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悪役令嬢たるべきは
第2話
しおりを挟むオリヴィア・ローレンシアとは、今巷で人気の乙女ゲームに登場する悪役令嬢の名前である。
オリヴィアの中身は、前世で付き合っていた男に刺し殺された男運のない女性Aであった。
転生、というものを信じていなかった女性Aは、死後目を覚まして驚いた。
天蓋付きのベッド、猫足のテーブルに、幻想的なアロマの香り。床は大理石で、絨毯の刺繍は重厚なポルトガル刺繍によく似ている。
お姫様のような広い部屋で目を覚ましたオリヴィアは、驚くほど立派なドレスを着ていた。
しかも、顔も人形のように美しいときた。
脳内に流れ込んできた情報によると、オリヴィア・ローレンシアとは現代で人気の乙女ゲームの悪役令嬢だった。
ヒロインであるソフィア・ハミルトンと、スコット王国第一王子ラファエル・スコットの恋路を邪魔する役柄で、最終的に待ち受けるのは、一番マシなルートで国外追放だとか。
今回もまた、男関係で人生を詰まれるらしい。
どうやら、転生先でも男運の悪さというものは治らないようだ。
とはいえ、婚約者である第一王子は、正直言ってオリヴィアのタイプではない。
ラファエル・スコット。
すらりとした長身に、鮮やかな金髪。瞳は透き通るようなスカイブルー。
文句なしの美貌を持つ王子ではあるが、困ったことに、前世で付き合っていたろくでなし男に似ているのだ。
かつての彼もみてくれだけはよく、優しかった。
しかし、蓋を開けてみれば浮気はするわ金遣いは荒いわ、女性Aは途中から恋人という位置づけではなく働き蜂Aになっていた気がする。
そもそも、ラファエルだって女好きの気はある、とオリヴィアは思うのだ。
オリヴィアという婚約者がいるのにもかかわらずヒロインに手を出そうとする意味がわからない。
と、それを言ってしまえばゲーム自体成り立たないのだが。
(……まぁ、最悪ルートでも国外追放だし、殺されるわけじゃないのなら、悪役でもなんでもやってあげましょうか)
せっかくもらった生き直しの機会である。
さっさと婚約破棄されて、国外追放されたらのんびり田舎暮らしでもしよう、と、オリヴィアは転生して早々に決意したのである。
(そのためにはお金を貯めておかないとかな。あ、でも実刑になったら所持金とか全部取られちゃうのかな? となると協力者が必要か……)
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