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最終章
123 勇者との再会
しおりを挟む結婚式を終えてすぐの事。
アーデルハイドは新たな事業を始めることにした。
「新しい船を作ります!」
「なんだ?漁船か?」
「違います。漁船は欲しいけど」
「欲しいんだな」
現在、島で取れる魚は島の周りで取れる魚が多かった。
もっと船を作って沢山の魚を効率よく採りたい所だが、一番の目的は違う。
「私達はこれまで領地拡大に貢献してきました」
「まぁ…」
「でも、まだ足りません!島の住民が食べていくだけの食料を確保していても…生活の質を向上する為に必要なものは沢山あります!」
力説をするアーデルハイドに頷く。
確かに食料は十分あるが、平和ならまだいいが、万一の事がある。
「物資を届ける船が一日二回とは心もたないし、親方達が船を増やしてくれてますが…やっぱり大きくて頑丈な船が欲しいです」
「例えば?」
「国内だけでなく他国も渡れるような船。海賊船にも負けないような装備付きで荷物と宿泊付きが望ましいですね」
前世の知識もフル活用して貿易をして、船による輸入も考えようと思った。
「だが、国産に拘っていただろ?」
「ええ、肉魚を長期保存する方法はあります。問題は果物に野菜です」
果物や野菜を輸入する時は決まって消毒液をかけてばい菌を消毒しなくてはならない。
菌が国から国へと移る可能性があるからだ。
「私は果物に薬品は使いたくありません!でも、輸入するには必要です」
「そればら、どうするんだ?魔石で凍結させるか?」
「そんなバンバン使う程ありません。魔石を買うお金があるなら、他に使います」
魔石は貴重で、値段も高い。
野菜を魔石で凍結するだけの量を手に入れるにはどれだけ費用が必要になるか。
「島では診療所すらないわ。万一の時の事を考えれば死活問題よ」
「ああ…」
「後、文字の読み書きできる人も少ない。特に女性」
何処の国でも同じで、特に辺境地に住む女性は幼少期から家の手伝いをして嫁に行けば家事と育児に農業の手伝いをして読み書きを学ぶこともない。
「女性の地位が低いのは、環境もあると思うの。本来なら男性よりも女性の方が柔軟で臨機応変に対応できるわ」
「確かに…」
男は仕事だけしているが女は育児に家事に、夫の世話までしている。
フレディーは男尊女卑の考えは全くない。
ケニスワールが、かかあ天下だったのもあるが、女性だからと言って下に見たりしなかった。
「この島はまだいいわ。でも、他所は違う。フレディーのように、内助の功をしてくれる男性はあまりいないの」
「ナイジョ?俺は男だぞ」
「違うわ、俗語よ。身内を陰で支えてくれる素敵な事よ。大黒柱を支える重要な役目を持つ人よ」
簡単に説明すると、理解するフレディーは何時も察しが良かった。
しかし、本当にその役目をできているのかと思う時があるのだが。
「私がここまでトントン拍子で上手くいっているのはフレディーのおかげよ」
「え?」
「私が今、すっごく幸せなのはフレディーのおかげ」
時折自信がないフレディーだったが、そん不安はすぐに吹き飛ばされた。
「そっ…そうか。俺はナイジョノコウができているんだな」
「ええ、貴方は誰よりも内助の功を果たしているわ。でも、そんな男性は稀なのよね」
貴族時代を思い出すと余計に思う。
妻を道具にしか思ってない男は多く、元両親は恋愛結婚であるが、互いに助け合って支えあって生きているのかと聞かれればそうではない。
今は侯爵家の恩恵と、ランフォード家の優秀な使用人のおかげでなんとかなっているだけだ。
もし彼らが解雇されたらどうなるか。
不幸になった時こそ、夫婦の絆が試されることになる。
とは言え、アーデルハイドにとって既に他人事だった。
祖国でどうなろうとも知った事ではない。
既に切り捨てていた。
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