ぜんぶ夏のせいだ

ハーミ

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3. 悲しみへの一歩

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 僕は弥と志乃といつもの広場で集まり、昨夜の事を話した。2人には笑いながら冗談ように受け止められた。そりゃそうだ! 僕もまだ信じられない。秘密基地の木の裏にある植物に触れたら食事のイメージが頭の中に流れてきて、それが昨日の夕御飯と全く同じ料理だったなんて……。

 側から見ると小さな出来事なんだろうが、自分の中では人生で1番変わった出来事であったことは間違いない。

『そんな未来予知みたいなことが起こるだなんて、俺は信じられないな。エスパーにでもなれば別だろうが』
 
 弥は一切話を信じようとせず、早く遊ぼうぜと言わんばかりに秘密基地に上ろうとしている。
 その時志乃が思い出したかのようにある事を言い出した。

『そういえば小さい頃、私のおばあちゃんに… あっおばあちゃんというのはね、私が生まれた時からとても、可愛がってくれてね…』

 志乃はおばあちゃんの話を始めるととても長い。
『その話は何度も聞いてるから!おばあちゃんがなんだよ』

『あっごめんごめん。小さい頃におばあちゃんがね時の先を見せてくれる妖精がいるって言っていたの思い出したの。その妖精が宿ってるのがトキツレ草とかなんとか言ってた気がする』

 トキツレ草……。聞いたことないな。村の伝説みたいなものなのか?

『そんな話を知らないぞ。煜も知らないみたいだし、この村に長年住んでいる俺が聞いたことないな』

 弥も知らないみたいだし、この話はこの村でも全然広まっていないんだろうか。

『んー。2人とも知らないんだね。まあ聞いた話だし、ただの伝説かもしれないし。でも煜の体験がそれに似てたから』

『その話が本当で、秘密基地の木の裏の植物がその何とか草ならもう一回触って見たら分かるだろ! 煜触れてみろよ』

『トキツレ草! そうよ。触ってみれば分かるかもしれんないし、煜触れてみなよ』

 僕もまだ半信半疑だが、触れてみたいという欲求の高まりが抑えられないでいた。僕は少し震えた足を前に出し、ツレトキ草と思われる植物の前まで歩いていった。

 少し深呼吸をしてから、そっと手を伸ばしてその植物に手を近づけた。するとまたしても頭の中に無理やり流れ込むようにイメージが浮かんできた。

 それは前より少々ぼやけていたがどのようなイメージかは分かった。

…っ!?なんだこれは?
 
 僕の頭の中に流れ込んできたイメージは決して良いものではないことがすぐ分かった。

 何故ならそこには志乃が膝をついて泣いている姿が出てきたからだ。周りにも泣いてる人がいる。
一体何が起きたというのだ?!
このことを言うか、言わまいか…

 僕は秘密基地の裏で立ったまま黙りこくってしまっていた。


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