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第2章
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しおりを挟む来未と仲良くなったのは、中学二年生のときだった。
昔から、私は人と馴染むことが得意ではなくて、いつもひとりでいた。
なにをやるにもどんくさくて、決して怠けているわけではないのに、先生にはいつもサボるなと怒られた。
それに対して、もちろん言い返す度胸なんて私は持っていなくて、だから私は先生から疎まれていた。先生に疎まれると、クラスでも浮く。
次第にクラスメイトたちは私に話しかけてくることをやめた。
少しづつ、少しづつ、私は名前を失くしていった。
進級して、クラス替えをした四月。
そんな春の真ん中で、私は来未と出会った。
進級してクラスが変わっても、私の立ち位置は変わっていなかった。
名前のないクラスメイト。それが、私の名前だった。
出席番号の関係でたまたま隣の席になった来未が私に声をかけてきたのは、二年生になったその日のこと。
その瞬間、教室中の空気がピリッと張り詰めたのを覚えている。
声が大きくて、空気を読まない変わり者。
授業中ですら大きな声で話しかけてきて、わたしは最初は来未のことを迷惑に思っていた。
でもあるとき、影で私の悪口を言っていたクラスメイトに、来未が言ったのだ。
『喧嘩するのはいいけどさ、悪口ってかっこ悪いよ。不満があるなら、本人に直接言えばいいじゃない。でもさ、嫌なことをなんにもされてないのにもしそういうこと言ってるなら、それはただのいじめだよ』
べつに、気にしてなかった。
教科書を破られるわけでも、靴を隠されるわけでもなかったし、ただ、無視されるだけ。だから、じぶんがいじめられてるだなんて思ってなかった。
……いや、思いたくなかったのだ。だっていじめだと理解してしまったら、学校に通うことが怖くてたまらなくなってしまうから――。
その日、私は泣いてしまった。
ずっとなにも感じないように頑丈にしてきた心が来未の叫んだひとことでヒビが入り、ぱりんと割れてダムが決壊したように感情が溢れた。
私が泣いたことでちょっとした騒ぎになり、先生も駆けつけた。先生は私を見ると、あからさまにため息をついた。
そんな先生に、来未は言った。
『今の、なに?』
『なんでため息ついたの? 先生、絶対気付いてたよね。水波が無視されてるの、気付いてて放っておいたんでしょ。それって、先生もあの子たちと一緒になって水波をいじめたってことだよね。先生って、なんなの? 正しいことを教えることが先生なんじゃないの? 先生が生徒を追い詰めてどーすんの?』
その言葉に、さらに涙が溢れた。
来未は泣きじゃくる私を抱き締めて、笑いながら言った。
『まったくバカだなぁ。こんなこと、我慢するようなことじゃないのに。……でも、今までひとりでよく頑張ったね。えらいえらい』
それが、初めて聞いた来未の『バカだなぁ』だった。
それから私たちはふたりでよく一緒にいるようになって、あっという間に仲良くなった。
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