90 / 129
第三章
88 逆恨み
しおりを挟む―― マリア・クスバート ――
無いわー。アレは無いわー。
細身で筋肉質でワイルド系イケメンになる筈のレオナルドが、ゴリラのようなマッチョになるなんて信じらんない。
きっとあれね。悪役令嬢のシシィのせいね。脳筋と仲がよさそうだったし。
あの女がゲームを改変し過ぎているから、攻略が上手くいかない。
本当なら、王子の婚約者になってフィデリオが公爵家に迎え入れられる筈だったのに、どっちも実現していないから攻略の手筈が整わない。
王子は一回目で失敗しちゃったし、今回はドアマット卒業が早かったからちょっとゲームから私も逸脱気味だったしで、次回に回す事にしたけどさ。
フィデリオは高等部に上がって接点が無くなっちゃったし、レオナルドはあのゴリラの様な見た目が生理的に無理。
今年入学してきたショタも、まだ幼過ぎて食指が動かない。
もともと年下より年上の方が好きだし。
仕方ないから、高等部に入るまでは乙女ゲームの事はいったんおいておいて、モブの中で見た目のいい男子と遊ぶ事にした。
やっぱり、ほら、私って可愛いし?みんながチヤホヤしてくれるのって楽しいし?
クラスの男子だって少し遊んであげてもいいと思ってるのに、シシィとかモブ女子とかのせいで私にちょっと冷たいんだよね。
下位クラスの子たちは家柄的にもイマイチな子が多いから、上位貴族が多いAクラスの男子の方がいいかなーと思ったんだけど、反応が悪いからやめた。
どうせ17歳までの間の事だもん。
今回も攻略失敗かなー。
リスタートするために死ぬのって、やっぱちょっとヤダ。
王子の攻略は難しいし、レオナルドは見た目が無理になったし、フィデリオは公爵家に養子に入っていないから攻略方法が分からない。
仕方ないから、高等部に上がってから先生を落とすかな。
ドSだけど、従順なだけの子じゃダメなんだよね。対等に渡り合えるくらいに頭が良くて気が強くて気高く高潔な女子を、自分だけが屈服させることが出来る――っての?そういうのがそそられるタイプなんだよねー、先生は。
ま、私は別枠。だってヒロインだから。
ドSっぷりはフィジカルではなくメンタルをグサグサと抉るタイプ。流石に年齢制限なしの乙女ゲームで鞭やら蝋燭やらは出てこない。
そんなのを教師にしていいのかって話だけど、表向きは温厚で真面目、教え上手な優しい先生って事になってる。
この先生ならシシィと関係ないから改変されていないでしょう、きっと。なら、攻略方法はバッチリの筈。
そういえば、あの悪役令嬢ってば婚約したんだった、マティアーシュ様と同じ色彩の記憶喪失の子と。
あの子、ゲームには出てなかったけど、絶対にマティアーシュ様の関係者だと思うんだけどな。似すぎてるもん。それに、以前に町で悪役令嬢と歩いていた人って、マティアーシュ様にそっくりだった。
マティアーシュ様は、二年後に闇落ちして世界を滅ぼそうとするんだから、他人の空似?あんなにそっくりだったのに?
筋書きが違い過ぎて、もう何がなんだか分かんない。
それもこれも全部シシィのせい。私は悪くない。ちょっとスタート時期を早めただけだし。王子ルートならともかく、そうじゃないんだから邪魔しないでほしい、切実に。
もう面倒くさいからリセットしちゃってイチから始めたいところだけど、もしも死に戻りのルールとして「ゲームエンドになってから」っていうのがあったら困るから、死ぬに死ねない。
そもそも死にたくないけど。
高等部に上がっても、これだけ原作から乖離していたらゲームがスタートするかどうかも怪しいよね。一応、ドS攻略に決めたけど、どうなるか不安だな。
五人全部攻略してからじゃないと、暗黒竜討伐に勇者と同行するだけの力が得られないから見送ったけど、勇者のパーティメンバー選出に参加してとりあえず顔だけでも拝んでおけばよかったかな?
攻略はずっと先になっちゃうけど、ちらっと見るだけでも見ておけばよかった。
今更か。
五人攻略してー、勇者攻略してー、それからやっとマティアーシュ様の攻略になる。
先は長いなぁ。
今度の死に戻りは、9年も巻き戻さずに留学の直前辺りになんないかな。
もし、今回も攻略失敗したら、それ全部あの悪役令嬢のせいだから、仕返しにあの婚約者取っちゃおうか。
あれだけマティアーシュ様に似ているんだもん。溺愛される予行練習とか?
うん、それいいかも。
二年後には、もっと背も伸びて男らしくなって、見た目はマティアーシュ様に近づくだろうし。
悪役令嬢が幸せになっちゃいけないし、私はヒロインなんだからいいよね?
0
お気に入りに追加
200
あなたにおすすめの小説

