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空を見上げる。
夏になる前の空は青いけど、少しだけ霞んでいた。空へ顔を向けたまま、私は大きく息を吐く。
「……あーもう。今まで悩んでたのがバカみたいじゃん。私」
「ははっ! そーだよ、バーカバーカ!」
「ふふっ……バカ言うな」
思わず笑うと、七南がふと嬉しそうに目を細めた。
「へへっ。どーいたしまして~」
直後、なんとも呑気な返事が返ってきて、私はさらに笑う。
「……それにしても、七南って悩みとかぜんぜんなさそうだよね。羨ましいわ、その肝の座りよう」
すると、七南はすぐに言い返してきた。
「むっ! 失礼な。私にだって悩みくらいあるよ!」
「えーたとえば?」
七南は少しの間黙り込み、そしてパッと顔を上げた。
「最近ずーっと考えてたことがあるよ」
「なに?」
首を傾げると、七南はすっと私を指さした。
「私?」
「そう。楓ちゃん、あの頃に比べてぜんぜん笑わなくなったなぁって思ってた」
「え……」
どきりとした。慌てて七南から目を逸らす。
「そ、そんなことないよ。笑ってるよ」
「まぁそうなんだけど。でも、最近の楓ちゃんの笑顔って、なんていうか愛想笑い? みたいでぜんぜん可愛くないんだもん」
「失礼な」
「えへ。でもね、さっきの笑顔はすっごく可愛かったよ」
「さっき?」
「私がバーカって言ったとき! 久しぶりに、楓ちゃんの笑顔見た気がした!」
言いながら、七南は茶目っ気たっぷりに私に絡みつく。
「さっきね、やっと幼稚園の頃の楓ちゃんが戻ってきたって思ったんだ! 私、今みたいな楓ちゃんの笑顔が大好きだった! おかえり、楓ちゃん」
「……七南……」
言われて初めて気が付く。
こんなふうに、素直に笑ったのはいつぶりだろう。
いつもだれかに合わせてばかりで、いつの間にか、うまく笑うことさえできなくなっていた。鏡の中の自分がきらいで仕方なかった。
「……うん。ただいま、七南」
私は偽りのない笑顔を浮かべて、目の前の小さな大親友に抱きついた。
「ありがとう、七南」
明日の朝起きて鏡を見たら、久しぶりに会う私に言いたい。
「おかえり、私」
そう、笑って。
夏になる前の空は青いけど、少しだけ霞んでいた。空へ顔を向けたまま、私は大きく息を吐く。
「……あーもう。今まで悩んでたのがバカみたいじゃん。私」
「ははっ! そーだよ、バーカバーカ!」
「ふふっ……バカ言うな」
思わず笑うと、七南がふと嬉しそうに目を細めた。
「へへっ。どーいたしまして~」
直後、なんとも呑気な返事が返ってきて、私はさらに笑う。
「……それにしても、七南って悩みとかぜんぜんなさそうだよね。羨ましいわ、その肝の座りよう」
すると、七南はすぐに言い返してきた。
「むっ! 失礼な。私にだって悩みくらいあるよ!」
「えーたとえば?」
七南は少しの間黙り込み、そしてパッと顔を上げた。
「最近ずーっと考えてたことがあるよ」
「なに?」
首を傾げると、七南はすっと私を指さした。
「私?」
「そう。楓ちゃん、あの頃に比べてぜんぜん笑わなくなったなぁって思ってた」
「え……」
どきりとした。慌てて七南から目を逸らす。
「そ、そんなことないよ。笑ってるよ」
「まぁそうなんだけど。でも、最近の楓ちゃんの笑顔って、なんていうか愛想笑い? みたいでぜんぜん可愛くないんだもん」
「失礼な」
「えへ。でもね、さっきの笑顔はすっごく可愛かったよ」
「さっき?」
「私がバーカって言ったとき! 久しぶりに、楓ちゃんの笑顔見た気がした!」
言いながら、七南は茶目っ気たっぷりに私に絡みつく。
「さっきね、やっと幼稚園の頃の楓ちゃんが戻ってきたって思ったんだ! 私、今みたいな楓ちゃんの笑顔が大好きだった! おかえり、楓ちゃん」
「……七南……」
言われて初めて気が付く。
こんなふうに、素直に笑ったのはいつぶりだろう。
いつもだれかに合わせてばかりで、いつの間にか、うまく笑うことさえできなくなっていた。鏡の中の自分がきらいで仕方なかった。
「……うん。ただいま、七南」
私は偽りのない笑顔を浮かべて、目の前の小さな大親友に抱きついた。
「ありがとう、七南」
明日の朝起きて鏡を見たら、久しぶりに会う私に言いたい。
「おかえり、私」
そう、笑って。
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