に綺麗な顔してるなって思ってつい魅入っちゃった」
「えっ……!?」
突然!?
「ぽんぽんすごく似合うね……」
歩果ちゃんは、ぽ~っとした顔をして私を見つめている。
「えっと……ありがとう?」
お礼を言うのが正しいのか分からないけれど、とりあえず言っておく。
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