婚約破棄されなかった者たち
ましゅぺちーの
恋愛
とある学園にて、高位貴族の令息五人を虜にした一人の男爵令嬢がいた。
令息たちは全員が男爵令嬢に本気だったが、結局彼女が選んだのはその中で最も地位の高い第一王子だった。
第一王子は許嫁であった公爵令嬢との婚約を破棄し、男爵令嬢と結婚。
公爵令嬢は嫌がらせの罪を追及され修道院送りとなった。
一方、選ばれなかった四人は当然それぞれの婚約者と結婚することとなった。
その中の一人、侯爵令嬢のシェリルは早々に夫であるアーノルドから「愛することは無い」と宣言されてしまい……。
ヒロインがハッピーエンドを迎えたその後の話。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

ヴェルセット公爵家令嬢クラリッサはどこへ消えた?
ルーシャオ
恋愛
完璧な令嬢であれとヴェルセット公爵家令嬢クラリッサは期待を一身に受けて育ったが、婚約相手のイアムス王国デルバート王子はそんなクラリッサを嫌っていた。挙げ句の果てに、隣国の皇女を巻き込んで婚約破棄事件まで起こしてしまう。長年の王子からの嫌がらせに、ついにクラリッサは心が折れて行方不明に——そして約十二年後、王城の古井戸でその白骨遺体が発見されたのだった。
一方、隣国の法医学者エルネスト・クロードはロロベスキ侯爵夫人ことマダム・マーガリーの要請でイアムス王国にやってきて、白骨死体のスケッチを見てクラリッサではないと看破する。クラリッサは行方不明になって、どこへ消えた? 今はどこにいる? 本当に死んだのか? イアムス王国の人々が彼女を惜しみ、探そうとしている中、クロードは情報収集を進めていくうちに重要参考人たちと話をして——?

妹ばかり見ている婚約者はもういりません
水谷繭
恋愛
子爵令嬢のジュスティーナは、裕福な伯爵家の令息ルドヴィクの婚約者。しかし、ルドヴィクはいつもジュスティーナではなく、彼女の妹のフェリーチェに会いに来る。
自分に対する態度とは全く違う優しい態度でフェリーチェに接するルドヴィクを見て傷つくジュスティーナだが、自分は妹のように愛らしくないし、魔法の能力も中途半端だからと諦めていた。
そんなある日、ルドヴィクが妹に婚約者の証の契約石に見立てた石を渡し、「君の方が婚約者だったらよかったのに」と言っているのを聞いてしまう。
さらに婚約解消が出来ないのは自分が嫌がっているせいだという嘘まで吐かれ、我慢の限界が来たジュスティーナは、ルドヴィクとの婚約を破棄することを決意するが……。
◆エールありがとうございます!
◇表紙画像はGirly Drop様からお借りしました💐
◆なろうにも載せ始めました
◇いいね押してくれた方ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる