転生令嬢シシィ・ファルナーゼは死亡フラグをへし折りたい

柴 (柴犬から変更しました)

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第三章

76 恋バナ

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 王子様とお話をした次の週末、レナが我が家にお泊りで遊びに来た。


 お父様もお母様も私が友達を招きたいと言ったら大喜びしてくれて、実際に遊びに来たレナを見て「素晴らしいお嬢さんだ」と大歓迎だ。

 うん、レナは前世から私の自慢の友達なのだ。


「さあ、今日はじっくり聞かせていただきますわよ」


 目がキトキトしていて怖いぞ。爛々を通り越してる。


 スピネルがお茶の支度をしてくれたあと、レナは彼を追いだした。


「女子会なんですの。男性は立ち入り禁止です」


 いや、メイドも追い出したんだけど?メイドは女子なのに。女子会というより尋問するぞって勢いだと思う。私もレナと二人で話をしたい気持ちは山々だけど、身の危険を感じるのは何故だろう。テーブルを挟んで向かい合わせに座っているけど、めちゃ前のめりなんですがー。


 ほんわかおっとりキャラの筈のレナータ様は何処へ行った!?今のレナは肉食獣のようだ。暴れん坊お嬢様の私をビビらせるとは、レナ、侮りがたし。


「それで、あなたとスピネル様はいつからお付き合いをしているの?」

「え……してない」


 直球だ!多分、そういう話をしてくるんだろうなぁと思ってはいたけど、前置きも場を温める会話も無く、貴族特有の遠回しな表現すらない、ど直球だ。


「していないの?なのに、スピネル様はあなたの髪に口付けるの?」


 確かに、あれはお嬢様と傍付きにしては距離感がおかしいと私も思う。


「あんなこと、初めてされたよ」

「まぁぁぁぁ」


 レナが喜んでいる。きらっきらのエフェクトが見えるようだ。


「では、あれが告白でしたのね。親友が告白される場面に立ち会うことが出来て、なんて幸せなのでしょう!」

「え?あれ、告白?」

「でなければ牽制?」

「牽制て」

「第一王子殿下がいらっしゃいましたから」


 王子様とはお茶会で死亡フラグの話をして以来、婚約者云々の立場にはなり得ないとたがいに了承済みの上、スピネルもそれを知っているのに?


「あなたが令嬢らしからぬ素顔を出したから、スピネル様は少し危機感を持ったのかもしれないわね。それだけ気を許しているのだろうと」

「あー……。いつの間にか淑女の仮面が何処かへ行って行方不明だったしなぁ」


 長丁場だったし、話の内容が内容でそちらで頭がいっぱいになっちゃったせいで、令嬢風お嬢様を繕う余裕がなくなっていたんだった。


「あなたはスピネル様をどう思っているの?」

「どうって……スピネルはこの世界で私の最初のお友達になってくれた子で、いつも傍に居てくれて私を大事にしてくれて、あ、私ももちろん大事にしてる――つもりだけど。大好きだけど、そういうんじゃないというか」

「そういうっていうのは、つまり恋かどうかって事かしら?」

「うん。スピネルだって私をそういう目で見ている訳じゃ無いかもだし。あ、プロポーズはされたけど」


 スピネルの名誉の為に嫁発言は内緒にしておこう。


「まぁぁぁぁぁぁ」


 うん、どうしたレナ。きらっきらがギラッギラになってるんだけど。

 そう言えば、前世でまっつんとこういう話はしたことなかった。いや、彼氏いない歴=年齢だったから当然かもだけど。もしかしたら、まっつんには彼氏がいて恋バナとかしたかったかもしれない。


「淡いお付き合いをしている方はおりましたけど、サク達と遊んでいる方が楽しかったので恋人と言えるかどうか。サクだってモテてましたでしょう?先輩後輩同級生問わずに」

「女子高で先輩後輩同級生にモテてどうすんの!?」

「ふふふっ。モテないよりはいいんじゃないかしら?それで、求婚までされたのにどうして”そういう目で見ていない”と思いますの?」


 だって、ねぇ。


 スピネルは私のことを恩人だと思っているだろうし、死亡フラグの話から同情もされただろうし、私に拾われたから刷り込みとかそういう感じかもしれないし、種族も違うし寿命も違うし年も離れすぎてるし。


 前世で色恋とは無縁の脳筋女子やってたから、艶っぽい感情とかピンク色な気持ちの機微とか分かんないし。こっちではまだ12歳だってのもあるし。


 ウダウダと言い訳をしている私を、レナが呆れたように見てる。さっきまでのきらっきらもギラッギラも霧散した。


「理屈で考えているうちはダメですわ。恋は思案の外というでしょう?」

「なら、恋じゃない」


 好きだし大事。

 ”お嫁さんにして”騒動の時は、本気で責任とって娶ろうかと思った位にはスピネルが好き。けど、それが愛だの恋だのになるかは分からん!


 おかしい。いったいなぜこんな話になってんだ。

 スピネルのあの行動を見られたからには、レナはきっと彼の事を聞きたがるとは思っていたけど、ここまで熱心に食いついてくるとは思わなかった。


 二人きりじゃないとできないような話――前世の話とか、マリア様や乙女ゲーの話とか、転生してからこちらでどう生きてきたとか、そういう話をメインにしたかったぞ。


「私たち貴族の娘が好いた方と結ばれるのは難しいでしょう?」


 困った子だとでもいうように私を見てレナが言う。


「スピネル様は公にはされていないけれど、竜王国の第二王子。家格が釣り合って想い想われて伴侶になれたら素敵だと思うの」


 そりゃ、そういう相手と結婚出来たら素敵だとは思う。けど、私は死亡フラグが砕けてからは公爵家の継嗣として生きていくと決めてるから、恋愛結婚だなんて考えもしてなかった。スピネルは大事な友人だけど、プロポーズを仕切り直すと言われ、その件に関しては棚上げして考えないようにしてる。


「マティアーシュ様は、攻略対象者の中ではお勧めの方なのよ?彼の属性は”溺愛”ですもの」


 ……攻略対象者の属性ってなんぞや。



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