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第7話『仮面を外す勇気』前編
しおりを挟むそれからというもの、キャンディさん(茅野くん)はネット上で以前よりかなり大胆に絡んでくるようになった。
『キャンディ:AMさんは今日も可愛いね。天使だね。好き』
「う……」
キャンディさんはこれまでも私のことを溺愛気味ではあったけれど、最近はさらに糖度が増した気がする。
私はキャンディさんからのラブコールに照れながらも、当たり障りのない言葉を返信する。
ネットではこんなだけど、キャンディさんは、学校では私に気を遣っているのか、あまり話しかけてこない。
昼休みも取り巻きの女子が放してくれないみたいで保健室にすら顔を出さないため、私たちの関係はこれまでとあまり変わっていない。
その代わり、Re:STARTでキャンディさんとして絡んでいるときだけ、途端にアプローチがすごくなる。
『キャンディ:AMさん、美少女過ぎて眩しい。どうしよう』
「……ありがとう」
『キャンディ:今度のコスも楽しみにしてるね。あ、でも露出は控えめにね』
「……うん、そうする……」
『キャンディ:好き過ぎて辛い。どうしたらいいかな』
「……う。これはさすがに返信しなくていいや」
そっとスマホの明かりを消した。
AMのファンでいてくれることは素直に嬉しいけど、相手があの王子様だと思うと、正直かなり複雑なのである。
だって、あの茅野チトセくんが……。
学園の王子様が、私に好き好き攻撃って。いや、正確には私じゃなくてAMに好きって言ってるだけなんだけど。
それはそれでなんか複雑だし……。
また通知が届く。液晶に映し出されたコメントを覗く。
『キャンディ:ねぇAMさん、ぼく、一度生で会ってみたいなぁ……』
「!?」
生でもなにも、いつも会ってるじゃん! と心の中でツッコむと、キャンディさんは私の心を察したように続けて投稿した。
『キャンディ:AMさんのこと、もっとよく知りたいんだ。恋人とかいるの? いや、いないよね? きっといないよね? ぼく立候補したい』
「!!」
ちょ……!!
私は慌ててRINEを開いた。高速で文字を打ち、送信する。
『あみ:ちょっとキャンディさん!! 変な投稿はやめて!!』
『チトセ:あは。ごめん。でもキャンディとしての本心なんだもん』
『あみ:バレたらどうするの! ネットって怖いんだからね! 炎上しても助けてあげないよ!』
『チトセ:あはは。それもそうだねぇ……じゃああっちでは大人しくするから、このままここでメッセージ交換してくれる?』
『あみ:もしかしてキャンディさん、それが目的だったでしょ!?』
絶対、私が怒って連絡してくるのを待っていたのだ。確信犯だ。
『チトセ:さぁどうかなー。してくれないならあっちで絡むよ。いいの?』
もはや脅しである。
「ぐぬぬ……キャンディさん、意外と性格悪い……?」
スマホとにらめっこしていると、キャンディさんから続けてメッセージがきた。
『チトセ:というわけで、学校じゃないところで会おうよ。週末どこかに行かない?』
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