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おてんばな魔女
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しおりを挟む薄い水色の空の上には、白い星と太陽がチカチカ煌めいている。
地上にいるより日が強く肌に当たる感じがする。
速度を上げると、耳に風を切る音が響いた。
「火花ちゃんっ、ちょっと待ってよ~!」
ドロシーのへとへととした声に振り向くと、はるか遠くにちんまりとしたドロシーが見えた。
「ドロシー!」
私はUターンして、ドロシーの隣に並ぶ。
「ごめん~」
そういえば、ドロシーってほうきレース大の苦手だったっけ。
「ううん。私こそごめんね。それよりドロシー、課題の地図ってある?」
「うん」
渡された地図とにらめっこしながら、考える。
地図によると、星の原石がある場所は海の中に一箇所、山に一箇所、森に二箇所。海の目印に島のようなものはないし、たぶん海のやつは海底にある確率が高いし……。
「う~ん。この感じだと、一番簡単そうなのは森だよね」
「うん。森には二箇所あったからね。ただ森だと空から見つけやすそうだし、競争率も高そう……みんな一斉に森の方向に飛んでいってたし」
「よし。やっぱり私たちは海に行こう!」
「えっ!? う、海!?」
私はドロシーの手を取って、ほうきのスピードを上げる。
「わぁっ!」
ぎゅんっとほうきが軽くたわんで、ドロシーがバランスを崩す。
私はドロシーがほうきから落ちないよう、手をさらに強く引っ張った。
「火花ちゃんっ! 海にある星の原石ってきっと、海の中だよ!? 海の中を探すなんて無茶だよ~!」
「大丈夫だよっ! 海の中ならみんな狙わないからゆっくり探せそうだし、それにドロシーが作った地図の目印、他の誰より正確だったもん!」
「そ、それは……」
ドロシーは照れたようにもじもじする。私はそんなドロシーの耳に顔を近づけて、こそっと言う。
「それにさ、ドロシー。海の中ってなんか、わくわくしない!?」
「え……わく、わく……?」
ドロシーの顔を覗き込んで、にかっと笑う。
「そうっ! わくわく! ね? 行こうよ、海の中!」
「もう……火花ちゃんのバカ~!!」
ドロシーは嘆きながらも、その頬はかすかに紅潮していた。
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